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2023.07.12

結局、「サウナ浴=睡眠の質が向上」は本当なのか|「"寝る何時間前"がベスト?」驚きの結論は?


サウナと睡眠の間には、何か関係はあるのでしょうか?(写真:sasaki106/PIXTA)

サウナと睡眠の間には、何か関係はあるのでしょうか?(写真:sasaki106/PIXTA)

「サウナに入った後は深く眠れる気がする」「サウナのおかげで睡眠不足が解消した」など、サウナと睡眠の質との、良好な関係を主張する愛好家は多い。

その一方で、「サウナのあとは寝付きが悪い」と訴える人もいる。

それはつまり、サウナと睡眠の間には本来なんの因果関係もないということなのだろうか……?

話題の新刊『「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の日本語オリジナル版翻訳を手がけた、フィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやし あやな氏が「サウナと睡眠」の関係について解説する。

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「サウナ浴後に眠気が訪れる」メカニズムは?

サウナと睡眠の関係の科学的な解明は、まだ「発展途上」ではあるが、現時点で睡眠不足に悩んでいる人には、サウナ浴が「改善の糸口」となるかもしれない根拠はいくつもある。

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また、少なくとも「寝付きやすさ」に関しては、入浴から入眠までの時間をコントロールすることで改善できる可能性が指摘されている。

それでは、具体的にどのような点を心がければ、日々のサウナ浴を「睡眠の質の向上」へと結びつけることができるのだろうか。

じつは、サウナ本場の国であり、「世界幸福度ランキング」では6年連続首位をキープしつづけるフィンランドでも、不眠症や睡眠障害は「国民病」として問題視されている。

国民の約4割が、月に数回以上の寝付きの悪さを訴えているのだ。

一方で、本来私たちの脳が「疲労回復」に必要とする睡眠時間は、むしろ過去より増えていることを自覚しなければならない。多忙かつインターネット漬けである現代の生活スタイルは、言うまでもなく脳へ「大きな負担」をかけつづけているからだ。

こうした状況を背景に、今も昔もフィンランド人の間で語られる「サウナが睡眠の質を上げるかもしれない」という経験ベースの仮定に裏付けを与えるための科学的研究は、1970年代から続けられてきた。

新刊『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』で紹介される過去の実証研究事例によると、サウナ後の睡眠においては最初の2時間で70%強、6時間で45%も、統計的に「ノンレム睡眠」の量が増加するそうだ。

新刊『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』で紹介される過去の実証研究事例によると、サウナ後の睡眠においては最初の2時間で70%強、6時間で45%も、統計的に「ノンレム睡眠」の量が増加するという(写真提供:こばやし あやなさん)

新刊『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』で紹介される過去の実証研究事例によると、サウナ後の睡眠においては最初の2時間で70%強、6時間で45%も、統計的に「ノンレム睡眠」の量が増加するという(写真提供:こばやし あやなさん)

そしてその要因として考えられるのは、ほかの温熱療法と同様、サウナ浴における身体の温度調節メカニズムの過程で起こる「セロトニン分泌の活発化」だと言う。

セロトニンは「幸福ホルモン」としても知られる、良質な睡眠のために重要な神経伝達物質だ。

サウナ浴では、体温が急上昇するのに伴い、まずは覚醒をつかさどる「ノルアドレナリン」が多く放出される。だがそれに連動して、体温調整や興奮抑制のために「セロトニンの分泌」もさかんになる。

そして入浴後は、徐々に体温の低下や脳の冷却が起こるため、脳のノルアドレナリン量もはっきりと低下していく。

この「セロトニンの増加」と「ノルアドレナリンの降下」の両影響で、入浴後は入眠しやすくなり、眠りの深さも増加すると考えられるのだ。

サウナ浴による「セロトニンの増加」と「ノルアドレナリンの降下」の両影響で、入浴後は入眠しやすくなり、眠りの深さも増加すると考えられる(写真提供:こばやし あやなさん)

サウナ浴による「セロトニンの増加」と「ノルアドレナリンの降下」の両影響で、入浴後は入眠しやすくなり、眠りの深さも増加すると考えられる(写真提供:こばやし あやなさん)

