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2023.04.26

「やせられない人」は腸内環境の重要さを知らない|腸の大きすぎる影響力を知らない人は損をする


日本人は白米をよく食べるのに、他国と比べて太りにくいといいます(写真:shige hattori/PIXTA)

日本人は白米をよく食べるのに、他国と比べて太りにくいといいます(写真:shige hattori/PIXTA)

コンビニやスーパーに並ぶヨーグルトや乳酸菌飲料にはよく、「内臓脂肪の蓄積を抑える」「脂肪対策に」などの機能性が表示されています。「腸にいい」とされている食品を摂取すると、なぜ体型にまで影響を与え得るのでしょうか。

腸と腸内細菌研究の第一人者の國澤純氏の新刊『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』(日経BP)から一部抜粋・編集のうえ、「腸」という臓器の果たす役割の大きさと、人間と腸内細菌との共生のあり方、そして腸と腸内細菌を生かす生活のコツを解説します。

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白米をたくさん食べる日本人に「肥満」が少ないワケ

2013年、日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。その理由の一つに「健康的な食生活を支える栄養バランス」が挙げられていることもあって、「日本食は健康にいい」というイメージは広く定着しています。

しかし一方で、最近の「糖質オフダイエット」「炭水化物抜きダイエット」などでは、米をはじめとする炭水化物が敬遠されるなど、日本食には「健康的」というイメージとともに、「肥満の一因である炭水化物が多い」というイメージもまた根強いように思います。肥満は様々な病気を引き寄せることからも、日本食には2つの相反するイメージがある、といってよいでしょう。

この2つの異なるイメージの背景には、日本食そのものの大きな変化があります。一口に「日本食」といっても、その実態は時代とともに大きく変わってきました。例えば「国民栄養調査」で日本人のたんぱく質の摂取量の変遷を調べると、近年は、肉や魚の動物性たんぱく質の摂取量が、豆・豆腐や穀物由来の植物性たんぱく質の摂取量より上回った状態が続いています。

しかし、この傾向はごく最近のもので、さかのぼると、動物性たんぱく質の摂取量が植物性たんぱく質の摂取量を上回ったのは1979年。それ以前は植物性たんぱく質をより多くとっていました。

さらにさかのぼると、1966年には植物性たんぱく質の摂取量は動物性たんぱく質の2倍近くあり、戦後の1947年には動物性たんぱく質の約3倍も、植物性たんぱく質をとっていました。

当時は、玄米をはじめ、大麦、ひえやあわなどの雑穀、豆腐や味噌などの大豆食品からたんぱく質をとっていましたが、そうした食品の摂取量は減少し、ここ数十年で動物性が主流へと移り変わった様子が、こうした調査から明らかとなっています。

その背景としては、かつては、昨今のように肉や魚が自由に手に入ったり、長期保存が可能な状況ではなかったりしたこともあるでしょう。玄米100gに含まれるたんぱく質量は6.8gで、白米の3.5gより多いものの、豚の赤身肉100gに含まれるたんぱく質量の20.9gと比べるとかなり少ないことがわかります。たんぱく質の含有量としては、たしかに肉のほうが豊かです。

ただ、だからといって当時の日本人はみんなガリガリに痩せていたかといったら、そうではありません。穀物を中心とする炭水化物で、体を維持する仕組みができていました。

そのことを裏付けるかのように、日本人の腸内細菌には、炭水化物を分解する菌がほかの国の人々より多いことが報告されています。これは早稲田大学の服部正平教授らが2016年に科学雑誌『DNAリサーチ』に発表したもので、日本人106人の腸内細菌叢を解析し、アメリカやフランス、ロシア、中国などの計11カ国の国民の平均的な腸内細菌叢データと比較しました。

日本人に一番多いのは「ブラウティア属」に分類される菌で、ビフィズス菌も他国より多くいました。ブラウティア属の菌の特徴は、炭水化物に含まれる食物繊維や難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖をエサにして、私たちの体にとって有益な短鎖脂肪酸などを生み出してくれることです。

「腸内細菌を味方につけて痩せる」には?

数年前から、人気のダイエット法として炭水化物の摂取量を減らす糖質制限が定着しています。しかし、腸と腸内細菌の観点で見ると、安易な「炭水化物抜き」はお勧めできません。

出所:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』より

出所:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』より

日本人の腸には炭水化物のうち、食物繊維や難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖をエサにする腸内細菌が圧倒的に多いということは、やみくもな食事制限では次のような負のサイクルが起こる可能性があるからです。

「短鎖脂肪酸」は代謝促進以外にも多彩な効果があることから、炭水化物抜きは、体重コントロール以外でも、「免疫のバリア機能の強化」「血糖値を一定に保つホルモンであるインスリンの分泌促進」「生活習慣病の予防と改善」といった健康効果を得にくくなると考えられます。一時的な体重や体脂肪の減少と引き換えにするには、大きな代償に思えてなりません。

腸内細菌はあくまで、私たちの腸が棲みやすい環境だから、そこにいるだけ。「エサは与えませんが、腸内にいてください」というような人間の勝手は通用しません。もし糖質制限のダイエットをしたいなら、腸内細菌の働きも視野に入れて行いましょう。

