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2023.04.03

50歳で「記憶力抜群な人と覚えられない人」の差|「関心」「使って復習」「覚えるより意味を理解」


記憶力は、60代と20代でも大差ないという研究結果もあるようです(写真:kikuo/PIXTA)

記憶力は、60代と20代でも大差ないという研究結果もあるようです(写真:kikuo/PIXTA)

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仕事、働き方、健康、家族……。

“成長”が一つの指標だった40代のころまでとは打って変わって、自身の役割や立場、環境に大きな変化が訪れる50代。そんな50代からの勉強法は、目的によって異なります。

和田秀樹さんの著書『五〇歳からの勉強法』より一部抜粋のうえ、50歳からの記憶法3つのコツをお届けします。

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覚える能力そのものは低下しない

わたしたちが老化を最初に感じるのは、人の名前がなかなか出てこない、あれとかこれ、といった代名詞を使うことが多くなったときではないだろうか。特に最近の芸能人の名前やIT用語となると、すぐに忘れてしまうから、いまさら資格試験や外国語の学習など困難だと考える。

しかし、エビングハウスの忘却曲線で見る限り、60代と20代でも大差ないという話を日本における記憶研究の大家の池谷裕二先生から聞いたことがある。

エビングハウスの忘却曲線というのは、ドイツの心理学者だったエビングハウス氏が無意味な言葉の丸暗記から見いだした「忘却は覚えた直後に急速に進む」という法則で、かれの実験によると、人は暗記した後、20分後には42%を忘れ、1時間後には56%を忘れ、1日後には74%を忘れる。1週間後には77%を忘れ、1カ月後には79%を忘れるという。

だから、10分後、1時間後、1日後と、忘れる前に間隔を空けて繰り返し復習することで、効率よく覚えられる、とされる。

(画像:『五〇歳からの勉強法』)

(画像:『五〇歳からの勉強法』)

(画像:『五〇歳からの勉強法』)

(画像:『五〇歳からの勉強法』)

記憶力低下は、意欲の低下と復習不足から

いくら、この忘却曲線そのものは年齢によって変わらない、といわれても、現実として、昔のようには覚えられない、確実に記憶力は落ちている、という人も多いはずだ。

それなら、エビングハウスの忘却曲線に沿った記憶法についてはどうだろうか?

わたしたちは学生時代、こんなふうに何度も復習して覚えてきたのではなかったか? はたして、いま、そこまで復習して物事を習得しようとしているだろうか?

要するに、大人になると、記憶力が落ちるのは、学生のころのようには復習しなくなるということかもしれない。

さらに、中高年ともなると、ここまでに述べてきた意欲の問題が非常に大きい。必要のないこと、関心のないことには、そもそも復習してまで覚えようという意欲が湧かない。

わたし自身、どうせケータイに覚えさせてあるからと、最近は、電話番号を覚える意欲が湧かなくなって、いつまでたっても電話番号が覚えられない。携帯の持ちはじめの最初の5年間は、意地になってケータイに覚えさせなかったので、若いころと同じように100件以上は頭に入っていたものだが、いまではそもそも覚えようという態勢に頭が向かない。

ところが、ワインにまつわることとなると、話は別だ。ワインの話なら、銘柄や産地、どのビンテージがおいしいかなども含め、何年のなんというワインがパーカーポイントが何点というのを100個ぐらいは覚えている。関心があるからだ。

ただし、この場合も、「これはカベルネ・ソーヴィニヨンが68%で、メルローが25%で」とか、「これはボルドーの右岸のワインで」といったことより、例えば、「ロマネコンティとペトリュスだったら、ロマネコンティがブルゴーニュの最高峰で、ペトリュスがボルドーの最高峰となっているけど、僕だったら、レストランで絶対にペトリュスを開けます。ロマネコンティっていうのは開く(おいしくなる)のに時間がかかりすぎるからです」といったことのほうを覚えている。

そのほうが聞く相手にとっても面白いだろうな、ということもあるが、それ以上に、細かな数字よりも意味がわかっていることが重要な、想起しやすい記憶だからだ。覚える数字も最低限にしている。

「パーカーはペトリュスのほうが好きで、何回も100点をつけているけど、ロマネのほうは85年の一度だけ100点をつけている。ペトリュスは100点の年より99点の75年が飲みごろということもあって、ずっとおいしいと思うけど」

