2018.04.19
【特集/食とエイジング】食生活と糖化の深い関係
細胞を劣化させる「糖化」を抑えるためには、食生活の見直しが効果的です。どのような食事のとり方が糖化を防ぎ、どのような食習慣が悪い影響を与えるのか、引き続き米井嘉一先生にお伺いします。
血糖値を整えれば糖化を防げる
糖化という現象が老化に大きく影響することを見てきましたが、糖化を抑えるには、つまり血糖値の上昇をゆるやかにする食生活が大切です。それがひいては太りにくい体内環境をつくります。
私たちのからだは食事から摂取した糖をエネルギー源としていますから、食事と食事の間隔が長くあいてしまうと血糖値が下がり低血糖の状態になります。脳が低血糖を感知すると、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンが分泌されて血糖値を正常に保ち、低血糖症などの症状が出ないように調節されます。
たとえば、朝食を食べない人は昼食前に血糖値がかなり下がってしまうため、グルカゴンが分泌されて血糖値が上がり始めます。からだが血糖値を上げようとしている状態で昼食をとると、食事による血糖値の上昇に加え、グルカゴンの働きで一気に血糖値が上がって糖化反応を起こしやすくなってしまいます。
他方、血糖値が上がると血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されますが、インスリンは血液中の糖を細胞の中に移動させることで血糖値を下げるのであって、糖は、体内からなくなるわけではなく細胞にどんどん取り込まれます。このとき、糖は中性脂肪として脂肪細胞にも取り込まれますから、血糖値が高めでインスリンがたくさん分泌されると太りやすくなってしまうのです。
血糖値を正常に保つためには、規則的な食事が欠かせません。朝食をよくかんでゆっくり食べると、血糖値がじわじわと上がって、下がってきた頃にちょうど昼食となるため、グルカゴンもインスリンも無駄に分泌されることがなく、余分な糖を蓄えずに済むのです。
糖化対策によい食べ物、悪い食べ物
糖化対策として食事をどうとるかはもちろん重要ですが、やはり糖そのものをとりすぎないことが大切です。国内で消費される砂糖の量は若干減ってきていますが、代わりに異性化糖の消費量が増えています。異性化糖とは、食品表示でよく目にする「果糖ぶどう糖液糖」とされているものです。イモやトウモロコシのでんぷんから作った甘味料で、清涼飲料水や加工食品などに幅広く使われています。
安価なこともあり、砂糖の代わりに使われますが、糖化しやすく悪玉物質のAGEsを短時間で大量に生成することが知られています。スポーツドリンクをはじめ、ジュースやアイスキャンディー、ドレッシングにも入っています。輸入食品にも使われており、食品表示にハイフルクトースコーンシロップ(High-fructose corn syrup)があれば、それが異性化糖です。食品表示を確認してとりすぎないように注意しましょう。
食物の中には、糖化ストレスを下げる成分を含むものがあります。りんごの皮にはAGEsを減らす作用がありますので、むかずに皮ごと食べるとよいでしょう。私たちの研究室の実験では、ジャーマンカモミールといったハーブに糖化予防効果があることがわかりました。カモミールにはリラックス効果もありますから、コーヒーや紅茶の代わりに、夜はカモミールティーを飲むのもよいでしょう。
また、近年は健康食品の分野で糖化抑制が注目を集めており、抗糖化サプリメントとしていくつかの商品が発売されていますから、そういったものを上手に利用することもオススメします。
ー食事と血糖値の関係や、甘味料が糖化を促しているかもしれないなど、食生活と健康は密接につながっていることを改めて実感しました。次回は、どのような生活習慣が糖化ストレスを高めてしまうのか、それによって起こる健康への影響をお聞きします。
米井嘉一(よねい・よしかず)
1958年東京生まれ。86年慶應義塾大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、UCLA留学。89年帰国、日本鋼管病院内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授、08年同志社大学大学院生命医科学研究科教授。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事する。著書に『「抗糖化」で何歳からでも美肌は甦る』(メディアファクトリー)、『なまけ者でも無理なく続く77の健康習慣』(ソフトバンク新書)など多数。
取材・文/飯塚りえ
イラスト/はまだなぎさ
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