白米を主食にしている方は、大麦(押し麦やもち麦)を加えた麦ご飯にしたり、オートミール(オーツ麦)を取り入れたりするのがお勧めです。水溶性の食物繊維が豊富に含まれており、それぞれ腸内細菌のエサになります。かつ、糖の吸収をゆっくりにして、血糖値の上昇を抑えてくれます。

パンやパスタも精製された小麦100%のものでなく、全粒粉入りのものに切り替えるといいでしょう。そうすれば自然と食物繊維の摂取量が増えて、炭水化物をダイエットの敵から強い味方に変えられます。

全粒粉のパンやパスタが食卓にのぼりやすい欧米と比べ、白米好きの日本人は、穀物由来の食物繊維の摂取量が少ないともいわれています。腸内細菌とのよりよい共生の第一歩として、全粒粉や大麦入りのご飯を食べることはとても有効です。

あるいは、食生活にヨーグルトや納豆といった「発酵食品」を継続して取り入れるのもいいですね。発酵食品は私たちの体によい働きをしてくれる菌の宝庫です。口に入れた菌の多くは「通過菌」といわれ、そのまま腸内に定着することは基本的にはありません。

しかし、腸内でいい働きをしたり、常在する自前の腸内細菌を助けて有用菌の増殖に一役買いつつ、有害菌の繁殖を抑えるなど、様々な働きをします。通り過ぎながら、「お助け菌」のごとく活躍をしてくれることで、腸内環境が改善するわけです。

発酵食品を積極的に取り入れることで、好循環を生み出すことができるでしょう。

白米は「冷や飯」にするのが大正解

炭水化物は食物繊維と糖質が合わさったものです。白米は、玄米を精製して食物繊維が多いぬかを取り除いたものなので、“糖質の塊”ともいえます。

糖質は体内に入ると胃や小腸で消化吸収されて、血液の中をめぐるブドウ糖=血糖になります。その値が血糖値です。

ブドウ糖は脳や筋肉、臓器を動かすエネルギーになりますが、とりすぎると中性脂肪として蓄えられます。それが、「糖質のとりすぎは肥満につながる」といわれる理由です。

だから主食は白米から、食物繊維が豊富な玄米や大麦入りのご飯、オーツ麦を使ったオートミールなどに変えることをお勧めするわけですが、これらがちょっと苦手という方には、白米でもお勧めの食べ方があります。

それは炊たきたてではなく、冷まして食べる方法です。冷ました白米では、難消化性でんぷんが増えます。通常のでんぷんは消化酵素で分解されて小腸で吸収されますが、難消化性でんぷんになると複雑な構造に変わるため、消化酵素では分解されません。不溶性なのに水溶性食物繊維と同じように腸内細菌のエサとなり、私たちの体にとって有益な短鎖脂肪酸を生み出してくれます。

難消化性でんぷんの測定法ができたのは最近なので、昔の人たちがどのくらい難消化性でんぷんを摂取していたかは定かではありません。ただ、現代のように炊飯ジャーや電子レンジがあって1日中温かいご飯が食べられる状況ではなかったことを考えると、今よりもたくさん冷たいご飯を食べていたことが想像できます。昔の人たちは意図せずに、腸内細菌も喜ぶ白米の食べ方をしていたことになるでしょう。

冷ますといっても、手を当てて熱を感じない程度の温度で十分です。お弁当に詰めるときや、おにぎりにするときにも冷ましますよね。それと同じ要領でいいと思います。

ことわざの「冷や飯を食う」は、扱いが悪くて冷遇されることを意味しますが、腸内細菌にとってはエサが増えて、むしろ好待遇、といえるかもしれません。

「○○だけダイエット」が腸内環境を破壊する

糖質制限をするとき、炭水化物を控える代わりに、肉や魚、卵などの動物性たんぱく質を増やすのが“王道”だと思います。

ほとんどの動物性たんぱく質は、アミノ酸スコア(たんぱく質の栄養価を示す指標)が満点で、私たちの体をつくる重要な栄養ですが、動物性たんぱく質だけとっていればいい、というわけではありません。栄養バランスが偏れば、腸内細菌はエサ不足に陥って、腸内細菌叢が乱れます。

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さらにはとりすぎによる弊害も。肉やエビ、卵、チーズなどに含まれるコリンやL-カルニチンという成分が腸内細菌によって分解されると、トリメチルアミン(TMA)という代謝物が生み出されます。そして腸管から吸収されて血液中に入りますが、このトリメチルアミンの血中濃度が高いほど動脈硬化を引き起こしたり、心筋梗塞や脳梗塞などの心疾患系の病気の一因になったりするといわれます。

コリンはビタミンの働きを助けること、L-カルニチンは脂肪を燃焼する効果があることでも知られますが、とりすぎは禁物ということ。
どんなに体にいいものも「ばっかり食べ」は栄養の偏り、そして腸内細菌の偏りを生んで、弊害につながりかねません。これはどの食材にもいえることでしょう。

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提供元:「やせられない人」は腸内環境の重要さを知らない|東洋経済オンライン

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