これなら、いくつも数字を覚えているように見えて、85年と75年の2つのビンテージしか覚えなくてすむ。99点というのは100点のおまけのようなものだからだ。

つまり、さほど復習しなくても覚えられるようにするには、意味を考えることだ。付帯的な知識もいっしょに覚えておくといい。これをエピソード記憶という。単純な名前や言葉の記憶は苦手でも、エピソードやそれにまつわる知識なら覚えていられる。

そして、とことん納得するまで理解することだ。

丸暗記はやはり若い人に分があるとしても、中高年は、理解力で勝負できる。理解したことは、記憶というより自分自身の思想の一環となって、いつでも引き出せる状態にあるはずだ。

アウトプットで、「想起力」を磨く

ここで、記憶力についてもう少しお話ししておくと、記憶力には、記銘力と保持力と想起力の3つの段階があり、記銘は情報を脳にインプットする力、保持は、記憶を長い間貯蔵する力、想起は、蓄えた記憶を引き出しアウトプットする力である。受験勉強のふだんの勉強では記銘力と保持力、テスト本番は想起力がおもに使われる。

そして、年齢とともに低下するのは、実は想起力のほうだ。だから、頭の中に概念はあるのだが、その具体的な名前が出てこなかったりするわけだ。

これにも復習が重要なのだが、それには、実際にアウトプットしながら、記憶に定着させていく方法が中高年にはもっともお勧めである。

ちょっと高級なホテルに行くと、チェックインの際にクレジットカードを出した瞬間から、名前で呼ばれるようになる。

「それでは、和田さま、本日はようこそおいでいただきました。和田さまの必要なことがありましたら、なんなりとお申しつけください。和田さまは明日は日経新聞でよろしかったでしょうか」といった具合だ。

そして、次に行ったときには、「和田さま、お待ちしておりました」となる。これなど、とにかく口に出すことで記憶しているのだ。

お礼のメールでは苗字だけでなくフルネームで、必ず、会社名、肩書きを添えて書くようにすること。これもまた、実際に使いながら、記憶していくテクニックである。また、新しい人と出会ったら、覚えたばかりのこと、数字などをSNSなどの記事にしたり、知人とのおしゃべり、講演などでできるだけ使うようにする。

使っているうちに、再び、記憶が定着する。使うこと自体が復習になるのだ。

というわけで、50歳からの記憶法についてまとめておく。大切なのは次の3つだ。

(1)関心

関心がなければ、覚える気にもならない。なんらかの目的がなければ、意欲が続かない。

(2)使って復習

大人になると、圧倒的に復習の量が減る。これを補うためには、覚えたことをできるだけ日常会話のなかで「使う」ことだ。すなわち、アウトプットしていくこと。アウトプットしながら、記憶に定着させていくのだ。

(3)覚えるより意味を理解

ランダムに並んでいるアルファベットを順に覚えるのはたいへんだろうが、それが何かを表す単語なら覚えられる。意味を理解するからである。きちんと意味を理解し、場合によっては、そのことにまつわるエピソードや関連知識も調べてみる。そして、誰かに話したり、ネット上で原稿にまとめてみたりすることだ。驚くほどよく覚えていられることがわかるだろう。

10のコツ

もう少し各論を加えつつ、10のコツにしてみると、次のようになる(さらに詳しく知りたい方は、拙書『40歳からの記憶術』(ディスカヴァー携書)をご覧いただきたい)。

(1)インタレストを持つ
(2)覚えることを減らす
(3)覚えたい事柄について、納得するまで理解を深める
(4)覚えることは減らしても、それぞれについての付帯情報は増やし、想起のキューをちりばめておく
(5)既存の知識と関連づけ、知識を加工して覚える
(6)エピソード記憶にする
(7)感覚器や身体活動も含めたセットとして覚える
(8)効果的なアウトプットから逆算してインプットする
(9)十分な睡眠を心がけ、ベストな状態に自分を保つ
(10)何度も使う

「使う」ということについては、書く・話すというアウトプットを行うことがもっともよい。

ちなみに、アウトプットの機会を持つことは、50歳からの記憶法として非常に効果的なだけではなく、そもそも記憶する目標にもなる。そのほうが話が面白い人間にもなれる。

目標を持つことで、関心の幅も拡がり、覚えたいことに対する理解も深まるのである。

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提供元:50歳で「記憶力抜群な人と覚えられない人」の差|東洋経済オンライン

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