2023.01.18
一発でわかる「頭のいい人」の特徴的な話し方|「だから何?」と言われる人に欠けている視点
相手がイメージを掴みやすい話し方をする人と、「だから何?」と言われてしまう話し方をする人の違いはどこにあるのか(写真:YUJI/PIXTA)
丁寧に説明したはずなのに、「だから何?」「で?」と言われてしまう……。そうならないために重要なのが、「比較」によって話に「意味づけ」をすることだと、延べ1万人以上を指導してきた社会人教育の専門家、深沢真太郎氏は指摘する。本稿は同氏の著書『「数学的」話し方トレーニング』より、ビジネスにおける会話で比較がなぜ重要なのかについて紹介する。
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ビジネスシーンの会話は「比較」が命
頭のいい人の話し方をよく観察していると、実に巧みに比較を用いていることがよくわかります。とりわけビジネスシーンでは、比較の存在しない話などほぼ存在しないと申し上げても差し支えありません。裏を返せば、比較の存在しない会話はビジネスの会話ではなくただの遊びであるということです。
なぜそれほどまでに比較が重要なのか。頭のいい人は具体的にどのように比較を用いて話すのか。具体例も織り交ぜながら楽しく学んでいただこうと思っています。
さっそくですが、あなたは「意味づけ」をして話しているでしょうか。意味づけとは、文字通り意味を付加すること。もしかしたら「メッセージを込める」という表現の方がしっくりくる方も多いかもしれません。具体例を挙げましょう。
「いまうちの会社の年商は1億円です」
あなたが誰かからそう伝えられたとします。さて、いったいどんな印象を持つでしょうか。おそらくあなたは"その次の言葉"を待つスタンスになるはずです。なぜなら、これだけでは「だから何?」「で?」といった感情になるからです。
もちろんこの表現自体に問題があるわけではありません。しかしこの内容には何かが足りないのです。では、次のような内容であったらどうでしょうか。
「いまうちの会社の年商は1億円と好調です」
伝わり方、受け取り方が変わってきます。こちらの内容には1億円という事実の意味が付加されています。あなたはおそらく「それはよかったですね」「その理由は何でしょう?」といった反応をするでしょう。つまり、こちらの場合ではコミュニケーションが成立したことになります。
前者と後者の違いは「意味づけ」がされているか否か、つまりメッセージの有無です。このように意味づけがされていない伝達をしてしまうとコミュニケーションが成立しません。こうしたケースが私たちの日常に多々あります。例えばメッセージがない話を延々聞かされることを想像してみてください。
いまうちの会社の年商は1億円です。創業は1975年で従業員は5名おります。主力製品は〇〇と口口とA人の3つであり、創業当初から続く製品です。〇〇は社長自ら開発した製品であり、当初から多くのお客様に愛されました。口口はその第2弾という形で生まれた製品であり、A人は当時の社員みんなで考案した斬新なデザインの製品です。社長は温厚な性格で、ご両親が商店を営んでいたこともあって幼少の頃から商売に関心を持ったそうです。現在は社員たちも良い製品を開発して多くの人に喜んでもらおうと一致団結して頑張っています。この会社のスローガンは……
「意味づけされていない話」は退屈
おそらくあなたは「だから何?」「で?」といった感情になるでしょう。ひとことで言えば退屈な話という印象かもしれません。
とりわけビジネスシーンにおいては、「意味づけされていない話」ほど退屈なものはありません。極めて当たり前のことかもしれませんが、一方で誰もが会議の場などで先ほどのようなメッセージがない話を延々開かされた経験があるでしょう。この世の中は、相手に退屈だと思わせてしまう対話で溢れているのが現実なのです。
そこで生まれるのが、「では私たちは何をすれば退屈な話をしなくて済むのか」という問いです。その答えが、比較することです。先ほどの例を思い出しましょう。
「いまうちの会社の年商は1億円です」
「いまうちの会社の年商は1億円と好調です」
前者の内容に比較という行為は存在しません。ただ単に年商という事実を述べただけです。しかし後者は違います。「好調です」はこの1億円という事実と何か他の事実を比較しているからこそ生まれるメッセージのはずです。昨年の年商との比較かもしれませんし、同じ業界の競合他社との比較かもしれませんが、いずれにせよ比較しなければこのような意味づけはできません。
どちらがどうか、という引き算の重要性
ではここから、比較という行為の本質を数学的な視点から解き明かしていきます。結論から申し上げると、私には次のような価値観があり、比較というものをすべてこのように捉えています。
比較とは、引き算である。
例えば私の年齢はこの原稿を執筆している時点で46歳です。おそらくあなたはいまこの瞬間、ご自分の年齢と比べたのではないでしょうか。そして「自分よりちょっと年上だな」とか「ほぼ同年代なんだ」などと思われたはずです。それはつまりご自分の年齢と比較してその差を明らかにしたことになり、数学的には引き算をしたことに他なりません。結果、あなたは私の年齢に対して意味づけをしたことになります。
先ほどの会社の年商1億円が好調であるというメッセージは、その1億円という数字と、何らかの別の数字を引き算した結果です。これは決して数字が入った話だけに言えることではありません。例えば次のような表現の違いもまた、比較という行為の存在によって生まれるものです。
「この麻婆豆腐、美味しい!」
「この麻婆豆腐、いままで食べたものの中で一番美味しい!」
どちらの方がその「美味しい」の意味が正しく伝わるかは言うまでもないでしょう。このように事実だけを伝えるのではなく、その事実の意味を伝える必要がある場面においては、比較という行為が極めて重要になります。
ではここで私がある公の場で話した「数値化の本質」というテーマのエッセンスをご紹介します。まずは次の文章をざっと流し読みしていただけますでしょうか。
なぜ数値化が難しいかと言うと、数値化には具体的にする覚悟が必要だからです。シンプルな例を申し上げるのであれば、あるビジネスパーソンが「来年の目標は今年以上に頑張ることです」と言ったとします。こちらは数値化されていませんよね。
一方、別のビジネスパーソンが「来年の目標は今年に対してプラス1億円の売り上げを達成することです」と言ったとします。こちらは数値化されていますよね。
この違いは、はっきりさせる、具体的にする覚悟があるかどうかです。なぜなら、「プラス1億円」と具体的にはっきり明言してしまうと、もし1億円を達成できなかったら「君は目標達成できなかったね」と評価されてしまいます。ビジネスパーソンにとってこれは恐怖です。
数字がなくても「引き算」をしている
しかし「とりあえず頑張ります」とだけ言って曖昧な状態にしておけば、未達成という評価をもらうことはおそらくありません。人間ですからこちらのほうを選んでしまう気持ちもよくわかります。
でも、やはりどちらのほうがビジネスパーソンとしてかっこいいか、成果を出す可能性が高いか、という視点で比較をすると、当然ですが数値化するほうということになります。この事例でお伝えしたいのは、やはりビジネスパーソンはどんなメンタリティでいるかがとても重要であり、それで成果は決まってしまうのだということです。
実はこの話の構成こそまさに引き算です。2人のビジネスパーソンを事例に、その差(つまり引き算の結果)が何なのかを表現し、そこに意味づけをしてメッセージにしています。このように私たちは、数字がなくても引き算をすることができ、それは話すという行為においてとても有効なときがあります。本書で提案している「数学的な話し方」の端的な例と言っていいでしょう。
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提供元:一発でわかる「頭のいい人」の特徴的な話し方|東洋経済オンライン