2020.01.21
白いごはん好きは糖質制限に向かない!?正しい取り入れ方とは
「糖質制限」は適切に行うと肥満改善が期待できる一方、短期的なダイエットを目的に間違った方法で行うと、健康へ悪影響が出ることもあります。糖質は人間の生命活動のためになくてはならない栄養素なので、極端に減らすのは危険です。今回は正しい糖質制限の方法について、糖尿病内科の「たけおクリニック」院長、竹尾浩紀先生にお話を伺いました。
目次
-糖質制限とは
-糖質制限の効果
-糖質制限の取り入れ方
-糖質制限と睡眠の関係
糖質制限とは
糖質制限は、エネルギーの源となる代表的な栄養素「糖質」の摂取量を減らし、肥満の改善や予防を図るダイエット法を指します。どうして糖質を制限することが、肥満の改善や予防につながるのでしょうか。まずは糖質が人体にもたらす影響を理解し、正しい糖質制限のメカニズムを知りましょう。
肥満のメカニズム
肥満は糖質を過剰に摂取することで起きます。ここでは、肥満のメカニズムを説明します。
食事で糖質を摂取すると血糖値が上がり膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌されます。血糖はインスリンの働きにより細胞に取り込まれて、エネルギーとして利用されます。過剰に糖質を摂取すると、エネルギーとして利用されなかった余分な糖質から中性脂肪がつくられて体内に蓄積されるため、肥満になるのです。
糖質制限の効果
糖質制限の基本的な考え方は、糖質の摂取を制限することで中性脂肪の蓄積を回避するというものです。
糖質制限がダイエットに有効な理由
糖質は体内のエネルギー源のなかで、利用効率が高いため優先的に使用される栄養素です。人間の身体は、糖質を使い切った後に体脂肪の燃焼を始めるため、体脂肪を燃やし、体重を減らすためには、まず糖質の摂取を制限することが効果的です。
注意が必要なのは、食事を減らすことだけでダイエットをすると体脂肪だけではなく筋肉もエネルギー源として消費され、不健康なやせ方をしてしまう点です。脂肪を減らし筋肉を保つためには、適度な運動が必要です。エネルギー不足にならないよう、糖質以外の栄養素である脂質とタンパク質を十分に摂取しましょう。
糖質制限の取り入れ方
糖質制限は間違った方法で行うと、健康に悪影響を及ぼすこともあります。安全かつ効果的に糖質制限を取り入れるためには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
ここでは、短期的なダイエットを目的にしたものではなく、長期的に生活習慣を変え、健康的に体重を減らすことを目的とした糖質制限の取り入れ方をご紹介します。
糖質制限のポイント
健康的に糖質制限を行なうためには、以下の4つのポイントを心がけることが大切です。
主食から食べる量を減らしていく
糖質はごはん、パン、麺などの主食類やイモ類、お菓子などの炭水化物に多く含まれています。これらのうち、まずは主食として摂取する炭水化物の量を無理のない程度に減らしてみましょう。
豆類や根菜など一部の野菜にも糖質は含まれていますが、食べすぎに気をつけておけば、大きな影響はありません。
具体的な糖質摂取量の目安
糖質(炭水化物)が分解されてできるブドウ糖は、脳の唯一のエネルギー源ともいわれるほど重要な栄養素です。必要量を摂取しなければ脳の機能が低下し、日常生活に支障をきたす可能性があります。
個人差はありますが、日本人の場合には脳が十分に働くため1日に約80〜100gの糖質が必要だといわれています。そのため1日あたりの糖質摂取量を100g(1食あたり30〜40g。ごはんであればお茶碗の3分の1程度)に設定してみましょう。
摂取する糖質量は、1日の中で調整すれば問題ありません。昼に糖質が多く含まれるものを食べたら、夜は減らすなどの工夫をしてみましょう。
減らした主食の栄養はおかずでカバーする
バランスのよい食生活を送る人が、1日で体内に取り込む栄養素は、大きく3つに分類すると炭水化物50%、脂質25%、タンパク質25%だといわれています。
半分を占めている炭水化物の摂取をやめると、単純に摂取カロリーが減り、体重が落ちやすくなります。しかしそれでは、脳や身体を動かすのに必要なエネルギーまで不足してしまい、健康面に悪影響を与える可能性があるので注意が必要です。主食で減らした分のカロリーは、おかずでしっかりと摂取するようにしましょう。
