2025.01.04
寒暖差が血圧に与える影響と健康管理のポイント
冬は1年で一番血圧が高くなる傾向があるのをご存知でしょうか。さらに、血圧は温かい室内から寒い外へ出る時など“寒暖差”がある環境に曝されると、急に高くなることがあるため、普段高血圧ではない健康な方でも要注意です[1]。
今回は、冬の血圧管理の注意点と、今すぐできる対策について解説します。
冬は血圧管理に要注意!
2005〜2008年にかけて実施された、日本人を対象にした国立循環器病研究センターの調査によると、10〜4月は1年の中で気温が下がる時期で心筋梗塞による死亡が多いと報告されています。
皮膚は寒さを感じると、体温を逃がさないよう血管が収縮するため、血圧が上がります。寒暖差が大きいと、血圧の変化が急激に起こりやすくなり、失神、不整脈などの健康被害を引き起こす“ヒートショック”が起こるリスクが高まります。
例えば、室内でも寒暖差が大きい所として、入浴時の脱衣所と入浴場、夜中のトイレなどがあります。さらに、朝は血圧が上がりやすい時間帯であり、起床時に温かい布団の中から寒い部屋に出る際にも寒暖差が大きくなるため、特に注意が必要です[1,2,3]。
ヒートショックを予防するためのポイント
WHO(世界保健機構)は、寒さによる健康被害が起こらないよう、冬は家全体を18℃以上に保つことを強く勧めています。
気温が低くなりやすい入浴前の脱衣所、トイレと廊下などが暖かくなるよう工夫しましょう。入浴時には、お風呂の温度を41℃以下にし、10分を目安に湯につかると体への負担が少ないといわれています。42℃以上のお湯に10分以上入浴すると、体温が38℃に近くなり、意識障害を起こしやすくなるため注意が必要です。
また、朝の起床時には、布団から出る前に身体を少し動かしてからゆっくりと起き上がりましょう。身体を温めることで、室内との寒暖差を少なくすることができます[3,4]。
冬の高血圧に負けない身体づくり
ここからは、冬の高血圧予防のための運動と食事について解説します。
寒いからこそ運動で血圧管理!3つのポイント
「冬は寒さのため外出を控えてしまう…。」という方は、運動不足になりがちです。次の3つのポイントを意識して少しでも体を動かすようにしましょう。
1. 持久運動などの運動を1回に10分以上持続し、合計して1日40分以上行う
「高血圧治療ガイドライン2019」では、高血圧を予防するために運動を勧めています。筋肉に負荷をかけるスクワットなどのレジスタンス運動だけでも血圧が下がりやすいとの報告をしています。
2. 運動前にストレッチなどで身体を温めてから運動をする
筋肉の損傷を防ぐために、運動前にはストレッチすることをこころがけましょう。
3. 寒い時には室内で運動するか、外へ出る時には日中の温かい時間帯に行う
寒暖差を防ぐために、寒い時間と場所には注意が必要です[1,5]。
冬に気をつけたい血圧管理の食事3つのポイント
冬は忘年会、新年会などの飲み会や外食が増える時期でもあり、お酒や塩分のとりすぎや、野菜不足に気をつけたいところ。以下の3つは、冬だけでなく年間を通して意識したいポイントでもありますが、お付き合いで飲み会や外食時にできない場合は、翌日などで調整するようにしましょう。
1. 塩分を控える
減塩は血圧を下げる効果があるとされています。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」によると、高血圧の予防のために目指したい摂取量は、18歳以上の男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。かまぼこやハムなどの見えない塩分にも注意が必要です。
2. 野菜や果物を積極的に食べる
野菜や果物に多く含まれるカリウムはナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる働きがあります。野菜料理は1日小鉢で5~6杯。果物は1日バナナ1本とオレンジ1個程度を目安に。宴会のメニューは鍋などの野菜の多いものをなるべく注文しましょう。
3. アルコールは適量にする
少量の飲酒は血圧に良いとされていますが、飲み過ぎてしまうと悪影響を及ぼします。適量は、それぞれ、およそビール中瓶1本、日本酒は1合、焼酎半合弱、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯弱です[1,6,7]。
寒い季節を健やかに過ごすために
冬の血圧管理は、日ごろの生活習慣を健康的に過ごした上で、寒暖差に注意することが必要です。血圧は上がっても自覚症状が乏しいため気づきにくい特徴があります。
血圧管理の健康維持の方法は他にも様々な方法がありますが、まずはできることから始めて、継続することが重要です。今年も健康で新しい年を迎えましょう[1]。
【参考文献】(すべて2024年11月9日閲覧)※外部サイトに遷移します
[2] 国立研究開発法人:国立循環器病研究センター, 広報活動
[3] 公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット, 高齢者の入浴事故 ヒートショックと予防
[4] 公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット, 住宅と健康長寿
[5] 公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット, 冬の寒い時の運動の注意点
[6] 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」 策定検討会報告書
【プロフィール】管理栄養士・学術修士(医療・福祉マネジメント) なかがわ けいこ
管理栄養士・学術修士(医療・福祉マネジメント) なかがわ けいこ
乳幼児から高齢者まで各ライフステージの栄養指導を経験。現在も科学的根拠に基づいたアドバイスをモットーに、現実的で続けやすく、豊かな食生活が送れるようなプランを考え食事のサポートしている。また、生活習慣病や高齢者の健康の情報発信としてコラムの執筆活動も行っている。
記事提供:株式会社Wellmira
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