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2023.10.31

「覚醒と睡眠のリズム」を整える!8つのポイント|食事など、毎日の生活にも取り入れたい方法


昔は現代ほど不眠症が問題になってはいなかったようです(写真:EKAKI/PIXTA)

昔は現代ほど不眠症が問題になってはいなかったようです(写真:EKAKI/PIXTA)

スマホ依存で、多くの人の脳が疲れている中、改めて睡眠の大切さが注目されています。どうすれば睡眠と覚醒のリズムをコントロールし、適切な睡眠がとれるようになるのでしょうか。日本認知症学会専門医・指導医 おくむらメモリークリニック理事長の、奥村歩氏の新著『スマホ脳・脳過労からあなたを救う 脳のゴミを洗い流す「熟睡習慣」』を一部抜粋・再構成し、お届けします。

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不眠克服には神経伝達物質「オレキシン」がカギ!

私たちの祖先の時代は、現代ほど不眠症が問題にはなっていませんでした。太陽の動きとともに畑を耕し、漁に出て、夜は食事したりお酒を飲んだりして休息する、という生活では不眠症は起きなかったのです。

ところが、現代文明で電気が発明され、一日の過ごし方は劇的に便利になり、変貌しました。夜でも仕事をしたり娯楽を楽しんだりすることが可能になったのです。生活のサイクルは多様化しました。その多様化は、デジタル化時代を迎えてさらに加速しています。

でも、その多様性に、私たちの身体が対応できるわけではありません。そこにはひずみが生じて、不眠、睡眠負債が起きてしまうのです。

そのカギを握るのが、オレキシンを中心とした神経伝達物質です。生体活動に伴い分泌される神経伝達物質により、覚醒すべきか睡眠すべきかが支配されているのです。

熟睡できるためには、祖先の時代の生活リズムが理想的。つまり、昼間身体を動かし、活動力を高め、夜は休息するというモードです。夜ベッドに入って、「さー寝よう!」というだけではだめなのです。といっても、農耕時代の生活に戻れといっているわけではありません。デジタル社会と上手に向き合うちょっとしたコツについて紹介します。

オレキシンは、精神、肉体活動が円滑にいくように指揮をしている脳内物質です。長い時間、眠らないで活動していると効率が悪くなるため、私達の身体の起きている状態と眠っている状態の切り替えを行っているのです。

オレキシンが脳内で活性化している状態では、「覚醒せよ!」という指令が出ます。逆にオレキシンの働きが弱まると、身体を休めるモード、眠る状態へと導かれていきます。ところが、現代人の脳は、「覚醒せよ!」と刺激ばかりするサイクルになってしまい、いつの間にかオレキシン中毒になって睡眠負債を起こしてしまうのです。

オレキシンは1998年に筑波大学の柳沢正史教授と櫻井武教授らがアメリカで発見した神経伝達物質です。これはまさにノーベル賞級の大発見でした。オレキシンは脳の視床下部で働きます。そしてノルアドレナリン、アセチルコリンなどの覚醒系の他の神経伝達物質が、覚醒し続けるようにコントロールする司令塔の役割を担っているのです。

光の刺激が睡眠をコントロールするのはなぜ?

オレキシンと相互に作用する脳内物質の一つがメラトニンです。脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計(概日リズム。1日24時間周期のリズムに関わる生物時計)に働きかけて、覚醒と睡眠を切り替えて自然な眠りを誘う作用があります。

メラトニンが弱まると昼間オレキシンの分泌が増え、活動的になり、逆に夜にメラトニンが分泌されるようになるとオレキシンの働きは弱まり、睡眠モードになります。このことからメラトニンは「体内時計ホルモン」と呼ばれます。

メラトニンの分泌は主に光によって調節されています。光を浴びることで弱まり、目覚めてから14〜16時間後に体内時計からの指令が出てふたたび分泌されます。一日の活動では、朝起きて太陽の光を浴びると、メラトニンの分泌はしばらくの間弱まりますが、夜、暗くなってメラトニンの分泌が増えるにしたがって、眠たくなるのです。

ところが、夜間にスマホの光やコンビニの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が再び弱まってしまい、オレキシン優位のまま夜を迎えることになると眠れなくなってしまいます。

加齢に伴い、メラトニンの分泌は減るので、年をとると夜間に目が何度も覚めたり、朝早く目が覚めるようになるわけです。

メラトニンのほかに睡眠を導く神経伝達物質がGABAです。

GABAは正式名をγ‒アミノ酪酸と言い、神経の興奮を抑えて心身をリラックスさせる脳の神経伝達物質です。不安やイライラを取り除いて、副交感神経型が高まり、睡眠へと導く作用があります。

また眠りにつくときには、深部体温を下げることで脳と身体をしっかりと休息させる仕組みがあります。ぐっすり寝のためにも、身体の深部体温の低下がスムーズに行われることが大切です。

オレキシンが活性化される状況とは?

