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2023.08.08

AIに仕事を奪われないために有効な「脳の鍛え方」|62歳で「海馬の細胞」が増えたタクシー運転手


脳の神経細胞は、50歳を過ぎたあたりから急速に減少するといいます(写真:Mills/PIXTA)

脳の神経細胞は、50歳を過ぎたあたりから急速に減少するといいます(写真:Mills/PIXTA)

ChatGPTの登場で、AIの普及が急速に広まっています。元オックスフォード大学シニア研究員の下村健寿氏の最新刊『頭のいい人が問題解決をする前に考えていること』より、AIに仕事を奪われないためのスキルの伸ばし方を一部引用・再編集してお伝えします。

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脳の神経細胞は50歳から極端に減る

この記事を読んでくださっているあなたに、私から質問があります。

この記事を読んでいる時点で、あなたは何歳でしょうか?

仮に40歳から50歳前後としましょう。日本人の平均寿命は、医学が発展した現代では80歳前後になります。

だとすれば、あなたに残された時間は、あと30年から40年ということになります。

人生の残された時間は、30年から40年と限られている。だから、残りの時間を無駄なく使って充実した人生を送ろう、と感じたかもしれません。

しかし、それは大きな間違いです。

米国マサチューセッツ州の町、フラミンガム在住の5000人以上の住民を対象とした医学疫学調査に、「フラミンガム研究」があります。1948年から始まって、調査は現在も継続中です。

じつに70年以上にわたって、多くの一般市民の健康状態を追跡調査している画期的な研究です。おもに心血管疾患について調査している研究ですが、そのなかで2000人近くの住民に対しては、脳のMRI検査も行われています。

この脳のMRIの検査結果を分析したところ、衝撃の事実が明らかになりました。

なんと、50歳前後を境に、男女ともに脳の容量が、放物線を描くようにどんどん低下していることが明らかとなったのです。

(画像:『頭のいい人が問題解決をする前に考えていること』より)

(画像:『頭のいい人が問題解決をする前に考えていること』より)

脳の神経細胞の数は生まれたときがもっとも多く、年をとるとどんどん減っていきます。その速度はすさまじく、1日に数万個の神経細胞が失われていくとすら言われています。

フラミンガム研究の結果は、ただでさえどんどん失われていく神経細胞が、50歳を過ぎるとまるで歯止めが効かなくなったように、急激に失われていくことを示しています。

50歳を過ぎたあたりから、急に疲れやすくなったり、人の名前がとっさに出て来なくなったり、考えが上手くまとまらなくなった経験はありませんか。

それは50代になって、脳の神経細胞が急速に失われ始めたからです。

あなたがさまざまな時間術や速読法に挑戦していながらも、思ったような成果が得られないのは、まさにこのためです。

これまでのやり方では、これからは通じない

人間の脳と年齢の関係性が徐々に明らかになってきましたが、それに追い打ちをかけるかのように、AIの存在感が私たちの実感するレベルで急速に増しています。

これまでは度々将棋やチェスの世界において、ヒトとAIとの対決などが話題に上がるくらいのどこか遠い存在でしたが、ChatGPTの登場以降はその様相も一変し、私たちのより身近にAIの存在を感じるようになりました。

私はオックスフォード大学で研究者として働いた後、現在は日本に帰国し、日本の大学で研究者を続けていますが、医師でもあります。いま私が勤める病院でも、AI技術が急速に普及してきています。

画像認識も得意なAIは、CTやレントゲンなどの画像診断から、胃カメラや大腸カメラによる胃粘膜、大腸粘膜の異常検出において、すでに熟練の医師に負けない鑑別能力を発揮しています。

私は医師になりたてのとき、レントゲン写真の読影が苦手で、熟練の先生に教えを乞いたことがあります。

そのときの先生からは「正常なレントゲン写真を何千枚も見ること。そうすれば、ちょっとでも異常があれば気づくようになる」と教えてもらいました。

当時は一生懸命、何日も何日もレントゲン写真を見て修行したものです。
でもAIは、この何千枚というレントゲン写真を一瞬で読み込んで、学習してしまいます。

今この瞬間も新たな情報を学び成長をし続けるAIに、年齢とともに脳の神経細胞が減っていく人間がまともに戦って敵うはずはありません。

人だからこそできる解決策を見出せるか

いま、私たちが迎えているAIの普及による情報社会の発展は、「第四次産業革命」と呼ばれています。

産業革命という大きな時代の「うねり」においては、いち早く動き出した者はその時代の中で生き残り、そうでない者は時代に取り残されてしまいます。

私たちはいま、生き残りをかけた、まさに正念場に立たされているのです。

では、どのようなスキルを持った人が、生き残っていけるのでしょうか?