その際、脂肪の燃焼を助けるタンパク質とビタミンB群などが多く含まれる肉や魚、卵などを食べると糖質制限の効果が高まります。タンパク質は筋肉をつくるのにも役立ちますので、積極的に食べるようにしましょう。
長期的に続けられるように少しずつ食生活を変える
糖質制限を成功させるには、すぐに結果を求めずに少しずつ食生活を変え、長期的な視点をもって続けていくことが大切です。
体質によって個人差があり、特定の栄養素を消化しにくかったり、特定の栄養素を欲しやすかったりすることもあります。急激に食生活を変えるとストレスを感じ、体調不良を引き起こすケースも少なくありません。
また、無理に食生活を変えると長続きせず、暴飲暴食をしたりリバウンドしやすい身体になったりすることもあります。一度リバウンドすると痩せにくくなってしまいます。糖質制限を行うのであれば、ライフスタイルとして定着させることを目標に、長期的な姿勢で取り組むことが重要です。まずは1カ月単位でごはんの量を10%ずつ減らしていくなど、少しずつ調整していきましょう。
間違った糖質制限が招くリスク
無理な糖質制限は、心身にさまざまな悪影響を与える恐れがあります。特に心配されるのが、ケトン体の発生による眠気や倦怠感です。
ケトン体は体内で脂肪が燃焼されると発生する物質です。ケトン体が血液中に増えると、神経系統の中心的な役割をする中枢神経の活動が低下し、眠気やだるさ、集中力の低下などを引き起こす可能性があります。ひどい場合には意識障害が起きることもあるので注意が必要です。ケトン体は、1日の糖質摂取量が50gを下回ると発生しやすくなると言われています。「無理をしない」というルールを設けるなど、リスクマネージメントを徹底するようにしましょう。
糖質制限をしない方がよい人
本人の体調や状況によっては糖質制限を行うと脳の機能が低下したり、便秘など体調を崩したりすることもあります。以下に該当する人は糖質制限を控える、もしくは取り入れ方を見直しましょう。
-成長期(〜20歳前後)の人
-ごはん(白米)が好きでたまらない人
-医師に止められている人
成長期は身体を形成するうえで大切な時期なので、糖質制限や無理なダイエットは避けたほうがよいでしょう。
また、毎食ごはんを食べたい人や、焼肉を食べるときにごはんが欠かせないという人に糖質制限はあまりおすすめできません。体質的にごはんからエネルギーを摂取することに特に向いているとも考えられ、ごはんを食べない、もしくは量を減らすということにはストレスを抱きやすく、長続きしない傾向があります。糖質制限を諦めて別の方法を探すか、ゆっくり時間をかけて少しずつごはんの量を減らし、身体を慣れさせましょう。
なお、腎臓や胆のうなどが悪い人は症状が悪化する場合もあるので、必ず医師と相談してください。
糖質制限と睡眠の関係
「糖質制限をすると、眠くなりやすい」「糖質制限をしたら睡眠が浅くなった」「糖質制限のせいで日中にあくびがでる」など、睡眠について変化が現れることがあります。その症状はさまざまで、糖質制限と睡眠の関係は明らかになっていません。自分の体調をよく考えながら、摂取する糖質の量を決めると良いでしょう。
糖質制限が睡眠に影響を与えるメカニズム
タンパク質に含まれるアミノ酸の一つに「トリプトファン」があります。トリプトファンは、ストレスに強い抵抗力を持つ脳内物質「セロトニン」や睡眠ホルモンである「メラトニン」の原材料となる栄養素であるため、良質な睡眠には欠かせないものです。トリプトファンを分解するためには、インスリンが必要と言われています。そのため、糖質制限によってインスリンの分泌量が減ると、セロトニンやメラトニンが不足し睡眠の質が落ちる場合があると考えられています。一方、糖質制限にともない、炭水化物の代わりにタンパク質の摂取量を増やすことで、セロトニンが多く作られる人もいます。そういった人は、睡眠の質が高まります。
photo:Getty Images
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提供元:白いごはん好きは糖質制限に向かない!?正しい取り入れ方とは│フミナーズ