2023.05.12
「間食をしない人」は太りやすい"超盲点な真実"|「上手な間食」で健康になり、やせやすくなる
上手な間食をすれば、ダイエットも怖くない(写真:y.uemura/PIXTA)
日々の疲れや身体の不調、どうすれば回復できるのか知りたくても、世の中には情報がありすぎて、何を見たらいいのかわからなくなってしまいます。そこで、疲労についての研究と、都内で疲労と睡眠に特化したクリニックの運営を行う医師の梶本修身氏が、100 冊の健康書のなかから「すごい回復法」を厳選した『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)を上梓。疲労回復や疲れにくい体づくりのメソッドを伝えています。
本稿では、疲労にも不健康にもつながる肥満を解消するための「正しいダイエット」について、同書より一部抜粋、編集のうえお届けします。
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間食が「夕食の食べすぎ」を防ぐ
疲れたときについ手が伸びるのが、おやつ。これまでは、「間食=太るもの、健康を害するもの」が常識でした。だから、間食は我慢すべきと考えられていましたが、この常識が変わりつつあります。
最新の栄養学の知識をもとに、上手な間食のとり方を教えてくれる『太らない間食 最新の栄養学がすすめる「3食+おやつ」習慣』(文響社)の著者で管理栄養士の足立香代子さんは、間食はとったほうが体にいい、と言い切ります。それはなぜなのか。
いちばんの理由として足立香代子さんが挙げるのが、昼食と夕食の間隔が空いてしまうと、夕食前にお腹が空いて夕食を食べすぎてしまうから。
すっかりお腹を空かせて夕食を迎えたら、ついいつも以上に食べすぎてしまった……ということ、誰しも経験があるのではないでしょうか。そのからくりについて足立香代子さんは次のように説明します。
お腹がペコペコになると、次の食事はたくさん食べたくなります。これは単に気分の問題ではなく、脳から、「次の食事はたくさん食べなさい」という信号が出るため、食欲が理性に勝って、夕食を食べすぎやすくなるのです。
『太らない間食 最新の栄養学がすすめる「3食+おやつ」習慣』より
夕食の食べすぎは、肥満の原因になるだけでなく、疲れ、不調、老化の原因にもなります。だから、夕食が遅くなるとき、昼食と夕食の間が空いてしまうときほど、上手に間食をとって夕食前にお腹が空きすぎないようにしたほうがいいそう。
また、間食は「足りない栄養素を補うチャンス」でもある、ともいいます。現代の食生活ではつい炭水化物が増えがちで、また、偏った食事をとっているとビタミンやミネラルが不足することも。
そこで、間食で不足しがちな栄養素を意識的にとれば、1日の栄養バランスがよくなるわけです。「間食で特に摂取したい栄養素」として紹介されているのは次の4つです。
・ビタミンC……フルーツ
・カルシウム……ヨーグルトやチーズなどの乳製品、小魚
・鉄……プルーンやレーズン、鉄分を強化したヨーグルト
・マグネシウム、亜鉛……アーモンドなどのナッツ類
食後高血糖を防ぐ「セカンドミール」効果
医師の鈴木幹啓先生の『医師が教える最強の間食術』(アスコム)も、「『適切な間食をとる』時代が来ている」と、間食の健康効果を紹介する1冊です。
適切な間食で期待できる効果とは何か。鈴木幹啓先生は次の3つを挙げます。
・空腹による食事でのドカ食いを防ぐ
・食後血糖値の急上昇を防ぎ、血糖値が安定する
・空腹によるストレスや集中力の低下が防げる
『医師が教える最強の間食術』より
なかでも2つ目の食後血糖値の急上昇を抑えられることは大きなメリット、と鈴木幹啓先生は強調します。
もちろん、甘いものを大量に食べれば、血糖値は急上昇します。食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)が疲労感や眠気、だるさなどを招きます。ですが、間食の選び方、とり方によっては、むしろ血糖値が安定するのです。
その鍵を握るのが、「セカンドミール効果」です。初めて聞く方も多いかもしれませんね。
セカンドミール効果とは、最初にとる食事(ファーストミール)が次にとる食事(セカンドミール)後の血糖値にも影響をおよぼし、食後の血糖値の上昇をおだやかにする、というもの。
特に、食物繊維を多く含む食品を最初の食事でとると効果的なのです。
このセカンドミール効果については、日本時間栄養学会会長の柴田重信先生が書かれた『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門』(講談社ブルーバックス)にもくわしいです。「罪悪感なし! 攻めの間食」という見出しのもと、次のような実験結果が紹介されています。
