2023.01.31
「正月太りが解消しない人」が陥る食と運動の盲点|体脂肪だけが増える食生活の落とし穴があった
正月太りが解消されない!その理由は食事にあるかもしれません(写真:takeuchi masato/PIXTA)
テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。今回は「正月太りから立ち直るための食とトレーニング」です。
若い頃は引き締まっていた体が、年々たるんで、気が付けば体重も増えて……。今年こそはダイエットをと、意気込んでいる方も多いでしょう。
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では、体脂肪、体重を減らすために、まずやるべきことは何でしょうか?
A 有酸素運動を始めること
B 主食の糖質を減らすこと
C 食事回数を増やすこと
摂取エネルギーと消費エネルギー
答えはCの「食事回数を増やすこと」です。
体脂肪は消費エネルギーを摂取エネルギーが上回り続けることで少しずつ増えていくわけですが、大抵、太ってしまう人は摂取エネルギーが多い傾向にあり、消費エネルギーが少ないわけではありません。ですから、運動で消費エネルギーを増やすより、食事を見直して摂取エネルギーを減らす必要があるのです。
また、主食の糖質を減らすのは、確かに短期的に効果はありますが、いつも摂っていたものを減らすことはストレスになります。しばらくは耐えられても、少しずつストレスが蓄積され、逆に食に対する欲求が高まって過食に走り、リバウンドを引き起こします。
ストレスなく体脂肪を減らすコツは、食事を減らすのではなく変えること。その最も有効な方法が食事回数を増やすことなのです。
1日のトータルの食事量が同じなら、1日2食よりも3食、3食より4食というように、食事回数を増やすほうが体脂肪はつきにくく、回数が少ないほど体脂肪はつきやすくなります。この理由についてご説明しましょう。
まず食事回数が少なければ、当然、1回で摂る食事量が多くなります。食事量が多ければ多いほど、摂った栄養は蓄積に回りやすくなります。供給が需要を上回って在庫が増えてしまうようなものです。
食事量が多ければ血糖値の上昇幅も大きくなり、栄養を細胞に取り込む指令を出すインスリンというホルモンの分泌量が多くなります。食事量が多ければインスリンの分泌量も増え、使われることなくあまった栄養が体脂肪として蓄積されることになるのです。
食事回数が少ないことで起こる問題は、空腹時間が長くなることです。空腹時間が長くなると血糖値が下がっていくので、体に貯蔵された栄養を分解するためにグルカゴンやコルチゾールなど、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されます。このときに体脂肪だけが分解されれば問題はないのですが、 残念ながら体に必要な筋肉まで分解されてしまうのです。筋肉が減ってもいい、という人もいますが、筋肉は熱産生のためにたくさんのエネルギーを消費するので、筋肉が減れば代謝が下がって太りやすい体質になっていきます。
もう1つの問題は、空腹時間が長くなるほど食欲が増進することです。忙しさで食事を抜いたときに、食べることばかり頭に浮かんでくるのは、誰でも経験したことがあるでしょう。
逆に1回に食べる量を減らして食事回数を増やせば、血糖値の上昇幅が緩やかになって、おのずと体脂肪の蓄積、筋肉の減少、そして過度な食欲を抑えることができるのです。このような食事方法を「分食」と呼びます(図)。
分食のイメージ:トータルの食事量を変えずに、回数を増やすことで自然と体脂肪が減りやすくつきにくくなる
分食法の具体的なやり方
次に具体的な分食の方法についてご説明します。
まず多くの方がやるべきことは、朝食を充実させることです。とくに単身者は出社時間に合わせてギリギリまで寝て、朝はごく軽く食べる、コーヒーだけ飲む、あるいは何も食べないという方が少なくありません。朝食を抜くと睡眠時間も含めて12時間以上も食間が空くため、その間に筋肉が減ってしまいますし、食欲が増すので、結果、昼食を大量に摂って体脂肪が蓄積されやすくなります。
普段朝食を摂る習慣がない人は、「カフェラテと野菜ジュース」「ヨーグルトドリンクとスムージー」といった具合に、まずは飲み物だけでもかまいません。これに慣れてきたら、「カフェラテやヨーグルトドリンクをシリアルと牛乳」「野菜ジュースやスムージーをミニトマトとキュウリ」に替えるというふうに、少しずつ食事の形に変えていくのです。
