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2024.04.11

若くても「脳ドック」"受けたほうがいい人"の特徴|「どんな病気がわかる?」「費用は?」医師が解説


脳ドックは受けたほうがいい?対象となる人や理由についてお話しします(写真:Zinkevych/PIXTA)

脳ドックは受けたほうがいい?対象となる人や理由についてお話しします(写真:Zinkevych/PIXTA)

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認知症に脳梗塞、そしてくも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤――。

こうした病気があるかどうかをチェックするのが「脳ドック」だ。健康保険が使えず、費用もけっこうかかる。気になってはいるが、受けるべきか悩んでいる人もいるだろう。

そこで、脳神経外科医で脳ドックにも詳しい金中直輔医師(かねなか脳神経外科院長)に、受けたほうがいい人や年代、そして理由について聞いた。

脳ドックとは、脳に関係するさまざまな病気のリスクを見つけることを目的に行われる健康診断の一種。メインとなるのは、「頭部MRI(磁気共鳴画像診断)」と「頭部MRA(磁気共鳴血管撮影)」などの画像検査だ。

CTとレントゲン、MRIの違い

画像検査というと、X線(いわゆるレントゲン)やCT(コンピューター断層撮影)を思い浮かべる人もいると思うが、何が違うのだろうか。

「MRIは磁気を利用して画像を撮影する検査法で、放射線によって画像を映し出すX線やCTとは撮影法が違います。放射線被曝がないのも特徴です」と、金中医師は説明する。

CTは出血した病変をとらえるのが得意で、脳出血やくも膜下出血が疑われる場合や、頭部外傷の検査に向いている。撮影時間も1~2分と短く、急いで撮影する必要がある救急診療に適しているそうだ。

一方、MRIは血管の異常も含めた病変を詳しく映し出す検査で、脳の病気全般がわかる。「予防医学にはMRI検査が向いている」(金中医師)という。

頭部MRAは、頭部MRIの画像から血管の画像だけを取り出し、コンピューター上で処理したもの。脳動脈瘤(脳動脈にできたふくらみでくも膜下出血の原因となる)や、血管の狭窄など、血管の細かい異常をとらえることができる。

「最低でも頭部MRIとMRAの検査ができなければ、脳ドックとはいえません。日本脳ドック学会の推奨する標準的なメニューにも、この2つの検査が含まれています。また、これは専門的になりますが、MRIの画像の精度でいうと、『1.5T(テスラ)以上のMRI装置が必要』とされています」(金中医師)

テスラは、MRIの磁石を引き付ける強さのことで、強いほど鮮明な画像が得られる。

若くても脳ドックを受けたほうがいい人

日本脳ドック学会では、「中・高齢者」「脳卒中・認知症の家族歴がある人」「喫煙している人」などのリスク因子を持つ人たちを、脳ドックの対象としている。

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これに対し、金中医師はリスク因子にかかわらず、「30代になったら一度、脳ドックを受けたほうがいい」と考える。

とくに若くても喫煙習慣や大量飲酒、ストレス、家族にくも膜下出血になった人がいるといったリスクがある人は、脳ドックを受けるメリットが大きいそうだ。それはなぜか。

「くも膜下出血は中高年だけではなく、脳動脈瘤や脳血管の奇形が原因となるため、年齢に関係なく20~30代でも発症します。この病気を予防できる一番の手段が脳ドックなのです」(金中医師)

くも膜下出血は、頭蓋骨の内側にあるくも膜と、軟膜の隙間のくも膜下腔(くう)に出血が起こる病気だ。約80%は、脳動脈瘤が血圧の上昇などにより破裂することで発症する。

「原因となる脳動脈瘤は生まれもった『できやすさ』があり、検査をすると若い人にも見つかります。小さなものを含めると100人に1人が持っているという報告もあります。この脳動脈瘤は太い動脈にしかできないので、頭部MRAでほぼ100%見つけられます」(金中医師)

くも膜下出血は致死率40%という怖い病気だ。しかし、破裂前の脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)の段階で見つけて、経過観察を続け、破裂リスクが高まってきたタイミングで予防的手術を受ければ、くも膜下出血を防ぐことができる。

脳ドックというと費用が高いというイメージがあるが、それは、画像はAIや読影専門の放射線専門医によってチェックされるからだ。やはり、すべての脳の病気を見つけようとすると、時間も費用もかかってしまう。実際、医療機関によっても異なるが、相場は3万~4万円ほどだ。

ただ、金中医師によると、最近は若い人を対象に、脳動脈瘤の早期発見にフォーカスした比較的安価な脳ドックも出てきているという。「若い人は、そうしたところを選ぶといいと思います」と金中医師は言う。

