2023.02.07
医師提案、肝臓から脂肪を落とす「コンビニ活用法」|おにぎりにプラスしたい「食品」とは?
医師が提案する、「コンビニランチ」の上手な活用法を紹介します(写真:Ushico/PIXTA)
長野県佐久市立国保浅間総合病院「スマート外来」では、患者の8割が3カ月で約5kgの減量と、脂肪肝の改善に成功しています。患者さんの成功事例を参考に、肝臓から脂肪を落とす食事の実践的な取り組み方を紹介します。
『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』が大好評の肝臓外科医・尾形哲氏がこのたび、『専門医が教える肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』を上梓。本書から一部抜粋・再構成してお届けします。
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減量成功のカギを握る“最初の1カ月”
肝臓の病気というと大酒飲みかウイルスによるものと思われてきましたが、今は違います。脂肪肝の多くは毎日の食事によるものであり、放置すると危険な脂肪肝炎、肝硬変に進みます。そして、今後10年以内に脂肪肝炎が日本人の死亡原因の1位になると予測されています。事実、アメリカではすでにそうなっています。でも、食習慣が原因の脂肪肝は、肝臓をいたわる食事で体重を落とすことで改善できます。だから、放置しないで減量に励んでほしいのです。
減量にこれまで何度も挑戦したけれど、うまくいかなかった方もいるかもしれません。成功のカギは“短期間で確実に結果を出す”ことにあります。そのために実践してもらっているのが、毎日体重を量って記録すること。そして、減量期間は3カ月と決めます。目標とする体重は、現在の体重の7%減です。体重を7%減らすと肝細胞から脂肪が減少するためです。
「短期的」に、経過を「数値化」して、「記録」することが減量効果を向上させます。これらの頭文字をとって「タスキの法則」として実践を促しています。1年間かけて6kg減らすより、3カ月で6kg減らして維持するほうが、血糖値を一定に保つ「耐糖能」が改善するデータからも、短期間でやせるメリットをご理解いただけるでしょう。
実際に3カ月というダイエット期間を意識して取り組み、減量を成功された患者さんの事例を紹介しましょう。
元プロスポーツ選手だったSさん(男性・当時41歳)は、現在、経営者として働いています。昼も夜も取引先の担当者との会食が多く、筋肉質だった体型が少しずつ脂肪に変わってぽっちゃりしてきた自覚はあったそう。とはいえ気になる不調もなく、健康診断の結果が届いても、忙しさにかまけて見もしなかったとのことでした。
そんなある日、お子さんの誕生をきっかけに学資保険に入ろうと健康診断の結果を提出したところ、健康状態が悪いことを理由に保険会社から加入を拒否されてしまったのです。それを知ったご家族は慌ててSさんの健康を取り戻すために最適な医療機関はないかと調べ、当院の「スマート外来」にいらっしゃいました。
初診時の計測では、身長170cmで84.8kg。体脂肪率は27.9%。肝機能の状態を示す数値も基準値を超えていて、CTを確認すると血管が見えない中等度の脂肪肝。30〜149が基準の中性脂肪も251とかなり高い数値を示していました。普段の食生活について尋ねると、外食が多く、お酒もほぼ毎日飲む。年間200食はラーメンを食べているとのことでした。
減量のスタート時期が新型コロナウイルスの自粛期間中で会食がない好都合な状況だったこともあり、とにかく集中して食べ方を身に付け、最初の1カ月でまず2kg減を確実に達成するよう取り組むようお伝えしました。
「コンビニランチ」で“緩やかな糖質オフ”を実現
家庭での食事作りは奥さんが中心だったようですが、Sさんご自身がコントロールする昼食については、ルールを決めて実践してもらいました。
食事ルールを示すうえで、肝臓の脂肪を作るモトを知っておかなくてはなりません。肝臓脂肪の60%は皮下脂肪や内臓脂肪が溶け出したものです。残り40%のうち、食事でとった脂質からは14%。同じく食事でとった糖質から合成される分が26%です。脂質も影響しますが、それ以上に大きく脂肪を増やす要因になるのが“糖質”なのです。そのため、まずは糖質が多いご飯、パン、麺などの主食の量を控えることをルールにしています。
ただ、糖質をゼロに近づける極端な糖質制限では継続が難しく、食事での満足感も得にくくなります。なので、肝臓から脂肪を落としつつ、糖質が過剰にならない“緩やかな糖質オフ”を推奨しています。1食の糖質量は20〜40g。1日のトータルで130g以下になるようにします。
1食の糖質量を守るには、ご飯なら茶碗1/2杯(70g)、パンなら6枚切り1枚(60g)、麺ならゆでた後の重量で120gまでが上限です。この量なら主食の糖質量は25gを超えません。なお、一般的なラーメン店でのゆでた麺は並盛で280g程度。食べていいのは半分以下なので、ラーメン店での食事は現実的に難しいことになります。
その代わり、Sさんに活用してもらったのが「コンビニ」です。サラダチキンや豆腐バーなどのタンパク質をとれる商品、カップサラダ、小さなおにぎり1個の組み合わせで、コンビニの商品による肝臓をいたわるランチ献立ができます。
減量時のSさんの食事記録を見ると、コンビニやスーパーで購入した鮭の塩焼き、とりの唐揚げ、カップサラダ、おにぎり1個というメニューで、まさに理想的な組み合わせ。ラーメンばかりの外食ランチから、コンビニランチをうまく取り入れるほか、ダイエット期間中はお酒をいっさい断つなど本気で取り組まれました。
