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2023.12.24

コレステロール値「高めを放置」する人の怖い真実|専門位が解説「医学的根拠に基づく5つの対策」


コレステロールは高くてもいい? 実際のところを聞いてみました(写真:CORA/PIXTA)

コレステロールは高くてもいい? 実際のところを聞いてみました(写真:CORA/PIXTA)

高くてもいい? 下げたほうがいい?

かつて論争まで引き起こしたコレステロール。現在、数々の研究で総コレステロール値とLDL(悪玉)コレステロール値の上昇に伴って、狭心症や心筋梗塞の発症や死亡率が上昇することが明らかになっている。しかし、いまだに「コレステロール値は高いほうがいい」と主張する専門家やメディアもある。

実際はどうなのだろうか、元帝京大学医学部長で、日本の循環器医療を牽引してきた寺本内科・歯科クリニックの内科院長の寺本民生さんに意見を聞いた。

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コレステロール論争とは?

コレステロール論争は、2000年代の「日本脂質介入試験(JーLIT)という、コレステロール値が高い一般市民約5万人を対象に行った大規模な試験結果に端を発する。

被験者は、総コレステロール値が220mg/dL以上の35〜75歳男性と、更年期以降で70歳以下の女性で、シンバスタチンというスタチン系薬剤(コレステロール値を下げる薬)を服用してもらい、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の予防効果があるかどうかを見た。

1992年から1999年までの間、定期的にコレステロール値の検査を実施し、全死亡率、冠動脈疾患の発症率、心臓突然死の発症率などを追跡した。その後、承認を得た1万9805人に対しては、さらに期間を延長して4年間の追跡調査を継続した。

研究結果でわかったこととは?

6年間の追跡の結果は以下だった。

★総コレステロール値240mg/dL以上、LDLコレステロール値180mg/dL以上、HDLコレステロール値40mg/dL未満のグループで、冠動脈疾患や心臓突然死の危険性が増した。

★総コレステロール値180mg/dL未満、LDLコレステロール値80mg/dL未満のグループでも死亡率が高くなった。特にLDLコレステロール値80mg/dL未満のグループではがんによる死亡率が高かった。

10年間の追跡では、次のようになった。

★総コレステロール値240mg/dL、LDLコレステロール値140mg/dL以上、HDLコレステロール値40mg/dL未満のグループで、冠動脈疾患や心臓突然死の危険性が増し、主要冠動脈疾患の発症は、年間で1万分の9だった。

問題視されていた副作用の発生率は1.46%で、重大な副作用である横紋筋融解症(骨格筋を作る細胞が溶けたり壊死したりする症状)はなかった。

Japan Lipid Intervention Trial(J-LIT), a Follow-up Study of Simvastatin-Treatment Performed in Japan

The original article gave relative risk for each cause of death. Here the relative risk multiplied by the mortality for each cause is shown to visualize the contribution of each cause to all-cause mortality. It should be noted that this subject population included FH at 12-fold greater incidence than in general population (0.2%).

Japan Lipid Intervention Trial(J-LIT), a Follow-up Study of Simvastatin-Treatment Performed in Japan The original article gave relative risk for each cause of death. Here the relative risk multiplied by the mortality for each cause is shown to visualize the contribution of each cause to all-cause mortality. It should be noted that this subject population included FH at 12-fold greater incidence than in general population (0.2%).

これらの結果に基づき、以下が定義された。

★総コレステロール値220mg/dLは高脂血症(脂質異常症)。

★発症予防では、総コレステロール値240mg/dL以下、LDLコレステロール値160mg/dL以下、HDLコレステロール値40mg/dL以上を治療目標とする。

★再発予防では、LDLコレステロール値120mg/dL以下、HDLコレステロール値40mg/dL以上を治療目標とする。

だが、この定義に対して、日本脂質栄養学会がかみついた。

同学会は『長寿のためのコレステロールガイドライン』において、「総コレステロール値あるいはLDL‐コレステロール値が高いと、日本では何と総死亡率が低下する。つまり、総コレステロールは高い方が長生きなのである」と提言したため、論争となったのだ。

この論争について寺本さんは、「コレステロールと病気の関係を示したグラフの解釈や、そのほかの評価において解釈の違い」と述べる。

前出のグラフを見るとわかるが、試験結果は“Jカーブ”という、コレステロール値の高いほうと低いほうの両側で死亡率が上がるという軌跡を描いた。総コレステロール値220〜240mg/dLのグループが最も死亡率が低く、それよりも高くても低くても死亡率が上がっていた。

そのため同学会は「220mg/dL以上を病気と定義するのはどうか」と異論を唱えたのだ。「コレステロール値が高くても薬を飲む必要はなく、むしろコレステロール値が低いと死亡率が高まる」という主張だった。

だが、この試験の被験者はコレステロール値が高いだけではなく、高血圧、高血糖値、肥満を併せ持つ人も含まれていた。コレステロール値単独と死亡率について見ただけではない。

「220〜240mg/dLで死亡率が低くなったのは、食事、運動、薬物療法によってコレステロールをコントロールしたことで、ほかの症状も改善できたからだといえます。値が高い人たちはコントロールがうまくいかず、死亡率が上がったのでしょう」と寺本さん。

実際、LDLコレステロール以外の主要危険因子(高血圧、高血糖値、肥満)が1つ増えるごとに心筋梗塞の発症リスクが倍増することは、J-LITの結果でもわかっている。

低値なのに死亡率が高い理由

コレステロールの低値で死亡率が高かったのは、肝臓病との関連があり、その後に肝がんを発症したケースがあることが日本の研究で判明している。アメリカでは、タバコなどで生じる呼吸器の病気COPD(慢性閉塞性肺疾患)が多いこともわかっている。

