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2018.01.24

「会議で沈黙する人」に決定的に足りない視点│そこに「相手目線」はありますか?


会議の質疑で散々やられてしまった経験はありませんか?(写真:baona / iStock)

会議の質疑で散々やられてしまった経験はありませんか?(写真:baona / iStock)

外資系コンサルでIT戦略の策定・実行支援の仕事をするかたわら、日々の仕事で見つけた気づきや役に立った方法論を整理して紹介するブログ「NAEの仕事効率化ノート」。このブログを運営するNAE(なえ)さんに、今回の記事では多くの人が失敗しがちな「会議の質疑」について語っていただきます。相手から信頼を得るためのコツとは?

先読みして、質問をさばく技術

取引先との会議でプレゼンし、終わってホッとしたのもつかの間。出席者から飛んでくる質問に頭が真っ白になった……こんな経験はないでしょうか。

若手時代、私も苦い経験をしたことがあります。担当するプロジェクトで想定外に大きな課題が浮かび上がったときのことです。プロジェクトを統括する取引先の執行役員に、現状と対応方針、今後の進め方を説明することとなりました。しかしあろうことか、説明の当日になって上司が諸事情で来られなくなったのです。かわりに現場の事情を知る人間として、上司の上司から「きみ、説明して」と言われたのです。

助け舟を出してくれる上司は不在。「上司の上司」は現場のことを答えられません。しかし、現場の話は知っていたため、発表と説明ができればいいだろ、と高をくくって会議に臨みました。

ところが、発表のあと、取引先の執行役員から飛んでくる矢継ぎ早の質問に、私の頭は動作停止に陥ってしまったのです。想定外に幅広く、また深く突っ込んだ質問に、なんとか絞り出せた言葉は「持ち帰り確認します」のみ。それを見て「なんでそんなことも知らないの?」と言わんばかりの執行役員の不満顔。会議の結末を上司に報告したところ、「そんなの事前に押さえておいて当たり前の情報だろ」とあきれられてしまいました。

このように、会議の質疑で散々やられてしまう経験を通じて「自分はダメだ」というメンタリティに陥ってしまうと、若手時代の私のように「自信を失う→萎縮する→成果が出なくなる→さらに自信を失う」という「負のスパイラル」に突入してしまいかねません。どうすればこれを避けられるのでしょうか?

そもそも、「質問で頭が真っ白」になる原因は、質疑の準備不足です。会議では「発表」と「質疑」が必ずセットです。しかし、若手はとかく「発表」準備にだけ目がいってしまい、質疑のケアが不十分になってしまいがちです。質疑への準備として、「想定問答」と「手持ち資料」(必要に応じて相手に見せる手元の資料)、つまり、聞かれる可能性のある質問への回答と、会議トピックに関連する資料の準備をしないことには、会議全体の準備をしたことにはならないのです。

ただし、ここで問題になるのが、「どこまで準備すべきか」です。あらゆる質問を網羅した想定問答や、あらゆる角度からの「詳しくは?」に答えられる手持ち資料を準備するのは困難です。会議準備にあてられる時間は有限なので、どこかに「区切り」をつけなければなりません。いったいどのような基準で判断すればいいのでしょうか?

そこで、トップコンサルタントがどのように「想定問答と手持ち資料」を準備すべき範囲を決めているかを紹介します。ポイントは、会議参加者の立場(肩書)です。

どのような質問が飛んでくるかは、質問者の視点によって変わります。経営者目線で全社の目指す方向性を考える立場の人と、現場目線で目の前の業務をひたすらこなす立場の人で、同じ質問が飛んでくるはずがありません。この性質をもとに、想定問答と手持ち資料の準備範囲を見極めるのです。

「想定問答と手持ち資料」準備の判断基準

たとえば、相手の立場を「現場担当者レベル」「部課長レベル」「役員レベル」3つに分けて考えてみましょう。

まず、現場担当者レベルの人が相手の場合、質問内容は発表資料に対する「How(で、自分はどうすればいいの?)」と「Why(なぜそうしなければならないの?)」の2点に集中することがほとんどです。現場担当者が見る範囲は目の前の自分の業務であり、自分がどうすればいいのか(どうなるか)が主な関心事だからです。そのため想定問答と手持ち資料としては、「あなたはこうしてください(こうなります)」および「そうなる理由はこうです」と説明できるものを最低限、準備するとよいでしょう。

