2018.04.13
【特集/食とエイジング】アンチエイジングの大敵「糖化」とは?
30代、40代になると意識し始めるアンチエイジング。肌が老化する原因として「酸化」はよく耳にしますが、最近では「糖化」が注目されています。では、糖化が老化にどう関係しているのか、同志社大学の米井嘉一先生に教えていただきます。
生活習慣で老化が加速する!?
私たちに老化をもたらす酸化は、よく知られるようになりました。ただ、酸化は呼吸をする生物ならすべてが直面する老化現象であり、だからこそ、生物には、ある程度の抗酸化力があらかじめからだに備わっているのです。
寿司ネタにもあるイクラには、抗酸化物質であるビタミンEが豊富に含まれていますが、これは自分や卵子を守るためです。生物の最も重要な目的が子孫を残すことと考えれば、その機能を果たす生殖器を酸化から守ろうというのは当然です。
他方、糖化という現象が注目されるようになったのは、この50~60年のことです。糖化はからだの中で余分な糖がタンパク質や脂肪と結びついて細胞を劣化・変性させる生体反応で、その過程ではAGEs(糖化最終産物)という悪玉物質が次々と発生します。しかも酸化と異なり、糖化のストレスには20代、30代でも無防備だということがわかってきました。
糖化は、ホットケーキをイメージするとわかりやすいかもしれません。牛乳、卵(タンパク質)と砂糖(糖質)を混ぜた生地を焼くと褐色になります。酸化が「からだがサビる」老化だとすれば、糖化は「黄ばむ」老化です。
例えば肌では、余分な糖がコラーゲンなどのタンパク質が糖化すると構造が壊れ、皮膚が硬くなって弾力性が失われてしまいます。それだけでなく、AGEsは褐色をしているので、溜まってくると皮膚も黄色くくすんでしまうのです。
糖化はもちろん、肌だけでなく、骨、血液、消化器官など全身の老化を加速させ、さらに骨粗しょう症、動脈硬化、アルツハイマーなどの疾患や、卵巣機能低下にも関わっています。
では、なぜ最近のアンチエイジングにおいて糖化が注目されるかといえば、それは糖化という現象が、現代人のライフスタイルと大きく関係しているからです。
糖化対策は、生活スタイルを変えることから
現代人のライフスタイルとは、つまり身体活動量が少なく、摂取エネルギーは多いという暮らしのことです。また食事の時間が不規則だったり、食事に時間をかけないなど、血糖値が高い状態が続きやすく、それらが老化を早めているのです。
糖化の連鎖を断ち切るためには、まず運動です。筋肉は糖質をエネルギーとして代謝しますから、筋肉が衰えていると糖が消費されずどんどん溜まっていくのです。現代人は運動量が減っていることで筋肉も少なくなっていますので、生活にぜひ運動を取り入れて欲しいと思います。
もちろん、食事の重要性は言わずもがなです。私は三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂肪の比率が6:2:2になるような食事をオススメしています。一時期、炭水化物を抜くダイエット法が話題になったことがありますが、極端なのはよくありません。炭水化物過剰の人が減らすのなら構いませんが、食事は何よりバランスが大切です。ふだんの食事が6:2:2から外れている場合は、なるべく近づけるよう食事内容を見直すとよいでしょう。
さらに、糖化予防に効果的な食べ方があります。食べる順番を野菜(繊維)→肉や魚(タンパク質)→ごはんや麺(炭水化物)にすると、無駄に血糖値を上げることがなくなります。懐石料理もこの順序で料理が出てくるのは、先人の知恵です。
ただ、先の栄養バランスを守っていれば食べる順番にさほどこだわらなくてもかまいません。それよりも、よくかんでゆっくりと食べることも心がけてください。同じカロリーを摂取しても、この2点を守っていれば糖化を抑えることができます。
デザートが好きな女性は多いと思いますが、糖化を防ぐという意味では、糖分たっぷりのデザートは避けるべきです。とはいえ、アンチエイジングにストレスは禁物。ハッピーな気持ちになることも大切ですから、がんばったご褒美にデザートは1日1回としましょう。一番よいのは果物です。プレーンヨーグルトにジャムや蜂蜜を入れて食べるのもよいでしょう。わらび餅やあんみつなどもオススメです。糖分のないものに蜜やシロップをかけて食べるほうが、糖分のとりすぎを防いでくれるのです。砂糖を混ぜて作るケーキなどは糖分過多になりやすいので、なるべく控えましょう。
見落としがちなのは、缶コーヒーやペットボトルの紅茶、スポーツ飲料も糖分が多く、注意が必要です。砂糖を入れないコーヒーや紅茶に少量のチョコレート、という組み合わせのほうが摂取糖分が少なくて済みます。
糖化によって生じるAGEsは分解されにくく、どんどん溜まってしまいますが、生活習慣を整えて節制することで、少しずつAGEsが排出されます。日常の生活スタイルを見直してみて下さい。
ーふだんの生活習慣が糖化につながることばかりで、ちょっとショック! ではありますね。でも習慣を変えることでからだも変わるとわかれば、希望がもてるというもの。次回は、糖化対策によい食習慣について、さらに具体的にお聞きします。
米井嘉一(よねい・よしかず)
1958年東京生まれ。86年慶應義塾大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、UCLA留学。89年帰国、日本鋼管病院内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授、08年同志社大学大学院生命医科学研究科教授。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事する。著書に『「抗糖化」で何歳からでも美肌は甦る』(メディアファクトリー)、『なまけ者でも無理なく続く77の健康習慣』(ソフトバンク新書)など多数。
取材・文/飯塚りえ
イラスト/はまだなぎさ
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提供元:【特集/食とエイジング】アンチエイジングの大敵「糖化」とは?|ワコール ボディブック