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2024.07.29

「高血圧の薬」高齢者ほど飲むのをやめていい理由|「飲みきれない量の薬」服用する人に伝えたい解決法


「先生、薬が多いんです」と正直に言ってみてもいいかもしれません(写真:kouta/PIXTA)

「先生、薬が多いんです」と正直に言ってみてもいいかもしれません(写真:kouta/PIXTA)

脳神経内科が専門の医学博士で、老人医療・認知症問題にも取り組む米山公啓氏による連載「健康寿命を延ばす『無理しない思考法』」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。

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薬が多くて困っている

長く通院していると、次第に薬が増えていきます。

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

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高血圧の薬、糖尿病の薬、高脂血症の薬、骨粗しょう症の薬、逆流性食道炎の薬など、ある程度の年齢になれば、少ない人でも4、5種類の薬は飲んでいるのではないでしょうか。

朝だけで1回10錠飲んでいるという人もいます。とはいえ、どうしてこんなに薬が増えてしまうのでしょうか。

患者さんから「~がつらい」「~が痛い」といった訴えがあり、しっかり診療したものの、医師としては「心配いらないからそのままでいい」と言いたくなるような場合は、じつは少なくありません。

ですが、つらさや痛みをそのまま放置することを、患者さんに納得させるには時間がかかります。

患者さんとしても、実際につらさや痛みを感じているのですから、医師が「放置して大丈夫」と言っても、すぐに納得できないでしょう。

結果として、患者さんを安心させるためにも、診察時間を短くするためにも、訴えの多い人にはすぐに薬を出して対処してしまう、ということがあるのです。

また、それだけではありません。一度出してしまった薬はなかなか減らすことをできないのです。

こうして、あいまいな理由から出された薬が、ずっと出され続けてしまうということになります。

それに加えて、たくさんの患者さんを診ている医師の場合、いま診ている患者さんが1回にどれだけ薬を飲んでいるのかしっかり認識せずに、さらに薬を処方してしまうという場合もあります。

いずれにしても、このようにして、患者さんの安心のため、医師の診療時間節約のために、薬の量が増えていってしまうケースも少なくないのです。

「薬を減らしてほしい」と言ってみる

では、どうすれば本当に必要な薬だけを残して、飲まなくても問題ない薬を減らすことができるのでしょうか。

それは、長くかかっていて、主治医となんでも言える関係になっているなら、その主治医に「薬がずいぶん多くなって飲むのが大変です」と素直に言ってみることです。

たとえば、内科、整形外科、皮膚科など科をまたいでさまざまな診療所にかかっている場合、あなたの主治医といえど、実際にあなたがどれだけ薬を飲んでいるのか知らないことも多いのです。

お薬手帳があるので、それを見ればわかるはずですが、外来が忙しい診療所だと、毎回それを確かめなくなってしまうものです。

なかなか主治医に「薬を減らしてください」とは言えないものですが、逆にそう言える間柄こそが、医師と患者さんの、正しい関係と言えるでしょう。

素直に意見を言える関係を持っていることは、自分自身を守るためにも非常に大切なことです。

しかし、患者側から薬のことを言うと、激怒する医師がいまだにいるのも事実です。

そんなときは、主治医を変えるチャンスと思いましょう。

処方の間違いが起きやすくなってしまう

いろいろな種類の薬を飲んでいると、薬がどうしても余ってきます。

1日3回飲む薬の場合、とくに昼間は飲み忘れが多いものです。

睡眠薬など、眠れないときにだけ飲むような薬は、毎晩飲むものでもないので、余ってきます。

外来で「睡眠剤は4錠、胃薬は17日分余ってます」「あの白い錠剤は7錠、赤い錠剤は15日分余ってます」などと言い、患者さんのほうから、処方される薬の種類や量に関して細かく注文してくる場合があります。

じつはこれは、医師が非常に嫌がる行為だったりします。

というのも、忙しい診療時間内で、薬の錠数の調整をするのは非常に面倒なのです。

患者さんは薬に詳しいわけではないので、赤い薬といった情報だけを伝えてきたり、おおまかに胃薬とだけしか覚えてなかったりするので、それを確かめるだけで時間がかかります。

さらに「今日は胃薬はいりません。2カ月前にもらった痛み止めをください」というように、都度要望する薬が変わってきたりすると、ますます混乱してきてしまうのです。

結果として、処方の間違いが起きやすくなってしまいます。

実際に私のところに通ってきている患者さんのなかには、毎回違う薬の処方を要求する患者さんがいます。

からだの調子が毎回違うからしかたがないといえばしかたがないのですが、原則、薬は医師が患者さんの症状や状態を見ながら調整していくものです。

それが患者側の投薬要求だけを処方していくことになると、本来の医療とは逸れていってしまうわけです。

余った薬はどうすればいいのか

話を少し戻しますが、薬が余っている場合は、結局どうすればよいのでしょうか。

患者さんが、余った薬を薬局に持っていけば、処方する薬の数を調整してもらうことができます。

そういう調整をしたという連絡は、処方した医師にしなければなりませんが、法的には問題なく、薬を無駄にしないでいいのですから、いい制度だと思います。

しかし、細かい薬の数合わせは薬剤師にしてみれば、非常に手間がかかります。

そういったことになる前になんとかしてほしいというのが、薬剤師としても、患者さんとしても、医師としても、本音なのでしょうが、なかなかうまくいっていないのが実情でしょう。

理由はどうあれ、薬が余るということは、けっしていいことではありません。

医師に内緒で、患者さん自身が勝手に飲む薬を減らしてしまうということは、実際にあります。

これは薬によっては非常に危険なこともあるので、原則は処方通りに薬は飲むべきです。

ほとんど薬を飲む意味がなくなってくる

その一方で、あまりに飲まなくてはいけない薬が多すぎて飲みきれないというのならば、医師に相談のうえ、薬に優先順位をつけるべきでしょう。

定期的に外来に通っていると、いつも同じ薬が出て、それを変えることをしなくなっていきます。

病気には段階があるため、どこかの時点で薬を変えるなり、いっそ減らす決断をする必要があるのですが、それはそれで難しい問題もはらんでいるものです。

たとえば、認知症の薬は病気の初期では効果が期待できますが、病気が進行してしまえば、ほとんど薬を飲む意味がなくなってきます。

私は認知症の中期以降は、認知症の薬は中止するようにしていますが、それをするとかえって心配する家族もいるのです。「いままで飲んできた薬を止めていいんですか」という言い方をします。

そういう言い方をされる心配もあり、医師はなかなか思いきって薬が減らせないということもあるのです。

高血圧や糖尿病の薬も80歳を過ぎてくれば、いままでのようにきっちり血圧や血糖を基準値に近づける必要はなくなってきます。

長生きをしていると、血圧や血糖の薬も止めてもいい時期が来るのです。

勇気を出して「先生、薬が多いんです」と言ってみることです。それがあなたを救うことになるかもしれません。

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提供元:「高血圧の薬」高齢者ほど飲むのをやめていい理由|東洋経済オンライン

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