サウナ浴は「入眠2時間前まで」に終える

率直に告白すると、かつて就寝前のサウナ浴を日課としていた筆者自身、「みんなが称賛するほど、サウナのあとにうまく寝付けない」という個人的な感覚を持ち続けていた。

確かにサウナ浴は、軽い運動後のような「心地よい疲労感」を与えてくれる。けれど、サウナに入った直後はまだ身体がポカポカしすぎて、脳も覚醒状態にあり、どうも入眠モードとはかけ離れている気がしていたのだ。

この個人的な感覚も、先に述べた「入眠効果のメカニズム」を正しく理解すれば、改善の余地がありそうだと気づいた。

「セロトニンの増加」と「ノルアドレナリンの降下」の影響が最も強く現れるのは、サウナ浴後2〜3時間後だという。

つまり、サウナ浴直後にすぐ布団に入るのではなく、入浴を終えてから2〜3時間後に就寝時間を設定すれば、最も入眠しやすくなるというわけだ。

また一般に「体の深部の温度が十分に下がると、眠りに落ちやすい」と言われる。

このことからも、サウナ浴のあとは、「クールダウン」によって身体を冷やすほうが、安眠を確保できる可能性が高くなるそうだ。

『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏も、同書の中で、冷浴(水風呂など)でサウナ浴を締めくくる入浴法を推奨している。

『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏も、同書の中で、冷浴(水風呂など)でサウナ浴を締めくくる入浴法を推奨している(写真提供:こばやし あやなさん)

『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏も、同書の中で、冷浴(水風呂など)でサウナ浴を締めくくる入浴法を推奨している(写真提供:こばやし あやなさん)

ただ実際のところ、誰もが入浴後まったく同じタイミングで眠気を感じるわけではないし、入眠効果には個々人のサウナ浴への「慣れ」の度合いも大きく関わってくる、と、サウナ医学研究者のヤリ・ラウッカネン教授は忠告する。

つまり、サウナ浴の未経験者や初心者にとっては、入浴体験による「ノルアドレナリン」の分泌量のほうが勝って、睡眠の改善よりむしろ負担になる可能性も否めない、というわけだ。

だからこそ、2〜3時間を目安にしつつも、自分がサウナ後どれくらいで眠気を感じやすいのか、あるいはどの程度でサウナを切り上げるのがいいのか、自身でいろいろ試して見極める必要がある。

「効果の最大化」までには「試行錯誤」も必要

実は筆者の場合は、サウナ浴のタイミングを就寝前から思い切って起床後に切り替え、早起き効果と目覚めの良さのほうを重視することで、巡り巡って夜の寝付きも良くなる……という好循環を手に入れることができた。取り入れ方は、まさに人それぞれなのだ。

サウナ文化研究家で本記事の筆者・こばやし あやなさんは、サウナ浴のタイミングを起床後に切り替え、早起き効果と目覚めの良さを重視することで、巡り巡って夜の寝付きも良くなる……という好循環を手に入れたという。取り入れ方は、まさに人それぞれだ(写真提供:こばやし あやなさん)

サウナ文化研究家で本記事の筆者・こばやし あやなさんは、サウナ浴のタイミングを起床後に切り替え、早起き効果と目覚めの良さを重視することで、巡り巡って夜の寝付きも良くなる……という好循環を手に入れたという。取り入れ方は、まさに人それぞれだ(写真提供:こばやし あやなさん)

ともあれ、たとえはじめてのサウナ浴のあとはうまく寝つけなくても、入浴時間やタイミングのとり方に慣れてきたら、「期待以上の効果」を発揮してくれる可能性は大いにある。

さらに、不眠の原因がストレスや心の不調にもある場合、サウナがもたらすリラックス効果こそが一番の助力者になってくれるかもしれない。

もしあなたが慢性的な不眠に悩んでいるなら、ぜひものは試しに、サウナ浴を取り入れてみてほしい。あるいは、まずは日本人にとってより身近な風呂での温浴でもいいかもしれない。

試行錯誤は必要かもしれないが、シャワーより時間をかけて身体を温める入浴習慣が、害よりも利のほうを多くもたらしてくれる可能性は十分にあるのだから。

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提供元:結局、「サウナ浴=睡眠の質が向上」は本当なのか|東洋経済オンライン

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