おからやイヌリン(水溶性食物繊維の一種)などを含み糖質を抑えて食物繊維が炭水化物の約半分を占めるようにしたクッキー、または普通のクッキーを1週間続けて間食に食べてもらい、その後の夕食の血糖値を比較するという実験を行ったところ、食物繊維の多いクッキーを間食に食べたときのほうが、間食時も夕食時も血糖値が低くなったそうです。
この結果を受けて、食物繊維が豊富な間食は遅い夕食時の血糖値スパイクの抑制になる、と柴田重信先生はアドバイスします。それが、「攻めの間食」なのです。
また、間食をとって少し血糖値を上げること自体、夕食後に高血糖を招きにくくなる、とも柴田重信先生はいいます。
どういうことかというと、昼食から夕食までの時間が長いと、お腹が空いて、夕食前に脂肪の分解がうながされ、遊離脂肪酸というものが血液中に増えます。
遊離脂肪酸は、たくわえられた中性脂肪が分解されて血液中に溶け出したものです。「脂肪が分解されるならいいじゃないか」と思うでしょうか。
ところが、遊離脂肪酸はインスリンの働きを邪魔するのです。そのため、遊離脂肪酸が血中に増えていると、インスリンが効きにくくなって、高血糖になりやすい。その点、うまく間食をとって、ある程度血糖値を上げてあげると、遊離脂肪酸が出ず、インスリンの働きが邪魔されないため、高血糖になりにくいというわけです。
加えて、夕食前にお腹が空きすぎると、夕食時に、つい早食いになりませんか? 早食いをすると、血糖値が急に上がります。私は、早食い防止という意味でも上手な間食は理に適っていると思います。
昔から「ゆっくり、よく噛んで食べなさい」といわれるように、よく噛んで食べることはやっぱり大事なのです。
噛むという動作には、セロトニンの分泌をうながす作用があります。セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれ、自律神経を安定させ、心を落ち着かせる作用のある脳内物質でしたよね。ちなみに、セロトニンを増やす行動の1つとしてリズム運動が効果的ですが、噛むこともリズム運動の一つです。
副交感神経を優位にしてイライラ・疲れを防ぐ
ここまでは、夕食後の高血糖を防ぐという間食のメリットでした。高血糖は確かに避けたいもの。ただ、「低ければいいということではありません」と、『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』 (アチーブメント出版)の著者で、医師の満尾正先生は指摘します。
この本は、アンチエイジング専門クリニックを営む満尾正先生が、食こそが最大のリターンを得る投資である、とビジネスパーソン向けにパフォーマンスを上げる食事法を紹介したもの。
そのなかに次のような一節があります。
血糖値が60㎎/㎗以下になる「低血糖」状態は、パフォーマンスを著しく落とします。集中力や思考力の低下、無気力、イライラ、めまい、冷や汗、手の震えなど、簡単にいうと電池切れの状態となります。
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』より
お腹が空くと、イライラしたりすることは、みなさんも経験上、ご存じだと思います。なぜイライラするのかというと、自律神経のうち交感神経のほうが優位になるから。
お腹が空くのは血糖値が下がってきたサインです。血糖値が下がり、飢餓状態になると、人間は、交感神経が優位になり、イライラして攻撃的になるようにできています。それは、太古の昔、人類が狩りに出かけていた頃の名残です。狩りに出ていくときには好戦的になり緊張していなければいけないので、交感神経の働きを高め、イライラさせていたのですね。
ですから、お腹が空いたときや「なんだかイライラしているな」と感じたときに、少量の間食をとるのは、私もいいことだと思います。
仕事中の間食は15分くらい時間をとる
『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
そもそも仕事中は交感神経が高ぶりやすいもの。間食をとって、お腹にものが入ると、消化吸収のために胃腸が動き出して副交感神経優位になります。仕事で高ぶった交感神経を抑え、脳の疲労を防ぐという意味でも、ほどよい間食は疲労予防になります。
ちなみに、副交感神経から交感神経への切り替えは0.2秒くらいと早い一方、交感神経から副交感神経へ切り替えるには5分ほどかかります。ですから、仕事中の間食は、15分くらい時間をとって、リラックスする時間を確保するのがおすすめです。そうするとリフレッシュできます。もちろん、仕事の資料もスマホの画面も遠ざけてくださいね。
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提供元:「間食をしない人」は太りやすい"超盲点な真実"|東洋経済オンライン