エネルギー量や含まれる栄養素が同じでも、液状より固形のほうが消化吸収に時間がかかるので、腹持ちがよくなるのに加えて、噛みながら時間をかけて「味わう」ことで、心理的な食欲を満たすことができます。
朝食がしっかり摂れるようになったら、あるいはすでに朝食をしっかり摂っている人は、16時前後に間食を摂るようにします。今は12~13時頃に昼食を摂り、夕食は19時以降となっている方がほとんどでしょう。この場合、昼食と夕食まで食間が6時間以上空くことになり、血糖値が下がって筋肉の分解が進むとともに、食欲が増して夕食でドカ食いをしやすくなります。
現代の生活では、ほとんどの方がゆっくりと食事できるのは夕食になりますから、どうしても夕食の摂取エネルギー量が多くなりがちで、1日の総摂取エネルギー量の半分以上を占めるという方も少なくありません。
夜間の人間の体は分解モードから合成モードへと変わっている――具体的には交感神経優位な状態から副交感神経優位な状態に変わっているため、夜の食事量が多ければ多いほど体脂肪がつきやすくなります。それを踏まえると、午後の間食は、過剰な夜間の食欲と食事量を抑え、体脂肪をつきにくくしてくれるのです。
間食に食べたほうがいいもの
間食といってもお菓子やケーキ類を食べるのではありません。夕食に摂る主食を先取りするイメージです。
おにぎりやサンドイッチ類を食べて、そのぶん夕食の主食を減らします。この際、おにぎりならシャケや焼き肉が具となっているもの、サンドイッチなら卵サンドやハムサンドというように、たんぱく質が豊富な具材を使ったものを選ぶようにしましょう。
分食のメリットには実はもう1つあります。それは、たんぱく質の吸収がよくなることです。糖質や脂質と異なり、たんぱく質は一度にたくさん体内に吸収できず、個人差が大きいのですが最大でも30~40g程度だといわれています。分食をすると1回の食事あたりのたんぱく質の量が少なくなるので、1日トータルでみたときに吸収率が上がるのです。
たんぱく質の摂取量が多くなれば、筋肉の分解をより抑えることができます。加齢とともに体脂肪が増える最大の原因はエネルギー収支の黒字状態が続くことにありますが、その最大の要因は筋肉が少しずつ減少するからです。
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分食を続けていくと体脂肪の蓄積と筋肉の減少は抑えられますが、自動化と機械化が極端に進んだ現代の普段の生活では、特別に意識して体を動かしてない限り、筋肉を増やすほどの刺激を受けることはできません。
ですから、次のステップとして行いたいのは筋トレです。「分食+筋トレ」で、より引き締まった体になります。
加齢に伴って減少するのは主として下半身の筋肉です。そこで次から下半身のなかでもとくに大きな、太ももの表側と裏側、そしてお尻の筋肉を鍛える方法をお伝えします。いずれも2~3日の休息を挟んで週2回行いましょう。
分食にプラスしたい筋トレ
■ニー・エクステンション
●使う部位:太もも前の大腿四頭筋
(1)クッションの上に両膝を乗せて、つま先を立て、かかとにお尻を乗せて座る。上半身をまっすぐに伸ばし、床に対してやや後方に傾ける。手を胸の前でクロスし、視線を前に向ける
(2)息を吐きながら1秒かけて、膝から頭までが一直線になるまで膝を伸ばす。息を吸いながら2秒かけて、上体と床の角度を保ったままお尻がかかとに触れるまで膝を曲げる。これを筋力に合わせて6~12回行ったら、1分の休憩を挟んで3セットを目標に行う
※起き上がる際に上半身が前傾すると、太ももに効かなくなるので注意
■ヒップ・リフト
●使う部位:大臀筋と太もも裏のハムストリングス
(1)床に仰向けに寝たら、バランスを取るために腕を床につけハの字状に開く。膝を直角に曲げて立て、一方の足首を他方の膝上に乗せる
(2)息を吐きながら1秒かけて、「肩―股関節―膝」が一直線になるまでお尻を引き上げる。息を吸いながら2秒かけて、首すじを伸ばしたまま、お尻が床に触れるまで下ろす。筋力に合わせて6~12回行ったら、左右の脚を入れ替えて同様に。1分の休憩を挟んで左右各3セットを目標に行う
※お尻を高く上げ過ぎて上体を反らせてしまうと、腰に負担がかかる
イラスト:竹口陸郁
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提供元:「正月太りが解消しない人」が陥る食と運動の盲点|東洋経済オンライン