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2024.03.30

健康食品「こんなに効く」が信用できない納得事情|グルコサミンやヒアルロン酸に効果はあるのか?


(写真:tabiphoto/PIXTA)

(写真:tabiphoto/PIXTA)

これまで、一般的には人の寿命を人為的に延ばすなど不可能と思われてきました。しかし、近年の科学はそれを可能にするヒントをつかみました。それがサーチュインです。そのヒントを基にした研究者の努力により、人の寿命延長はより現実味を帯びてきたのです。しかも、もたらされた長寿は寝たきりや認知症などを伴わない、いわゆる健康長寿なのです。

このような、いわば「正しい寿命の延ばし方」を査読付き論文の研究をベースに解説した今井伸二郎さんの著書『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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「医食同源」は日本で生まれた造語

食べることは、生物の基本です。当たり前のことでも言われてみないと気づかないのは人の常ですが、食べることができなければ人間は死んでしまいます。

食の三機能という言葉があります。その三機能とは、第一次機能として「栄養」に関わる機能、第二次機能として「嗜好」、いわゆる美味しさに関する機能、そして第三次機能として「生体調節機能」です。

特に、この第三次機能こそ、最近多く取り上げられている食品の健康機能性です。食の確保は人類の歴史上重要な事柄であり、それが戦いの目的になったのも事実です。

もちろん食の確保は栄養として食を求めたわけですが、食と健康にも深い関係があることは、かなり昔から認識されていたようです。事実、医食同源や薬食同源、インドのアーユルヴェーダなどでは食事により健康を維持することの重要性を説いています。この医食同源、薬食同源という言葉は古代中国の言葉ではなく、実は日本で生まれた造語です。

1970年代ごろ、栄養第一主義の欧米食を避ける動きと日中国交回復の機運から、中国式養生のブームが起こり、古代中国の医や薬が食と同源とする思想を日本で造語したのがこの言葉の起源です。健康の維持増進には食生活のみならず、適度な運動や休養が大切といわれています。

医食同源という造語が作られたころは体を動かす労働が主体であり、十分な運動量が確保されていました。ところが、近年体を動かす仕事は少なくなり、ほとんどがホワイトカラーとなりました。

さらに、交通インフラの発達により、通勤でさえ運動にはならなくなったため、今では運動や休養は自らのお金を使い、意識し努力しなければ得られないものになってしまいました。しかも誰もが適度な運動や休養を簡単に得られるわけではなく、時間的にも経済的にも余裕がある人の特権となりつつあります。そんな時代的な背景もあって、健康食品が着目されるようになったのです。

健康食品の標的となった疾患

一時代前の健康食品は、食生活の変化からビタミンなどの摂取不足の栄養成分を補充する目的のものがほとんどでした。ところが、近年の食生活は飽食の時代とよばれるように、栄養面での不足よりも栄養の過剰摂取が問題となったことから、メタボリックシンドロームなどの過食が原因の疾患を標的にした健康食品が主流になってきました。

さらにその傾向は変化していき、より需要の多い疾患に対する健康食品を開発する傾向に加速していきます。その結果標的となった疾患が変形性関節症です。

変形性関節症とは、関節の構成成分である軟骨がすり減ってしまい、関節の形態が著しく変形してしまう病気です。軟骨がすり減る以外にも関節内で多くの変化が生じるため、関節の痛みや腫れなどが現れます。自身の体重の負担が多い荷重関節によくみられる関節症です。特に、股・膝・足関節でみられることが多いですが、非荷重関節でも頻繁に動かすことの多い、肘関節では頻度は少ないものの生じることがあります。

この疾患の治療や発症リスクの軽減には、適度な運動を行い、体重を減らし、筋力を保つことが重要です。しかし、発症は高齢者が多く、現実にはそのような生活習慣の改善はうまくいかないケースがほとんどです。そこでさまざまな健康食品がこの変形性関節症を標的に開発されました。例えば、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、コラーゲンなどがあります。

本当に効果があるなら医師が飛びついている

それでは、これら健康食品は本当に変形性膝関節症に効果があるのでしょうか? はっきりいって、私はこれらの成分には効果がないと思っています。

どの成分に対してもいえることですが、まず、第一に整形外科医が、これら成分の効果を認めていないことです。医師によっては、薬でなくても効果があれば食品成分での効用を推奨する方もおられます。

この疾患は、次の図表に示すような対症療法的に用いられることがあります。しかし、残念ながらこれらの薬剤はあくまで疼痛緩和などの対症療法であって、治療や予防ができるものではありません。

(画像:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』より)

(画像:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』より)

この疾患の予防は前述したように、生活環境の改善しかなく、治療には人工関節などの外科的治療法しか認知されていません。医師としても、もし効果的な食品成分による治療法、予防法があるとしたら飛びつかないはずはありません。実際のところ、欧米はじめ国内でもこれら食品成分の有効性を検証する臨床試験が実施されましたが、いずれも効果は認められませんでした。

例外的に、これら成分を開発した企業が関与して実施された臨床試験で、軽度疾患を抑制する結果が得られていますが、それらの試験はいわゆるシングルクローズドテストです。シングルクローズドテストとは、ダブルブラインドテストの対比を示す臨床試験のことです。ダブルブラインドテストは、試験を受ける被験者も試験を実施する医師も被験者に投与されたサンプルが、目的とする成分を含む被試験物なのか、プラセボとよばれる偽薬なのか開示せずに試験が行われる種類の臨床試験のことです。

一方、シングルクローズドテストでは、目的とする成分を含む被試験物のみを試験する、対照物のない試験です。どんな人でも、「これは効果があります」といわれてからその物質を食べて試験に臨めば、何となく効果が現れるものです。この効果をプラセボ効果といいます。

私が知る限り、変形性関節症に対して実施された臨床試験で、有効性を示したダブルブラインド試験はありません。もし、私の勉強不足でそのようなものがあったとしても、その試験の信頼性が高いとは思えません。なぜなら、まともに実施された信頼ある臨床試験とは異なる結果だからです。

グルコサミンなどに効果はある?