「コレステロールの低値は死亡率の“原因”ではなく、死に至るような病気を発症していた“結果”の可能性があったのです」と寺本さんは説明する。

もちろんコレステロール値の基準は現在は妥当性があっても、将来、変わる可能性はゼロではない。しかし、現時点では極端に高い数値の人、複数の生活習慣病を有する人、家族性高脂血症の人は、高リスクであることは明らかだ。

「それなのに、『コレステロール値が高いほうが長生き』と言ってしまえば、コレステロール値が高い人たちは免罪符を与えられたように、その説に飛びついてしまうかもしれません。しかし、そもそもコレステロール値が高い人は、ほかの生活習慣病を有していることが多い。誤解に基づいた対応で、将来、不幸な結果に見舞われないとも限らないのです」(寺本さん)

実は、その後も同じような論争が続いている。

例えば2014年、LDLコレステロールに関して、日本動脈硬化学会と、日本人間ドック学会・健康保険組合連合会が異なる基準値を出した。このときマスコミは「基準値が緩和された」と報道し、一時話題となった。

その後も、ことあるごとに日本動脈硬化学会の主張に対して、反論する意見が一部メディアでは取り上げられている。だが、学会の主張をくつがえすような明確な科学的根拠は出ていない。

「コレステロールで薬を飲むべきか」ということに関しては、『MEGAスタディ』という研究で有効であるという結果が出た。

研究の対象者は、冠動脈疾患にかかったことのない軽〜中等度(総コレステロール値が220〜270mg/dL)の脂質異常症の患者約8000人(男性40〜70歳 女性閉経後〜70歳)。対象者を食事療法だけのグループと、食事療法+スタチン併用グループに分け、約5年間追跡した。

その結果、スタチンを併用したグループで冠動脈疾患が33%減少した。

不確かな偏った情報や認識で健康法に取り組み続けたら、命取りだ。「病気に対する予防法や対処法を誤解して、間違った生活習慣を続けたり、反対に効果がないとあきらめてしまったりするのは、非常によくない」と寺本さんは強調する。

コレステロールや動脈硬化の情報は、日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版』を参照したい(サイトはこちら)。

サイトはこちら ※外部サイトに遷移します

コレステロールの「真実」

最後に、現時点でわかっている動脈硬化に関する医学的根拠を、寺本さんのアドバイスも踏まえつつ紹介する。

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★動脈硬化予防に有効なのは、禁煙とLDLコレステロール値を下げること

動脈硬化の一番の要因は喫煙だが、近年、喫煙率がかなり下がったため、次に糖尿病、LDLコレステロール、血圧のコントロールが重要だ。

★LDLコレステロール値を下げるのは食事の管理

タンパク質は魚、豆腐、大豆製品など、植物性タンパク質から摂る。野菜、海藻を食べる。飲み物は清涼飲料水を控え、水や緑茶などに。脂の多いハンバーガーやフライドチキン、加工肉のハムやソーセージなどは控える。卵の摂取とコレステロールの関連はすでにいわれなくなったが、1日1個程度が推奨摂取量。

食事はゆっくりよくかんで食べる。夜の間食はしない。

食べすぎを予防するには、買い物は満腹時にする、食べ物は見えないところにおく、大皿ではなく1人分ずつ盛り付けるといった工夫を。

酒とLDLコレステロール値はあまり関係しないが、結果的につまみで塩分や脂質を多く摂りやすいため、要注意。

★LDLコレステロール値は運動では下がらない

残念ながら、LDLコレステロール値は運動しても下がらない。ただし、運動は中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やすことが認められているので、動脈硬化予防の観点からも運動は推奨される。

★HDLコレステロールを増やすのは運動

動脈硬化予防につながるため、HDLコレステロール値は上げたほうがいい。値を上げるのは禁煙、運動、ダイエット。運動はアスリートのような激しい運動は逆効果で、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が効果的。ウォーキングは1日4000〜7500歩が推奨されている。

HDLコレステロールを増やす食品はなく、薬でも増やすことはできない。

★HDLコレステロールとLDLコレステロールの対策は別々に考えるべき

HDLコレステロール値が上がってもLDLコレステロール値が連動して下がることはないため。別々にとらえたほうがいい。

「これだけやればOK」という対策はない

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近年、これだけやればオールマイティと喧伝する健康法が跋扈している。しかし、「AによくてもB、Cに効果的とは限らない」と寺本さんは重ねて強調する。

「その最たるものが『糖質ダイエット』です。糖質オフに努め、肉でタンパク質を摂るべきだといいます。ただ、この方法は肥満や高血糖の人には効果的ですが、コレステロール値が高い人には意味がありません」

病気によって守るべきこと、実践すべきことは異なる。これをよく認識し、自分の病気や症状にあった対策を、医師とよく相談したうえで行うことが大切だ。健康を維持していくためには、誤った情報を見抜き、正しい情報を選び取る“患者力”を身につけたい。

(取材・文/伊波達也)

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寺本内科・歯科クリニック院長
寺本民生医師

1973年、東京大学医学部卒業。茨城県日立市日立総合病院、小平記念東京日立病院内科を経て、1976年、東京大学医学部附属病院第一内科医員。1980年、アメリカシカゴ大学留学。1990年、同医局長。1991年、帝京大学第一内科助教授。1997年、帝京大学内科教授。2001年、同主任教授。2010年、同医学部長。2013年、同臨床研究センター長。2013年より現職。日本医学会副会長、日本動脈硬化学会名誉会員、その他数々の学会の評議員、理事を歴任。『コレステロール値が高いと言われたら読む本(早わかり健康ガイド)』他、著書多数。

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提供元:コレステロール値「高めを放置」する人の怖い真実|東洋経済オンライン

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