なお、検査を受けて脳動脈瘤がなければ、毎年必ず脳ドックを受けなくてもいい。見つかった場合は医療機関で経過観察、または必要に応じて予防的治療を考えることになる。

(関連記事:「頭痛を甘く見るな」危ない"警告頭痛"の4大特徴) ※外部サイトに遷移します

40代以降の脳ドックの受け方

40代以降は、生活習慣病やメタボリックシンドロームを抱える人が増え、動脈硬化が進行してくる。この年代になったら、脳梗塞のリスクについてもしっかりチェックできるフルコースの脳ドックが望ましいという。

脳梗塞とは、脳に栄養や酸素を運ぶ動脈が詰まることにより、脳神経細胞が部分的に死んでしまう病気。損傷を受けた部分によって、まひやしびれのほか、言語障害やものごとを理解したり、記憶したりする機能が低下する高次脳機能障害など、さまざまな障害が残り、生活に支障がおよぶことも多い。

脳梗塞のリスクを見るには、頭部MRI、頭部MRAのほか、頸動脈エコー(超音波)や血液検査、心電図などが必要だ。これはスタンダードな脳ドックのメニューで、日本脳ドック学会が推奨している内容になっている。

頸動脈エコーは、首にある頸動脈を超音波で測定する検査だ。頸動脈が狭くなっていたら動脈硬化が進行しているサイン。脳梗塞のリスクが高いといえる。血液検査では、血糖値やコレステロールなどの値を調べ、生活習慣病の兆候があるかどうかチェックする。

金中医師によると、実際によく見つかるのは、脳梗塞の前兆ともいえる「無症候性脳梗塞」だ。主に5mm以下の細い血管にできる脳梗塞で、その名の通り症状はなく、「隠れ脳梗塞」とも呼ばれている。

「無症候性脳梗塞は脳の組織に明らかな影響が生じないため、症状が表れません。ただし、放っておくと太い血管が詰まり、本格的な脳梗塞になる可能性がある。また、小さな脳梗塞が多発することで、血管性の認知症になる場合もあります」(金中医師)

無症候性脳梗塞が見つかる人は、高血圧や糖尿病、脂質異常症があることがほとんど。このため、再検査で診断がついたら食事や運動、禁煙も含めた生活指導が必要になる。

50代は「海馬の状態」もチェック

50代に入ると、物忘れが徐々に増え、認知症が気になる年頃だ。そのときは、前出のスタンダードな脳ドックに、「VSRAD(ブイエスラド)」を加えるとよいそうだ。

「VSRADは撮影した頭部MRI画像を使って、記憶をつかさどる海馬の萎縮度を測定する画像診断システムです。最近は多くの脳ドックで取り入れられています。海馬の体積は非常に小さいため、従来の脳ドックで見落とされていたものも、VSRADでは確認できます」(金中医師)

VSRADはオプションで用意している施設が多く、費用は3000~3500円が相場だ。

海馬の萎縮は、アルツハイマー型認知症に特徴的に表れる。

「認知症は早期に見つかるほど、進行を遅らせることができます。アルツハイマー型認知症の新薬レカネマブも、早期の患者さん向けの薬です。脳ドックでVSRADを受ける人が増えれば、救われる患者さんが増えますし、介護問題の解消にも役立つと思います」(金中医師)

脳ドックでは紹介してきた病気以外にも、脳腫瘍や微小な脳出血を見つけることができる。検査は痛みなどを伴わず、放射線による被曝もない。

脳ドックの指針を定めている日本脳ドック学会のホームページでは、全国の認定施設を紹介しているので、気になる人はチェックしてほしい。

日本脳ドック学会のホームページ ※外部サイトに遷移します

最後に施設選びのポイントを紹介する。

カギは「脳ドックで異常があった患者さんへの対応がしっかりしていること。この点では脳神経外科医がいる施設や、そのような医療機関と連携していることが望ましい」と、金中医師は言う。

未破裂の脳動脈瘤が見つかったら?

例えば、未破裂脳動脈瘤が見つかったとしよう。

やはり多くの人は不安で頭がいっぱいになるだろうが、実は瘤ができた部位や大きさにより、1年以内の破裂リスクがどのくらいあるか、最近の研究でわかっている。

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「まずは、そういったことを、検査を受けた方にていねいに説明し、今度どういうことが必要か、どんな点に注意をしたほうがいいかなど、その方の不安を取り除いてくれるような対応が大事です。速やかに医療機関に紹介してくれるかどうかも重要な要素です」(金中医師)

脳ドックは時間と費用がかかるものの、体への負担はほとんどなく、寝ている間に検査が終わる。転ばぬ先の杖として検討してもいいのではないだろうか。

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かねなか脳神経外科院長
金中直輔医師

2003年、宮崎医科大学(現 宮崎大学)医学部医学科卒。東京都立墨東病院救命救急センター、同院脳神経外科、東京警察病院脳神経外科、同院脳血管内治療科医長、Stroke care unit室長を経て、2019年、頭とからだのクリニック かねなか脳神経外科を開設。東京警察病院脳血管内治療科非常勤医師も務める。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本頭痛学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医など。

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提供元:若くても「脳ドック」"受けたほうがいい人"の特徴|東洋経済オンライン

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