2024.07.10
「ぐっすり眠れない人」今すぐ摂るべき5つの食材|「眠りを誘うホルモン」が睡眠の質を高める
睡眠の質を高めるのに効果的な「栄養素」と「食材」について解説します(写真:amadank/PIXTA)
この季節になると、「暑くて寝苦しい」「朝早いうちに目が覚めてしまう」など、さまざまな睡眠のトラブルに悩む人も多いのではないでしょうか。どんなに寝室の環境を整えても、そもそもの栄養素が足りていないと、こうした悩みは解消できないこともあると、2万人以上の睡眠の悩みを解決してきた睡眠専門医、白濱龍太郎氏はいいます。
白濱氏が提唱する「ぐっすり眠る」ために必要な食材とは。
※本稿は、白濱氏の著書『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』から、一部を抜粋・再編集してお届けします。
『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
「ぐっすり」眠るために必要な睡眠の「質」
みなさんは、毎晩「ぐっすり」眠れていますか?
必要な睡眠時間はいちおう保てていると感じている人も、「ぐっすり」かと聞かれると、答えに詰まってしまうのではないでしょうか。
じつは、日本人の睡眠時間は世界で最下位といわれています。
ただでさえ真面目で勤勉な国民性といわれているところに、スマホやタブレットから洪水のように流れてくる情報を受け止めることで、日本人の睡眠時間はどんどん削られています。
ただし、睡眠においては「時間」も大切ですが、何よりその「質」がカギとなります。人は眠っている間、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類の状態を繰り返していますが、ノンレム睡眠のなかでも「深睡眠(しんすいみん)」と呼ばれる状態をしっかりとれていることが、「ぐっすり眠る」ことにつながります。
とはいえ、「今日はぐっすり眠るぞ」と気合いを入れたところで、深睡眠がとれるかどうかはコントロールできません。それどころか、「ぐっすり眠らなければ」と思いすぎてしまうと、脳が覚醒して眠りが浅くなってしまう可能性もあります。
「トリプトファン」で睡眠ホルモンを働かせよう
では、どうすれば毎日「ぐっすり眠る」ことができるようになるのでしょうか。じつは、食生活を少し改善するだけで、睡眠の質は驚くほどよくなります。
「食べ物って睡眠に影響があるの?」と意外に思われるかもしれませんが、食べ物と睡眠には密接な関係性があります。なぜなら、ぐっすり眠るには「トリプトファン」の摂取が欠かせないからです。
そもそも睡眠の質を高めるには「眠りを誘うホルモン」ともいわれている「メラトニン」の分泌がカギとなりますが、このメラトニンの材料となる成分がトリプトファンです。
あまり聞いたことがないという人もいらっしゃるかもしれませんが、トリプトファンとは牛乳から発見されたアミノ酸で、体内では生成できず、食品からしか摂取できません。
トリプトファンは体内に入ると自律神経の働きを活性化させ、心のバランスを整える「セロトニン」というホルモンに変わります。そして、日中に体内で分泌されたセロトニンは、夜になるとメラトニンに変化します。
つまり、メラトニンの分泌を高めるためには、セロトニンが昼までにしっかり分泌されていることが大切です。そのためにも、朝からしっかりとトリプトファンを摂取することが重要なのです。
〔トリプトファンが多く含まれている食材〕
●かつお、まぐろ、牛肉などのタンパク源
●豆腐や納豆などの大豆製品
●チーズや牛乳などの乳製品
●卵やナッツ類、バナナなど
ちなみにトリプトファンはインスリンによって脳へと運ばれるので、白米などの炭水化物と一緒に摂るのがおすすめです。
焼き鮭、納豆、白米、みそ汁といった和食の朝ごはんは、ぐっすり眠るうえでは理想的な食事といえます。洋食ならば、ベーコンエッグ、チーズトースト、ヨーグルトといった乳製品をしっかりと摂れるメニューもおすすめです。
朝は忙しくて朝食がとれないという人は、「トリプトファン」「炭水化物」「ビタミンB6」という3つの栄養素が含まれているバナナだけでも食べるとよいでしょう。
まだまだある! 睡眠に効果的な栄養素
睡眠の質を上げてくれる栄養素は、トリプトファンだけではありません。チョコレートのCMなどでも知られる「GABA(ギャバ)」は、心身をリラックスさせる作用があり、不眠の改善に効果が期待できます。
