2023.08.04
「クーラー効きすぎて寒い」は寿命が縮むNG環境|危険な冷え…夏こそ「血流」を重視すべきワケ
夏におすすめの血流改善法とは(写真:Ushico/PIXTA)
猛烈な暑さが続く日々。夏バテなのか、体がだるい、眠れない、足腰が痛い……そんな悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。麻酔科医として2万人以上の全身の循環をコントロールしてきた富永喜代医師の最新刊『血流がすべて』から、夏におすすめの血流改善法を一部引用・再編集してご紹介します。
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みなさんは、暑さ対策、どうされていますか?
帽子をかぶる、水分をとる、などあるかと思いますが、暑すぎて「なるべく屋内にいる」という方も多いのではないでしょうか。
そんなとき心配なのが、血流の悪化。
暑い外からキンキンに冷えた室内に入ると、すっと汗がひいて気持ちがいいですよね。
ですが、そのまま冷房を弱めずにその部屋にとどまっていると、だんだんと手足が冷たくなって、頭がぼーっとしたり、だるくなったりしませんか? いっそ屋外に戻りたいと思ってしまうことも……。
実はこれ、血流が悪くなっている証拠です。
ほうっておくと、指先や足先の毛細血管の血液が入れ替わらなくなり、実質、「死んだ血管」になってしまうおそれが。
そして、一度死んだ血管は元には戻りません。
こうした問題をそのままにしておくと、血液が行き届かない細胞に毒がたまり、あるとき一気に怖い病気が押し寄せてくるおそれがあります。
手足の冷えは体からの深刻なSOS
たったそれだけのことで病気になるなんて、大げさだな、と思われたでしょうか。
ではそもそも、血流とは何なのでしょう。
日本人の五大死因は、「がん、心臓病、老衰、脳卒中、肺炎」(厚生労働省/令和3年人口動態統計月報年計より)。これを見ると、病気を予防したり、特定の臓器だけをケアしておけばいいと思われるかもしれません。
でも、そうではないんです。
麻酔科医として2万人以上の全身の循環をコントロールしてきた私ですが、「健康の源は血流である」と断言できます。
なぜなら、血流こそが全身37兆個の細胞一つひとつに栄養と酸素を送り届け、老廃物を洗い流す役割を担っているからです。
私たち麻酔科医の頭には、つねに「1分間」という数字があります。
これは、心臓から動脈に送り出された血液が、全身をめぐって再び心臓に戻ってくるまでの循環時間。手術で体のどこが傷つけられたとしても、この1分間のめぐりを止めない、ということを意識して患者さんの体を守っています。
この1分のめぐりがスムーズにいってこそ、血液が「栄養と酸素を届ける」「老廃物を回収する」という役割を全うできるようになります。それだけ、毎分、新鮮な血液がめぐるということは全身にとって欠かせないことなのです。
生きていくために重要な臓器、たとえば心臓や、肺、腎臓なども、元をたどればひとつの細胞からできています。そして、それらの細胞に栄養を送ることができるのは、血流だけなんです。
病気とまでいかなくとも、冷えやしびれ、むくみや痛みに悩まされる人が増えるのも、すべて血流が理由です。手足の冷えやしびれは、毛細血管の先の先まで十分な血液が届いていないことを示す症状。かんたんに言えば、細胞に本来必要な酸素と栄養が足りないことへのSOSです。
こうした症状を緩和するには、血流を改善し、1分間で体内をめぐる血液を体のすみずみまで届けきること。そうすれば、細胞が求めている酸素と栄養を絶え間なく運び、老廃物をためずに運び出すことができます。
人間が長生きする、若返る、元気でいることの基礎は、「細胞」にあります。体にある37兆個の細胞一つひとつが元気なら、あなたも元気。
血流がよくなれば、細胞が元気になり、私たちは健康に長生きできます。
「熱めのお湯に肩まで」が心臓に負担をかける
ではいよいよ、おすすめの血流改善法をご紹介していきます。
まずピックアップしたいのが、入浴。
睡眠の質を高めるため夏でも湯船につかるのがおすすめですが、必ず気をつけてほしいのが、お湯の量と温度です。
クーラーの効いた部屋から浴室に入り、ヨシっと気合いを入れて熱々のお湯に肩までつかっているという方は、今すぐやめてください。
