2023.10.23
糖尿病性ケトアシドーシスとは〜症状・原因・治療をわかりやすく解説〜
糖尿病性ケトアシドーシスをかんたんに説明しますと、糖尿病の方がインスリン(※)不足によって高血糖となるために引き起こされる急性合併症です。
(※)血糖値を調整するホルモン
命にかかわる状態なので正しく理解し、適切な対処や予防が大切です。
糖尿病性ケトアシドーシスは少し難しく聞こえる病名ですが、当記事ではわかりやすく解説いたします。ぜひ最後までお付き合いください。
編集&執筆者情報:こちらをご覧ください ※外部サイトに遷移します
糖尿病性ケトアシドーシスについて
糖尿病性ケトアシドーシスは、血糖値を下げるインスリン不足が原因で血糖値が非常に高くなることによって引き起こされる急性合併症です。
私たちの体はインスリンがないと、糖質をエネルギーとして利用できません。そのため、体内の脂肪を分解してエネルギーに変える必要があります。
脂肪を分解すると、ケトン体という酸性の物質が発生します。そして、ケトン体が増えるにつれ体内は強く酸性に傾き、アシドーシスと呼ばれる危険な状態になるのです。
さらに血糖値が高い状態では、体の細胞内の水分は血液中に移動していきます。血液中に移動した水分は尿として排出されてしまうため、水分不足から脱水状態になっていきます。
アシドーシスと脱水症状で、体は大変危険な状態に陥るのです。
飢餓性ケトアシドーシスとは
飢餓性ケトアシドーシスも体が酸性に傾いた状態をいいます。
ただし原因は、拒食症など食事から摂取するエネルギー不足です。文字通り飢餓状態に陥ると、私たちの体は脂肪を分解してエネルギーを得ようとします。そこで、脂肪の分解によって作られたケトン体で、体内が酸性に傾いてしまうのです。
糖尿病性ケトアシドーシスの症状
糖尿病性ケトアシドーシスの主な症状は
などです。
症状が進むと、意識が朦朧(もうろう)とすることもあります。
死亡することもあるのか
糖尿病性ケトアシドーシスは、治療が遅れると意識が朦朧としやがて死に至ることも。
ほかに病気を抱えている人や高齢の方では、より死亡率も高まるといわれており、早期発見・治療が重要な病気です。
糖尿病性ケトアシドーシスの原因
糖尿病性ケトアシドーシスは
などが引き金となり、血糖値が大幅に乱れることで発症します。
参考記事:糖尿病とストレスの関係~適度にリラックスして生活しよう~ ※外部サイトに遷移します
1型糖尿病の場合
1型糖尿病はインスリンが作られる膵臓の細胞が破壊されているため、インスリンが絶対的に不足している状態です。そのため、1型糖尿病の方は糖尿病性ケトアシドーシスを発症しやすいといわれています。
また、糖尿病性ケトアシドーシスの発症をきっかけに、1型糖尿病が発見されることもあります。
参考記事:1型糖尿病とは〜原因・症状・治療を分かりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
2型糖尿病はどうか
2型糖尿病の方でも、ケトアシドーシスになることがあります。たとえば、夏場に甘いジュースやスポーツドリンクのような糖分の多い飲料を飲みすぎた際に、発症することが多いです。
この症状は、ソフトドリンクケトーシス(ペットボトル症候群)と呼ばれ、2型糖尿病の方でも注意が必要です。
なお、一般的に糖尿病性ケトアシドーシスは、太り気味かつ糖尿病と診断を受けていない方がなりやすい、といわれています。ただし、痩せていて糖尿病の治療中であっても、風邪を引いたり大けがで血糖値のバランスが崩れて発症することもあるので、一概にはいえません。
参考記事:2型糖尿病とは〜原因・予防・治療のポイントを初心者向けに解説〜 ※外部サイトに遷移します
参考記事:糖尿病に効果のある飲み物は?水から身近なジュースまでわかりやすく解説 ※外部サイトに遷移します
参考記事:炭酸飲料と糖質~「糖質ゼロ」の「カロリーゼロ」の違いも詳しく解説~ ※外部サイトに遷移します
対処方法と治療法を紹介
まず、かかりつけの内科がある場合は、すぐに受診や電話相談をしてください。
難しい場合は、救急外来の受診が必要となります。すでに意識が朦朧としているようなときは、救急車を要請したほうがよいでしょう。
なお治療は、点滴が基本です。点滴して脱水状態を治しながら、インスリンを補っていきます。治療に伴って合併症も起こしやすいため、入院して全身状態を診てもらう必要があります。
併せて医師や看護師と、再発予防のための生活習慣の改善について振り返りをすることがとても重要です。
参考記事:【医師監修】糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介 ※外部サイトに遷移します
【番外編】ケトアシドーシスとケトーシスの違い
ケトーシスとは、体内のケトン体が何らかの原因で増加している状態です。激しい運動や糖質制限でもケトーシスになることはあります。
ケトアシドーシスとは、ケトーシスがかなり進んだ状態になり、体内が酸性になった重症の状態をいいます。似た言葉ですが、重症度は天と地ほどの差があるのでご注意ください。
まとめ
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン不足が原因で引き起こされる糖尿病の急性合併症とわかりました。
糖尿病性ケトアシドーシスは糖尿病のさまざまな合併症の中でも特に危険度が高いものですが、予防もできる病気です。
糖尿病治療は毎日の飲み薬や注射、生活習慣の改善が必要で、とても億劫なものですよね。しかし恐ろしい合併症を予防するためにも、治療や生活習慣を見直していきましょう。
参考文献
・糖尿病療養指導ガイドブック2018 糖尿病療養指導士の学習目標と課題 日本糖尿病療養指導士認定機構編・著 メディカルレビュー社 2018年発行
・慢性期看護論第2版編集 鈴木志津枝 藤田佐和 ヌーヴェルヒロカワ 2013年発行
・見てできる臨床ケア図鑑 糖尿病看護ビジュアルナーシング監修 平野勉編集 柏崎純子 学研メディカル秀潤社 2015
・国立国際医療研究センター糖尿病情報センター 糖尿病の急性合併症のはなし ※外部サイトに遷移します
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、シンクヘルス株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:シンクヘルス株式会社
【合わせて読みたい】
糖尿病の自己管理を楽にするセルフモニタリング~ストレスを観察しよう~
【医師監修】隠れ糖尿病ってなに?~診断基準や気になる症状についても解説~
糖尿病の合併症についてまとめました 〜神経障害・網膜や腎臓へのリスクを解説〜
提供元:糖尿病性ケトアシドーシスとは〜症状・原因・治療をわかりやすく解説〜|【シンクヘルスブログ|シンクヘルス株式会社】