GABAの成分はγ‐アミノ酪酸というアミノ酸の一種で、ストレスを軽減する機能や血圧を下げる効果などが報告されています。
GABAは血液脳関門を通過できないので効かないのではという議論もありますが、腸脳相関によって脳内の受容体感受性が上がったり、血圧低下作用を通して睡眠を促す可能性があります。
〔GABAが多く含まれている食材〕
●玄米、雑穀類
●トマト、ブロッコリースプラウト
●発酵食品、きのこ類
●カカオ
また、「チロシン」というアミノ酸も、睡眠を助けてくれる成分です。
チロシンは気分を向上させるドーパミンや、やる気ホルモン「アドレナリン」の原料となるため、「抗うつ」の作用があります。また、慢性的なストレスや疲労を和らげる効果も期待できます。
〔チロシンが多く含まれている食材〕
●さくらえび、しらす、豚肉、鶏肉などのタンパク源
●たけのこ、かつおぶし、納豆、アーモンド、ピーナッツ、牛乳など
ここまで質のよい睡眠に効果的な栄養素について説明してきましたが、栄養はバランスよく摂取することが大切ですし、毎日、睡眠のことだけを考えて食事を決めるわけにもいきません。また、食事で栄養素を摂取するには、毎日の習慣として続けることが大切です。
そこで今回、これらすべての栄養素をしっかり含み、それぞれの栄養の吸収も良くした「ぐっすりスープの素(もと)」を考案しました。「ぐっすりスープの素」は、「蒸し大豆」「トマト」「粉チーズ」「みそ」「酢」の5種類の食品を混ぜ合わせて作ります。
(出所:『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』より)
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
ここではそれぞれの栄養素と効果を見ていきましょう。
身近な食材に秘められた「ぐっすり」効果
トマト
トマトはトリプトファンやGABAといった睡眠の質改善に効果的な栄養素が含まれているほか、抗酸化作用の高いリコピンや疲労回復に効果的なクエン酸、美肌効果のあるビタミンなど、栄養の宝庫です。
さらにはうま味成分であるグルタミン酸が豊富に含まれているため、スープのおいしさの決め手にもなっています。
蒸し大豆
大豆製品には、トリプトファンが多く含まれています。また、水溶性食物繊維も豊富なため、腸内環境を整え、血糖値の上昇を抑制する効果もあります。
ちなみに水煮の大豆でもレシピ的にはOKですが、蒸し大豆がおすすめ。その理由は、水煮の大豆は煮る過程で水のなかに栄養成分が溶け出してしまいますが、蒸し大豆は水を加えることなく蒸しているので、栄養素も保たれたままだからです。さらにはレトルトパウチのかたちで売られているものが多いので、袋の上から直接つぶして使えたりと、調理するうえでもとても便利です。
また、大豆には疲労を和らげる効果のある「チロシン」も含まれています。
みそ
蒸し大豆同様、みそのもととなる大豆にはトリプトファンが多く含まれています。また、発酵によってアミノ酸やビタミンが多量に生成されるため、大豆よりもさらに栄養的に優れた効果を発揮します。トリプトファンは14時間前後でメラトニンに変化するため、朝食に「ぐっすりスープ」を飲むと、より効果的です。
粉チーズ
乳製品にはトリプトファンが多く含まれています。「ぐっすりスープの素」に牛乳やチーズを足してアレンジすれば、睡眠に必要な栄養をより効果的に摂取できます。さらに、チロシンも多く含まれているのが特徴です。
ほかの食材の吸収を助けてくれる「お酢」
酢
お酢には血糖値の上昇を緩やかにする働きがあるため、睡眠の質を高める効果が期待できます。
『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
また、体脂肪・内臓脂肪の減少や血圧低下作用、疲労回復などにも効果的です。さらに、ほかの食材の吸収率を上げる作用もあります。
スーパーで手に入る食材ばかりで作れて、包丁やなべを使わずできるので、忙しい方でも続けやすいかと思います。
現に、このスープで夜中に起きる回数が7回から0回になった、朝とてもすっきり起きられるようになったという効果が出ています。
さらに、朝、昼、晩で追加する食材を変えることで、より睡眠改善の効果が期待できます。いい睡眠はまず食事から。ぜひ、毎日の睡眠のために試してみてください。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「ぐっすり眠れない人」今すぐ摂るべき5つの食材|東洋経済オンライン