なぜなら、心臓よりも高い位置まで湯につかってしまうと、血管が水圧によってギューッと押さえつけられてしまうからです。
水圧がかかることで、手足や内臓の静脈が圧迫され、血液が心臓に向かって一気に移動します(この状態を、医学的には「心臓への静脈還流が増える」と言います)。すると、心臓が血液を送り出すのに無理をしなければならなくなります。
だから、肩までつかって「いい湯だな」と思っていても、体内では、心臓に負担がかかるという「緊急事態」への対応に大わらわとなっているわけです。
ぬるめのお湯で半身浴がおすすめ
おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも「湯量は腰まで」をルールにしましょう。
さらに気をつけたいのが、お湯の温度です。
高齢者になればなるほど熱いお風呂を好む傾向がありますが、これは皮膚の「温熱感受性」の劣化によるもの。
皮膚の表面には、温点・冷点と呼ばれる温度を感じとるセンサーがあり、この数は年齢を重ねるごとに減っていきます。なかでも、湯船に入るとき、最初にお湯に触れる足先の温点・冷点は、20代に比べ、70代では3分の1ほどに。
その結果、熱い、冷たい、の識別が鈍くなり、子どもなら「絶対ムリ!」と飛び出すような湯温でも、おじいちゃんおばあちゃんは「ほぉう」と吐息をもらしながら肩までつかることができるわけです。
夏場、ちょうどこの時期、本人には「暑い」という自覚がさほどないのに、熱中症で倒れる高齢者が多いのもこのためです。
しかも、長時間クーラーにあたって手先、足先が冷えている状態から長風呂することは、疲労、脱水、血管虚脱(血管がひろがりすぎて、血流が落ち、脳へ必要な酸素や栄養素が届かなくなる)といった症状を引き起こす可能性があり、かなり危険な状態。
湯温は自分の肌感覚だけではなく、「数値」で見て把握しておくべきです。
温度は、ぬるめのほうがリラックス効果が高まるということがわかっていますので、ぬるめがおすすめです。
ぬるめの湯温とは、夏なら38℃、冬なら40℃。一方、41℃以上が熱めになります。
ぜひ、夏バテで体が疲れたときは、ぬるめのお湯につかりましょう。お湯の量は、先ほどお伝えしたように、みぞおちまで、です。
これで副交感神経が働き、末梢血管が拡張。5分の入浴で、白血球、リンパ球、がんを倒すNK細胞などの免疫細胞が増えることがわかっています。
ゆるいけど効果絶大「1分間血流アップ体操」
日中、クーラーが効きすぎて寒いな、と思っても、すぐには温度を変えられないこともありますよね。
そんなときおすすめなのが、すぐできる「1分間血流アップ体操」や、手先や足先を動かすだけでいい「血流アップワザ」。
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血流をよくすること“だけ”を考えて私が開発したこれらの体操のうち、ここではひとつだけご紹介します。
その名も、「指先ピーン体操」。
やり方は簡単で、まず、両腕を肩の高さに上げて、ひじをグッと後方に引きます。つぎに勢いよく前へ、肩甲骨から肩全体をつかって、肩、ひじ、手首、指先まで伸ばすように、グ──ッと突き出していきましょう。
「ハンドパワー!」という具合に、手のひらをパーに開き、そのまま指先をピ──ンッと伸ばします。ピーンと伸ばした状態のまま、10秒キープ。このとき、ゆっくりと息を吐きます。フ───ッ!
吐ききったなーと思ったら、伸ばしていた指先も、腕もダラーンと下げちゃいましょう。力を入れていた手先を、一気に脱力するわけです。この動きで、トータル1分。
はい。これでおしまい。
え、こんな簡単でいいの? と思われるかもしれませんが、侮るなかれ。
私が開発した体操はすべて、「血流スピードが1.5倍にアップし、血流量も増える」という効果が、エコーによる測定データで裏付けられています。こんな簡単なのに、毎分、体の「毒」をリセットしてあらゆる病気を遠ざけることができるんです。
さらに、ジムなどで一生懸命に運動するよりも、ゆるい運動のほうが、気分がよくなりポジティブな感情がわきやすいというデータも。
こんなちょっとの工夫が、あなたから恐ろしい病気を遠ざけてくれます。
暑い夏こそ、血流改善を! ぜひ、お試しください。
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提供元:「クーラー効きすぎて寒い」は寿命が縮むNG環境|東洋経済オンライン