2023.05.10
老化・生活習慣病に悩む人は「腸漏れ」している|「疲れやすい」「だるい」と感じる人が見落とす事
最近の体調不良、年齢のせいではなく、腸内環境のせいかもしれません(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)
「何だか疲れやすい」「だるさが抜けない」……その症状、実は「腸」が原因かもしれません。腸は全身の免疫をはじめ、様々な働きの要となっています。その腸に「ある異変」が起こってしまうことで、その働きが鈍ってしまうことがあるというのです。
腸と腸内細菌研究の第一人者の國澤純氏の新刊『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』(日経BP)から一部抜粋・編集のうえ、健康な人の腸でも起こりうる「異変」と、その改善方法をお伝えします。
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第1回記事:「やせられない人」は腸内環境の重要さを知らない ※外部サイトに遷移します
第2回記事:日本人が持つ「太りにくくなる菌」効果が出る食品 ※外部サイトに遷移します
「疲れやすさ」や「だるさ」、腸漏れの初期症状かも
腸には、体の維持に必要な栄養をはじめとする有益なものを取り込み、それ以外のウイルスや病原性細菌、ホコリ、アレルゲン、未消化の食べ物などの異物が体内に侵入しないようにブロックするための機構が整っています。
腸管は「絨毛」という無数のヒダが覆っており、そのヒダの表面は「上皮細胞」と呼ばれる細胞がスクラムを組むようにぴっちりと接合していて、危険な異物を体内に入れない関門としての役割を果たしています。ところが、何らかの原因によってそのスクラムが緩んで、ヒダの隙間から異物が侵入してしまうことがあります。
それを「腸漏れ(リーキーガット)」といいます。
出所:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』より 図:三弓素青
「腸漏れ」は、腸だけでなく、全身にとっても一大事です。
普段も強靱なスクラムの間を縫って異物が侵入することはありますが、その場合には腸にいる免疫細胞が異常を察知し、対処をするため、異物の侵入が大きな問題になることはめったにありません。しかし腸漏れになると、門が開きっぱなしの状態に。普段からは考えられないレベルの大量の異物が侵入し続けることになります。
異物が侵入し続けるわけですから、免疫細胞は異常を察知し続けることになり、結果としてオーバーワーク状態に陥って、炎症を起こします。風邪を引くと熱が出るように、炎症(熱)を起こして異物を一気に片付けようと機能するのです。
一番の問題は「開きっぱなしの門」です。門が開きっぱなしであれば異物は侵入し続け、炎症も起き続ける。炎症が慢性化すると、腸は本来の免疫機能を果たせなくなります。さらには、異物は腸から血液中に流れ出て、全身の器官にも侵入してしまいます。そして各器官でも炎症を起こすため、「体の調子がなんか悪い」「疲れが抜けない」「だるさや微熱が続く」といった全身症状が表れてきます。
「ちょっとだるい、くらいの不調なら大したことはない」と思うかもしれませんが、それは早計です。
たしかに腸漏れによる慢性炎症は、急性炎症のような激しい痛みや高熱が出るわけではありません。「すぐに病院に行こう」とは思わない程度の静かな症状ですが、その「静かさ」が問題なのです。
「ちょっと最近、疲れているな」くらいの実感しかない間に異物が全身をめぐって、各器官にジワジワとダメージを与えます。たとえるなら、低温やけどのようなものです。気づいたころには大ダメージで、しかもそうした炎症が体のあちこちで起きていて、細胞や組織を傷つけていき、そしてあるとき、「病気」となって現れます。
肝臓がダメージを受ければ疲れやだるさがよりひどくなり、そのままにしておけば慢性肝炎、さらに悪化すれば肝硬変になりかねません。脳で炎症が起きれば、脳細胞の萎縮につながって認知症の一因になります。
そのほか、腸漏れは糖尿病・動脈硬化・がんなどとの関連も示唆されています。詳しくは後述しますが、もし原因が思い当たらない疲れやだるさ、微熱が続くことがあったら、腸漏れを疑ってみるのも一つだと思います。
腸漏れと腸内環境悪化「酸素をめぐる負のサイクル」
腸漏れの原因でもあり、さらに問題を連鎖的に引き起こすのが腸内細菌叢の悪化です。健康な腸は酸素とエネルギーを大量に消費して、つねにウネウネと動いています。これが「ぜん動運動」です。しかし、食物繊維不足などで腸がエネルギー不足になり活動が低下すると、酸素の消費量が減ります。便秘時にはこんなことが起きているのです。
さらにバリアが緩い腸漏れ状態になると、使われなかった酸素が腸に漏れ出てしまいます。そうして腸内環境はどんどん悪化していくことになります。
「多少の酸素が、そんなに大きな問題になるの?」と思われる方もいるかもしれません。実はこれが、腸にとっては大問題です。
小腸は位置的に酸素が入ってくる環境で、もともと酸素が多少あっても生息できる有用菌がいるとはいえ、そうした菌の多くは通性嫌気性菌。もともと酸素を好む性質(好気性)ではないのです。したがって、酸素量が増えたら、生息する菌が変化します。
さらに、大腸は通常無酸素なので、いるのは酸素を嫌う有用菌(偏性嫌気性菌)ばかりです。酸素が入ってきたら、それまでいた有用菌は生息できなくなり、逆に酸素があると生きられる好気性の有害菌が増えます。その代表が「大腸菌」です。食中毒を引き起こす病原細菌の多くも好気性の有害菌で、腸内の酸素量が増えると増殖しやすくなります。
出所:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』より
小腸・大腸ともに、有害菌が増えて有用菌が減ると、それまで有用菌が生み出してくれていた恩恵を受けられなくなります。その代表は、短鎖脂肪酸。有用菌の働きで生み出されているものですから、有害菌の増加によって、生み出される短鎖脂肪酸の量も減るのは当然です。
短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性の状態に保って有害菌の繁殖を防ぐ働きをはじめ、エネルギー源として腸の活動を支えています。腸漏れの原因の一つは腸のエネルギー不足ですが、腸漏れにより有用菌が減り、エネルギー源である短鎖脂肪酸がさらに減ることで、ますます腸漏れが進みます。
また、短鎖脂肪酸は免疫細胞の機能をコントロールする役割も担っていますが、腸漏れになって腸内環境が悪化すると、その役割を果たせなくなります。それによって免疫細胞のオーバーワーク状態が加速してしまい、炎症が悪化する一因になってしまうのです。
腸内を弱酸性の状態に保つ有用菌
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このように、様々な形で私たちの良好な腸内環境の維持に寄与してくれている短鎖脂肪酸が減れば、体にどんな影響が及ぶかは、いうまでもありません。
そんな恐ろしい腸漏れを予防する方法はいくつか考えられますが、まずは腸内を弱酸性の状態に保つ有用菌を増やすこと、そして、有用菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖をしっかりとることから始めましょう。具体的な食事法は、前回の記事でご紹介した、日本人のやせ菌「ブラウティア菌」を増やす方法でご紹介した通りです。
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バランスのよい食事をとり、特にヨーグルトなどを追加してビフィズス菌、乳酸菌が不足しないように継続的に摂取し保つことが、ダイエットだけでなく、様々な病気の予防や疲れの改善の鍵といえるでしょう。
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提供元:老化・生活習慣病に悩む人は「腸漏れ」している|東洋経済オンライン