それは、人だからこそできる方法を知り、AIにはまだできない価値を提供できる人が生き残っていけるのではないか、と私は思っています。

AIのベースになっているのは、ベイズ理論という考え方を応用した統計学です。

ある問題に対して、予測される事態が発生する確率を設定し、情報が追加されるたびに変化していく確率を更新し、予測の精度を上げていくモデルです。

つまり統計学的手法に支えられています。

人間の脳もまた、確率・統計的に予測を行っています。いままでの経験に基づいて次の行動を考えるということは、私たちも日常的に行っていることです。

しかし、人間の脳には、確率や統計だけでは捉えられない、私のような研究職にとっては馴染み深い「ひらめき」を筆頭に、偶発的に飛躍的な発展をし、目の前に立ちふさがっていた問題を解決する能力が備わっています。

このヒトならではの能力を引き出すためには、脳にどのように働いてもらうかが、とても大切になってきます。

では、ヒトならではの力を発揮できる脳を手に入れるためには、どうすればいいのでしょうか。

まずやるべきことは“脳の「やる気」を引き出す方法を知る”ことに他なりません。

なかでもBDNFと呼ばれる、脳のパフォーマンスを上げる物質を増やすことが大切です。

脳のパフォーマンス向上は、インプットした情報を活用することによって行われています。

したがって、情報をきちんと「長期記憶」として、脳に刻み込むことが大事です。

つまり、土台となる長期記憶を最適な状態にチューンアップできれば、脳のパフォーマンスを向上させることにつながります。

長期記憶は、神経細胞とシナプスでできています。ですから、神経細胞とシナプスを最高の状態に保てれば、神経回路の形成と維持、そして活性化が起きます。

この神経細胞とシナプスの状態を最適化して、脳のパフォーマンス向上を促すもっとも効果的な方法が、運動です。

レジスタンス運動でBDNFを増やす

運動は、脳のパフォーマンスを上げるカギとなるBDNFをもっとも効果的に増やしてくれます。

BDNFは、記憶を司る海馬において、神経細胞の新生を促していると考えられています。

また、神経細胞そのものだけでなく、シナプスを新たに作ったり、その信号伝達の効率を上げたりする作用がある物質です。

運動の内容は、軽く息が切れる程度の速足のウォーキング、またはジョギングがよいとされています。

しかし、近年の研究から、短時間のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動)、つまり筋トレなどでもBDNFの発現が高まると考えられています。

ですので、時間に余裕のある方は、ジョギングなどの運動を時間をかけて行い、忙しくてなかなか時間がとれない人は、短時間でもいいので軽い腹筋運動やスクワットなどのレジスタンス運動を行うのがよいでしょう。

習慣的に行うことによって、脳内のBDNFが増え、脳のやる気を引き出し、ハイパフォーマンスにつなげていくことができるはずです。

オックスフォード大学で研究者をしていたころ、ロンドンに出かける際に頼りにしていたのがタクシーです。なぜなら、ロンドンの道は裏道まで入れると、極めて入り組んでいて複雑です。

62歳で海馬の細胞が増えたタクシー運転手

このロンドンのタクシーを操る運転手の海馬が、一般の人と比べて大きくなっていることが『米国科学アカデミー紀要』に発表された研究で明らかになりました。

しかも、この海馬領域の増大は、運転手の年齢には関係なく、勤務経験の長さに相関する形で認められました。

つまり、タクシー運転手としての経歴が長ければ長いほど、海馬が発達していたことになります。

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「脳の神経細胞は年齢とともに減っていく一方だ」と前述しましたが、ひとつだけ例外があります。記憶の一時保管場所である海馬に存在する特定の細胞にだけは、増殖する能力があるのです。

ロンドンのタクシー運転手は、複雑なロンドンの道を何度も運転することで道路網を記憶し、その結果として海馬が鍛えられ、記憶力が高まったことを示唆していると考えられます。

研究に参加した運転手の年齢は、もっとも若い人で32歳、最年長は62歳でした。

つまり、脳の容量が急激に減少に転ずる年齢である50歳を超えた運転手でも、海馬の増大は確認されているということです。

脳の力を最大限に引き出すためには、年齢に関係なく、脳を鍛えればいいことになります。

もうそう遠くない、AIとの共存が本格的に始まる未来において、自分の仕事や居場所がなくならないためにも、いまから準備を始めてもらえたらと思っています。

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提供元:AIに仕事を奪われないために有効な「脳の鍛え方」|東洋経済オンライン

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