ここからは、それぞれの化合物がなぜ効果がないかとする根拠について、関連する特性についてご説明しましょう。

まず、グルコサミンです。グルコサミンはよくテレビコマーシャルなどで宣伝しているのでご存じの人も多いと思います。変形性膝関節症に対する効果があるとして販売されています。しかし、グルコサミンは名前の通り、グルコースにアミン(アミノ基)が付いた構造です。

グルコサミンは消化管に入ると、消化酵素によりグルコースからアミノ基が外され、グルコースになります。グルコースはご存じの通り、砂糖やでんぷんなどが分解されて生成される単糖です。つまりグルコサミンを経口で摂取した場合、グルコースを摂取することと何ら変わりはないわけです。

このグルコサミンについて、臨床医師が50~60歳の6691人の女性を対象として行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されませんでした。ただし、軽症者では有効とする報告もあるのですが、この試験は前述したシングルクローズドテストであって、その信用度は低いものです。

次にヒアルロン酸はどうでしょうか? ヒアルロン酸も変形性膝関節症に対する効果があるとして販売されています。高分子ヒアルロン酸を膝関節嚢内に直接注入すると効果があることが確認されています。

しかし、ヒアルロン酸は直鎖状の多糖化合物です。小腸は食物を栄養として吸収する器官ですが、糖であれば単糖もしくは糖が2つつながった二糖類以上の大きな糖鎖は吸収することができません。ですので、ヒアルロン酸も腸から吸収されることは理論的にありません。ヒアルロン酸も消化酵素であるアミラーゼにより分解されてしまい、その分解物はやはり単糖です。とてもそのような単糖に効果を期待することはできません。

ヒアルロン酸は糖がたくさんつながった高分子の多糖であって、潤滑作用があります。つまり関節内部に注射した場合は滑膜と骨の摩擦を減らして痛みを止める働きがあります。しかし、単糖になってしまっては、残念ながら潤滑作用はなくなってしまいます。もし、潤滑作用以外の効果があるとしても、経口投与されたとしたら変形性関節症に対しては効果があるとは思えません。

次にコンドロイチン硫酸ですが、ヒアルロン酸と同じく直鎖状の多糖化合物です。こちらも同じく、大きな分子の状態では吸収されませんし、消化酵素もしくは腸内細菌の酵素により吸収されるときには分解されてしまいます。ですので、コンドロイチン硫酸も経口摂取した限り効果は期待できないわけです。

コラーゲンは体にどれくらい含まれている?

次はコラーゲンです。ここで質問ですが、皆さまはコラーゲンは体にどれくらい含まれていると思いますか? 実は、体のタンパク質の中で最も多く、全タンパク質の30%ほどもあるといわれています。タンパク質は体重の20%くらいありますから、50㎏の人だと約10㎏、その30%だからなんと3㎏もある計算になります。

そして、ここが大事なことですが、コラーゲンの構成アミノ酸は必須アミノ酸ではなく、全ての構成アミノ酸が体内で合成可能であることです。

タンパク質はアミノ酸が重合した高分子化合物です。トリプシンなどの消化酵素により腸内で分解されることは、ヒアルロン酸やコンドロイチンと同じです。仮に健康食品として10gのコラーゲンを摂取したとします。3000gあるコラーゲンに10g足したとして、どのくらい効果があるかご理解いただけるかと思います。しかも、このコラーゲンを構成するアミノ酸は全て体内で合成されるので、その原料であるアミノ酸が追加されても意味がありません。

コラーゲンのように大量に存在するタンパク質は、経口で摂取しても皮膚や関節、軟骨などに与える影響はほとんどありません。確かにコラーゲンは軟骨を構成する主要な成分ですが、経口で摂取してもその効果は全く期待できないのです。

多くの健康食品の効果は正しいとはいえない

変形性膝関節症に効果があるとする4成分について解説してきましたが、これはあくまで経口摂取して変形性関節炎に効果が期待できないことを説明したにすぎません。ヒアルロン酸のように、注射で関節局部に注射するのであれば、効果は期待できます。また、対象が変形性関節症に対してではなく、美容成分として皮膚への塗布投与であれば、この限りではありません。ものによっては効果を示すものもあるかもしれません。

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私がこの項目でお伝えしたいのは、かなり多くの健康食品で標榜している効果は、必ずしも正しくはないという事実を認識していただきたいということです。

毎日のように、日中のテレビコマーシャルでは、「こんなに効果があります」と自分の会社の製品を宣伝していますが、その多くははっきりいって眉唾としか思えないということです。

私は機能性食品を研究する一研究者として、このような状況が我慢できないほど、ひどい状況になっていることに強い危惧を感じています。まともに研究し、たゆまぬ努力により機能性食品を発見、開発してきた多くの方々を知っています。

そのような方々により開発された食品と、まやかし食品が同じに評価されてしまっては、私としてはとても我慢ができないのです。この事実を皆さまに分かってほしいものと思い、書かせていただきました。

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提供元:健康食品「こんなに効く」が信用できない納得事情|東洋経済オンライン

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