ランチ以外でも野菜を積極的にとるようにし、肉や魚介、卵の主菜は十分に食べることができたので、主食を減らしても空腹がつらいことはなかったようです。むしろ、ランチ後に睡魔に襲われることがなくなって、集中力も向上したとのこと。
そして、減量開始1カ月で5.8kg減(念のため補足しますが、基本的には1カ月で2kg減を達成できれば十分です)。3カ月後には12.3kg減の72.5kgまで体重を落とすことに成功しました。脂肪肝もなくなり、保険にも無事に加入が認められました。現在は再び外食の機会も増えているようですが、食べ方がわかったことで、メニュー選びに困ることなく、ダイエット後の体重をキープできています。
肝臓から脂肪を落とす「コンビニランチ」の選び方
では、コンビニでどんな商品を購入すべきか説明しましょう。買うものは3つのみ。(1)タンパク質がとれる食品、(2)カップサラダ、(3)おにぎり1個です。それ以外は考えなくていいので、迷うことはありません。
【(1)タンパク質がとれる食品】
タンパク質は1食で20〜30gとるのが理想です。コンビニで定番のサラダチキンなら、1個(約100g)でタンパク質量20gをまかなえます。昨今人気の豆腐バーやカニカマバーも手軽です。各1個でタンパク質量は10g程度なので、チーズやゆで卵などをプラスして、不足分のタンパク質を補いましょう。鮭やさばの塩焼き、しめさばなどの惣菜や焼きとりもOK。焼きとりの場合、味付けはたれより塩を選べば、余計な糖質の摂取を避けられます。
注意するのは、タンパク質を意識するあまりプロテインバーやプロテイン飲料を摂取すること。こうした商品は食品ではなく、サプリメントです。サプリメントは肝臓での代謝に負荷が大きいものが多く、避けたいものです。プロテイン以外で健康にいいとされるサプリメントも、減量期間中は避けましょう。ちなみに付け加えると、某プロテイン飲料の1回分よりサラダチキン100gのほうがタンパク質量が多いのは事実です。
【(2)カップサラダ】
血糖値の急上昇を抑え、腸内環境を整えるには食物繊維が欠かせません。大きめのカップサラダや野菜スティックなど、必ず野菜をつけましょう。海藻サラダやネバネバサラダなどお好みでかまいませんが、ポテトサラダやかぼちゃサラダは高糖質なので例外。どうしても食べたいのなら、主食代わりにしてください。
自前のカップにコンビニで購入したせん切りのカットキャベツと顆粒のコンソメを入れて熱湯を注げば、即席の野菜スープを作ることもできます。コンビニで購入できるカット野菜を使ったアイデアとして実践できる方はお試しください。
ただし、手軽だからと野菜ジュースを選んではいけません。大事なのは野菜に含まれる食物繊維であって、ジュースでは大半の食物繊維が取り除かれています。糖分が含まれる飲料も多いので、選ぶべきはサラダです。
【(3)おにぎり】
コンビニにはさまざまなおにぎりが売られていますが、鮭やツナマヨなどタンパク質をプラスできる具が理想です。サイズの小さいものを選びましょう。鮭ハラミやポーク卵おにぎりなどは具が大きい分、ご飯量も多くボリューミー。糖質摂取を増やさないよう、同じ1個でもサイズの大きなおにぎりは避けましょう。
小さめのおにぎりでも、実はご飯の量は90g程度で1食での原則とする70gより多いです。このオーバー分をどう考えるかですが、私は90g程度なら、残さず1個分食べていいと思っています。食事を残すことへの罪悪感もありますし、空腹感から甘いものに走るぐらいならお昼のおにぎりは食べてOK。ただし、折り合いを付けるために夕食で調整することを考えるといいですね。また、時にはおにぎり抜きでランチを過ごす日があってもよいでしょう。
おにぎり代わりに低糖質のパンを食べてもいい? と聞かれることもあります。NGとは言いませんが、腹持ちはご飯のほうがよいのと、低糖質パンは糖質量を抑えるために甘味料が使用されていることも多いので避けるのが無難でしょう。
コンビニはがんばらずに続けるための強い味方
コンビニ商品の活用を推奨しても、食品添加物や、野菜の農薬などが気になるとおっしゃる方もいると思います。そういう面もありますが、実践しにくく継続できないことは現実的ではありません。肝臓に脂肪を蓄えたままいれば、肝臓は静かにダメージを受け続けて機能を低下させていきます。肝臓は組織の5%以上に脂肪がたまると機能が低下し始めます。しかし、健康診断やCTで脂肪肝とわかるのは脂肪が30%以上たまってから。症状が出るころにはかなり進行しているケースがほとんどです。だから、まずはこだわりすぎずにコンビニ食材に大いに頼ろうではありませんか。
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むしろ、コンビニこそ顧客ニーズを反映した商品開発に積極的に取り組んでいます。昨今は、糖質を気にする人やタンパク質の積極的な摂取を求める人の流れをくんだ商品が続々と誕生しています。パッケージやウェブサイトには栄養成分が記載されていることも多いので、困ったときには自分で確認できて安心です。
そして、何より減量中の食事作りを“がんばりすぎない”ために、出来合いの食材を頼ることに罪悪感を持たないでほしいと思います。スーパーにもたくさんの惣菜が並んでいます。「あれもこれもダメ」と制限してガマンを強いたり、食事作りをがんばりすぎたりすることで心身は疲弊してしまいます。そのストレスこそが肝臓への負担を大きくし、結果的にリバウンドの原因になります。
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提供元:医師提案、肝臓から脂肪を落とす「コンビニ活用法」|東洋経済オンライン