オレキシンは以下のような状況でも活性化されます(4ページの「オレキシンの多面的作用」の図と併せて読み進めてください)。(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

(1)感情が昂ぶるとき

感情が昂ぶるとオレキシンの分泌が増え、注意力も高まり、「覚醒せよ!」というモードになります。

これは人類の歴史でも、生命を護る機能です。目の前で蛇やライオンに遭遇した際、「恐ろしい!」と不安を感じることでオレキシンが活性化し、覚醒モードが高まります。そのため、「逃げるべきか? 戦うべきか!」の判断が瞬時になされ、機敏な行動がとれるのです。

(2)血糖値が低いとき

オレキシンは、代謝に関わるグルコース(ブドウ糖)やレプチン、グレリンといったホルモンによっても制御されています。高血糖ではオレキシンは抑制されます。食後に眠くなるのはこのせいです。

逆に血糖値が低いときは、オレキシンは活性化されます。人類の歴史で最も怖いのは飢餓でした。お腹がすいているのに、「寝ている場合じゃないだろ! 早く獲物を探せ!」というオレキシンの指令が脳を覚醒させるのです。

(3)活動的に過ごすとき

オレキシンはアセチルコリンやドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった覚醒系の神経伝達物質を活性化させる働きがあります。

昼間に活動することは、ノルアドレナリンやセロトニン、ドーパミンの分泌を増やす生活をすることになります。そのため、規則正しく過ごして、生活リズムを保ち、身体や脳に刺激を与えて、日中の覚醒を維持することが大切です。

アセチルコリンは認知機能に関係する神経伝達物質。ドーパミンは報酬、意欲、好奇心、やる気、元気に関する神経伝達物質。ノルアドレナリンは、交感神経の花形で、自律神経に働きかけて、血圧や脈拍を上げて血流量を増やしたり、活動しやすい状態を作ります。

セロトニンは、ノルアドレナリンとドーパミンをコントロールして、気持ちを落ち着かせます。抗うつ作用もあります。また、朝のすっきりとした目覚めを促して、自律神経を整えています。ノルアドレナリンが戦闘モードを高め、セロトニンは不安もなく安らかに活動性を高めるイメージです。

昼の活動が夜の睡眠を導く

注目すべきは、アセチルコリン以外のドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンは、オレキシンに対して「負のフィードバック」が働くということです。

どういうことかと言うと、オレキシンから「覚醒せよ!」という指令がたくさん出過ぎると、逆にもう十分だからとオレキシンを抑制するように働くのです。

そのためには、昼間を活動的に過ごして、これら覚醒系の神経伝達物質を増やしておかなくてはなりません。昼間をただぼーっと過ごしているだけでは、負のフィードバックは働かないので、夜もオレキシンが活性化したままで眠れないのです。

高齢者の方が昼夜逆転して眠れないのは、負のフィードバックが行われないため、夜もオレキシンが活性化しているためと考えられます。

コロナ禍で不眠の方が増えたのは、活動を制限されたのですから、当たり前のことなのです。

本書より引用

本書より引用

オレキシンとそれをとりまく神経伝達物質が、私たちの覚醒と睡眠をコントロールしていることがわかったところで、では実際に何をすればいいかを解説します。

以下の方法は、覚醒と睡眠のリズムを整えるのにどれも欠かせない習慣です。

毎日の生活にぜひ取り入れてください。

(1)昼間の活動量を増やす
(2)朝の太陽を浴びてメラトニン分泌を高める
(3)規則正しい食習慣でオレキシンをコントロールしてレプチンを増やす
(4)就寝時に空腹のまま寝ない。血糖値を上げ過ぎないものを少し食べる
(5)腸活で自律神経をととのえる
(6)深部体温を下げる食べ物を摂る  
(7)GABAで睡眠の質を高める
(8)地中海式ダイエットを取り入れる 

栄養バランスがいい地中海式ダイエット

(8)の地中海式ダイエットは、アルツハイマー病のリスクを軽減させる食事法として有力です。地中海式ダイエットとは、私たちが日常会話で使っているやせることを目的としたダイエットではなく、「伝統的な規定のある食生活」を指しています。

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ギリシャのクレタ島の伝統的な食事法で、伝統的な和食のメニューにもとても似ています。

摂取総カロリーや摂取動物性脂肪は控えめで、穀物や豆類、野菜や魚を多く摂ります。そのため、栄養バランスがよく、多種のビタミン類を効率よく摂取できる健康食と言えるでしょう。

私たち日本人は、和食を中心にオリーブ油と乳製品をプラスして摂ることを心がけてください。

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提供元:「覚醒と睡眠のリズム」を整える!8つのポイント|東洋経済オンライン

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