次に、部課長レベルが相手の場合、質問内容は「なにがいつまでに達成されるのか(What/When)」という全体像の話に加え、「売り上げへのインパクトや投資対効果は(How Much)」などおカネの面が強くなる傾向があります。細かな進め方(How)は現場担当者クラスに任せ、自分はマイルストーンに対する進捗・課題・リスクの把握を行う一方、組織をまたぐコミュニケーションや役員クラスへの報告に使う論理を求めていることが多いのが理由です。そのため想定問答と手持ち資料としては、「結局どうなるのか(So What)」「いつまでにできるのか(When)」「いくらかかるか(How Much)」に答えられるものを準備することが望ましいでしょう。

最後に役員レベルが相手の場合、質問はさらに広く深くなります。会議トピックに関連するトピックのみならず、ほかの事業との優先順位、競合他社に勝てる理由や、ヒト・モノ・カネの経営資源の配分や調達方法、CSR(企業の社会的責任)など、全社を俯瞰した観点からの質問も想定する必要があるでしょう。

このように、現場担当者レベル・部課長レベル・役員レベルと大きく分けるだけでも、どれだけの想定問答と手持ち資料を準備するべきかのざっくりとした目安がわかるようになります。

相手が役員の場合、もう1つ気をつけるべきポイントがあります。想定問答と手持ち資料を「持参」するだけでは足りないという点です。

多くの役員は、発表内容はもとより発表者、つまり「人」を重点的に見ます。「自分の質問に即答できるほど、こいつは考え抜いているのか?」を質疑で確かめ、「この件を任せて本当に大丈夫か」を判断するためです。そのため、役員レベル相手の会議では、作り込んだ想定問答や手持ち資料をチラ見しながら、質問にモタモタ答えること自体が、マイナス評価につながりかねません。「こいつは重要な数字や、役員レベルの懸念ポイントまで考え抜いていない」と判断されてしまうからです。

したがって、役員レベルが相手の会議は、想定問答と手持ち資料の数字や内容まで頭にたたき込んだうえで臨むことが望ましいといえます。たとえば、筆者が以前お世話になったトップコンサルタントは、役員レベル相手に提案プレゼンを行う前に、一人部屋にこもってプレゼンだけでなく、質疑応答のシミュレーションまで入念に行うことをルール化していました。その場で端的に答えられることが信頼を生むと知っているためです。

「相手目線でどれだけ考え尽くしているか」がものを言う

ここまで相手の立場(肩書)に応じて想定問答と手持ち資料の準備範囲は変わる、というお話をしてきましたが、相手がどのレベルの人であれ、共通して大事なことは「相手のことをどれだけ考え尽くしているか」です。

あらゆる仕事には「届け先(相手)」がいます。会議であれば参加者、資料であれば読み手、会話であれば聞き手が「届け先」にあたります。そして、仕事を進めるには「届け先」の人に動いてもらわなければなりません。動いてもらうには、行動にストップをかける要素を取り払う必要があります。その要素の代表格は「疑問」であり、「その疑問はもう解決済みだ」と伝えることで、相手は初めて行動を起こしてくれます。

会議に向けて「想定問答と手持ち資料」を準備することは、会議参加者の疑問を先回りして考えることにほかなりません。「○○さんはなにが知りたいだろう」「△△さんはなにを気にするだろう」……このように、想像力を働かせて相手目線で考え尽くすことが、想定問答と手持ち資料の準備において、最も重要なファクターといえます。

華麗な質疑応対を通じた「信頼感の獲得」、そして会議の成果である「参加者の行動」。これらの価値の源泉は「相手のことを考え尽くすこと」なのです。

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提供元:「会議で沈黙する人」に決定的に足りない視点│東洋経済オンライン

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