2024.07.11
「やせたり太ったり」糖尿病の彼が苦しんだループ|医師「マイルドドラッグの影響はすさまじい」
暴飲暴食を続けていた絵本作家の塚本やすしさんは、とにかく食べるのをやめられなかったそうです(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
絵本作家の塚本やすしさんは、肝臓の数値や血糖値、中性脂肪の数値が悪く、糖尿病の教育入院(治療や検査をしつつ、病気を深刻に考えていない患者の意識を変える目的もある入院)や、突然倒れて緊急入院まで経験しています。しかしそれでも、暴飲暴食はやめられなかったそうで……。『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』から一部を抜粋し、その顛末をお伝えします。
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4回シリーズでお届けしています。今回は3回目です。
1回目:暴飲暴食続けた彼が40代で直面した「散々な」現実 ※外部サイトに遷移します
2回目:「大好きなラーメンとお酒」やめられないナゼ ※外部サイトに遷移します
それでもやめられなかった暴飲暴食
教育入院、緊急入院と2回も入院して、そのたびに「規則正しい生活を送ろう」と反省するのだが、その気持ちがどうしても続かない。
40代にもなると、粗食というか和食をおいしく感じるようになった。和食は健康食といわれているが、おいしいのでつい食べすぎてしまう。それでは意味がない。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
外を歩いていると、おいしそうな店の看板が目に入り、ついフラフラと入ってしまう。どうしても、暴飲暴食がやめられないのだ。
【画像】大食い・早食い・不摂生の日々をイラストで(9枚) ※外部サイトに遷移します
だいたい、健康的な生活を3カ月くらい送り、がまんできず不摂生な生活に戻り、また3カ月過ごす、というのがルーティンになっていた。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
3カ月サイクルなのは、ちょうど病院の定期検査が3カ月に1回なので、そのせいだと思う。医者に怒られて健康的な生活を送り、ほめられたら不摂生な生活に戻る。まさしくイタチごっこである。
「好きなものを食べられない」苦行
健康的な生活を送るということは、食生活が制限されるということだ。好きなものを食べられない。私にとっては苦行の日々である。
好きなものも食べられず、なんのために生まれてきたんだろう、などと落ち込むこともあった。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
50代になると、少し落ち着いてきたのだが、暴飲暴食は相変わらず続いていた。イベントの仕事で、地方に行くことが増えたのだが、各地で夕飯をご馳走になる。
地方の食べ物は、珍しいうえにおいしいものばかりだ。お酒もおいしいし、とても楽しい時間を過ごす。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
これが禁酒をしている期間にあたると、お酒は飲まないで炭酸水を飲むようにしていた。その量も半端ない。30本くらい飲むのだ。ある店の主人には「最高記録」または「変人!」と言われた。今考えると素直にお酒を飲んでいればと思う。
白澤卓二医師からのアドバイス(1)
いったん中毒に陥ると意志の力で克服するのは難しい
マイルドドラッグ(なにげなく口に入れている食べ物で、依存性をもたらすもの)がやっかいなのは、それらがもたらす快感を脳が経験してしまうと、その後は同じくらいの刺激がないと満足できなくなる点です。
だから、よくないとわかっていても、マイルドドラッグによる快感を求めて「食べたい」という欲求をがまんできなくなってしまうのです。これは麻薬などのドラッグによる禁断症状と同じです。
いったんこのサイクルに陥ると、意志の力で克服するのは難しくなります。
塚本さんの場合は、検査数値が悪化すると節制できていたので、かなり意志の力が強いと思われます。それでも、数値がよくなるとまた食べてしまっているので、マイルドドラッグの影響、特に小麦中毒はすさまじい……。あらためてそう感じます。
私の意見としては、マイルドドラッグの中毒から抜け出すには、原因をキッパリと断ったほうがいい、そう考えます。なかなか難しいのかもしれませんが。(白澤卓二)
食べることに対しては、とにかく貪欲だ。朝ごはんを食べ終わると、昼ごはんのことを考え、しばらくしたらおやつのことを考え、夕食のことを考える。この時間がとても好きだ。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
そして、超早食いでもある。卵かけごはんなら8秒で食べるし、ふつうの刺し身定食なら3分で食べ終わる。こんな食べ方をしているから、体重はどんどん増えていく。
やせたり太ったりを繰り返す
病院での定期検査で怒られたり、自分でもさすがにまずいと思ったりすると、流行りのダイエットを試す。すると、体重は面白いように落ちる。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
一番太っていた頃は88kgだが、ダイエットすると75kgくらいまではすぐに落ちていた。やせたり、太ったり、自由自在だ。脂肪の着ぐるみを脱いだり、着たりしている感じだ。
いっそ全部脱ぎ捨てたい。でも、冬は〝ぜい肉のミートテック〞が暖かいからいいやと思ったりしたこともある(やせると寒く感じる)。すぐにやせていいなと思われるかもしれないが、やせたり太ったりを繰り返すのは、正直、めんどくさい。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
あと、人に会うと「やせた?」とか「太ったでしょう?」などと聞かれるのだが、これもやりとりが多いのでめんどくさくなる。こんな生活が25年ぐらい続いた。
すぐにやせるなら、その生活を続ければいいと思われるかもしれない。
でも、それが難しいのだ。
規則正しい生活というものを、ずっとは続けられなかった。油断するとすぐに元の生活に戻ってしまう。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
また、50代になると、体重がなかなか落ちなくなってきてしまったので、誰か100g20円くらいで、ぜい肉買ってくれないかな、とか思ったりしたこともある。
なんならタダであげてもいい。
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白澤卓二医師からのアドバイス(2)
早食いだから大食いになる 血糖値の急上昇を招くよくない食べ方
イラスト日記を読んでいて、卵かけごはんを8秒、刺し身定食を3分で食べ終わると書いてあって驚きました。これは早食いにもほどがある数字です。噛んで食べるというよりも、飲み込んでいると言ったほうがいいかもしれません。
この噛まずに飲み込む、という食べ方も大食い、肥満を招く大きな要因になっています。よく噛んで食べていると、必然的にゆっくり食べることになります。
すると、食べている間に血糖値が上昇し、脳はおなかがいっぱいになったというシグナルを受けとるので、必要以上に食べすぎないようになっています。
早食いだと満腹になったシグナルが脳に届く前に、必要以上に食べてしまうことになります。一気に食べてしまった結果、食後の血糖値が急激に上昇することに……。
白米、ラーメン、ドーナツなどマイルドドラッグ食は、やわらかくて食べやすいものが多いので、それも中毒を招く要因となっているのでしょう。(白澤卓二)
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提供元:「やせたり太ったり」糖尿病の彼が苦しんだループ|東洋経済オンライン