2017.12.20
「15秒話法」で”伝える力”は劇的に上げられる│「簡潔な話し方」が人を動かす
わかりやすいプレゼンをするには?(写真:bino / PIXTA)
せっかく話すことを考えてきたのに、実際に話しはじめると、早口になってしまう。あるいは、たどたどしくなって、うまく話せない。そんなときは、“プレゼンであらゆることが決まる”GE(ゼネラル・エレクトリック)の手法が参考になります。
『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』の著者であり、GEの“世界最高のリーダー育成機関”と呼ばれる研修機関・クロトンビルで教鞭をとってきた田口力氏が解説します。
『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』 ※外部サイトに遷移します
わかりやすいプレゼンをしたい場合、1文の「長さ」はどれくらいがよいと思いますか?
答えは、「1つのメッセージの塊を、10~15秒以内で言う」。話す内容や話すスピード、肺活量などの違いがあるとしても、これを基本的な目安としてお伝えしています。この10秒の中には、息継ぎを考えると、1文あるいは短い文が2~3入っているはずです。
「15秒で話す」サウンド・バイト
1文の長さを10~15秒以内にする理由は、「サウンド・バイト」にも見られる、人の集中力という観点からも説明できます。
「サウンド・バイト」とは、テレビやラジオなどのニュースで放送するために、政治家や評論家などの発言を抜粋したもののことです。
1つの発言の塊が10秒を超えると、発言が抜粋・編集されて短くまとめられてしまうため、政治家たちはこれを避けようとします。ちなみにバラク・オバマ前アメリカ大統領は、これを意識して、発言の塊を10秒以内に収めていました。
なぜ、10~15秒以内なのか。それは、人の集中力が長く続かないからです。これは聞く側の立場に立ってみれば経験的にもわかると思います。テレビCMも、標準的なものの長さは15秒ですね。
この10~15秒の間に、メッセージの塊として1つのことを言い切るのが、簡潔に伝えるためのテクニックなのです。
ここで、「10~15秒のメッセージの塊」を体感しておきましょう。
実際に携帯電話のストップウォッチ機能などを使って、10秒でどのくらいの長さの文章を話すことができるのか試してみてください。
前段落の「実際に携帯電話の……」で始まる文章の文字数は、約60字です。日本語は1分間に350文字話すのが標準だとすれば、10秒間では60字弱になります。つまり、この1文を10秒程度で話すわけです。
早口になりがちな人への処方箋
プレゼンの研修をしていると、必ずと言ってよいほどクラスに1人は早口の人がいます。
早口の人は、頭の回転が速いために、話していてもいろいろな言葉が次から次へと頭に浮かんできます。その浮かんだことをどんどん伝えようとすると、ときとして舌が追い付かないことがあり、「滑舌が悪い」という弱点を同時に持っていることが多く見られます。
こうした人には、「緩急をつける」ことを徹底的に練習してもらいます。
早口の人は、まず、自分が早口であるということをよく認識すべきです。認識していても直らない人もいますが、そんな人には、次のような方法をお勧めしています。
思い付いたことをすぐに話すのではなく、頭の中にホワイト・ボードをイメージし、そこにこれから話すことをいったん書いて、それを読み上げるようにして話してください。
まずはこの練習によってスピード・コントロールを意識し、全体的にスピードを落とします。
次に、頭に書いた文章のうち、ポイントとなるキーワードの部分は「ゆっくり、はっきり」話し、それ以外は普通のスピードで話すことで、「緩急」のアクセントを付けます。
さらに練習を積んだら、文章の中の言葉の塊を「重要」「普通」「その他」に分けて、「重要」な言葉は「ゆっくり、はっきり」、「普通」は普通のスピードで、あまり強調する必要のない「その他」の言葉については、少し早めに話すという練習をします。このとき、少し早めに話すからといって、滑舌を犠牲にしてはいけません。
早口の人が「緩急」をマスターできたら、次は「強弱」に取り組んでもらいます。大事なメッセージの部分を「ゆっくり、はっきり」話せるようになったら、今度はその言葉を「ゆっくり、はっきり」に加えて「強く」話してもらうのです。
この「ホワイト・ボード作戦」は、上手に「間」を取るためにも有効です。「間」には、「1.呼吸を整えられる」「2.『あ~』『え~』などの言葉癖を封じられる」「3.相手に考える時間を与えられる」という3つの効用があります。
ところが、早口の人はほとんど「間」を取ることがありません。ホワイト・ボードに文字を書いて読み上げるイメージを持つことで、句読点や論点の区切りで「間」を取るようにしてください。
スライド転換に「戦略」を持つ
実際に話すときに、「間」を取ることと同じくらい効果的なのが、次に話すことの「前振り」をすることです。
ニュース番組を見ていると、話題が切り替わるときや、お天気などの別コーナーに移る前に必ず、メーン・キャスターが次の話題の前振りをしてから画面が替わります。
とても自然に行っているので、日頃テレビを見ているときには気づかないかもしれませんが、ぜひ意識して観察してみてください。
たとえば事故現場から状況を伝えるリポーターを呼び出す前に、画面がいきなり事故現場の映像に切り替わってしまったとしたらどうでしょう。違和感を覚えませんか。
お天気コーナーに入る前には、メーン・キャスターが「今日もとても暑い1日でしたが、現在の外の様子はどうでしょう。○○さーん」と呼びかけてから画面は外の映像に替わるのが普通ですね。
さて、あなたのプレゼンはどうでしょう。スライドが移り変わる前に、次に映すスライドの前振りをしていますか。営業先で交渉しているとき、重要な資料を出す前に前振りをしていますか。
スライド・資料を出した。中身を読んだ。終わった。次のスライド・資料を出した。中身を読んだ……単にこの繰り返しになっていませんか。
プレゼンの場合は、映し出したスライドの内容をすぐに説明しはじめられればまだよいとしても、ジッとスクリーンを見つめて、自分でつくったはずのスライドの中身を確認してから読みはじめるような人も結構います。
こんな不自然極まりないことが、プレゼンではしょっちゅう行われています。少なくとも、たとえば話の内容が「問題点」から「解決策の提示」に大きく切り替わるときや、解決策の中でもこれだというキラー・コンテンツが入っているスライド・資料を出す前には、必ず橋渡しとして、“前振り”をしてください。
たとえば、次のような一言です。
「ここまで問題点について、3つの角度から整理しました。これらの問題を解決するための施策として、次のようなご提案をしたいと思います」
と言ってから、キラー・コンテンツのスライドや資料を出すわけです。
パワーポイントでも、キーノートでも、手元のパソコンの画面に「次のスライド」が小さく表示されているのには、実は大事な意味があるのです。
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提供元:「15秒話法」で"伝える力"は劇的に上げられる│東洋経済オンライン