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2023.01.16

元うつ病経験者が幸せそうな人を見て今思うこと|「ヒーローは一握り」サブキャラで楽しく生きる


うつ病を経験することで気づける幸せもある(写真:tokinoun/PIXTA)

うつ病を経験することで気づける幸せもある(写真:tokinoun/PIXTA)

日本人の幸福度が低いことは有名。国連研究機関による2022年版世界幸福度ランキングでも、日本は54位と例年通り低迷しています。『うつ病で20代全部詰んでたボクが回復するまでにやったこと(サンクチュアリ・パブリッシング)』の著者であるデラさんは、うつ病からの回復を目指すためにさまざまなものを手放し、結果的に幸せを感じやすい体質になったそう。デラさんの体験談から、日本社会で生きる私たちの幸福度を上げるヒントを探ります。

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うつ病を経験したら、等身大の幸せに気づけた

ボクは22歳でうつ病を発症し、5回の再発を経て現在9年目。その間、自殺未遂も離婚もしたし、投資詐欺で300万円失いました。今も薬を飲みながら、週2のバイトでなんとか暮らしています。

そう言うと、「不幸なやつだな」と思われるかもしれませんね。確かに、うつ病は想像を絶するつらさ。かからないに越したことはありません。でも、どん底から少しずつ回復に向かっている今のボクは、うつ病にかかる前のボクより実は幸せだったりします。

言い換えると、「幸せを感じられるレベル」が低くなったということ。

ボクはこれまでの人生で、程度の差こそあれいくつもの挫折を経験しています。中学の野球部ではずっとベンチ。好きな子に失恋。大学受験に失敗して希望しない学部に進学。なんとかやる気を取り戻して大学在学中に就職したベンチャー企業で、頑張りすぎてうつ病を発症……。

もともと目立つことが好きで、みんなから「すごい」「カッコいい」と言われるような「主人公」を目指していたボク。でも、この世界に生きる全員がスーパーヒーローや勇者になれるわけではありません。そこに気づかずもがいていたからこそ、等身大の幸せを感じとる心の余裕がなく、「なんでうまくいかないんだろう……」といつも悩んでいたのだと思います。

うつ病になり、人生は一変しました。ずっと横になって過ごし、立って歩けないのでハイハイでトイレへ。日常生活の当たり前のことが当たり前にできず、文字も読めず、頭の中では常に「消えたい」という気持ちがグルグル……。

本当は就職先のベンチャー企業で輝かしい成果をあげて、将来ホリエモンやサイバーエージェントの藤田さんのようになるつもりだったのに。「悔しい」「こんなはずじゃない」と焦ったボクは、少し調子がよくなったときにすぐに週5のバイトを入れてしまい、あっという間に再発。そんなことを繰り返してきました。

自分をいっさい操作しない

自分がこれまで無意識に思っていた「自分はこうあるべきだ」「こうじゃなきゃ幸せになれない」という考えは、闘病生活の中では捨てざるを得ませんでした。だって、仕事やプライベートを充実させるどころか、トイレに行くことさえまともにできないんですから。

でも、そうした「プライド」や「欲」を捨てたことで、結果的に「人生のお荷物」を手放すことができたのです。

自分をがんじがらめにしていたプライドや欲がなくなり、ボクはものすごく自然体になりました。「疲れた」と感じたら、昔のボクは「睡眠時間を削らないとホリエモンになれない」と無理して頑張っていたけれど、今のボクなら気にせず寝ます。食べたいと思ったら食べるし、行きたくないと思ったら行かない。自分をいっさい操作しません。自分に期待もしていません。

そんな生き方を続けていると、人生がとても楽になります。100円のプリンで幸せな気持ちになったり、誰かから「ありがとう」と言われると心の底からほっこりしたり、気の合う人と話す時間が尊かったり……。些細なことに喜びを感じられる「幸せ体質」は、うつ病を経験し、すべてを手放したからこそ手に入れられたものです。

プライドも欲も捨て、自分に期待しない。そんな生き方をするには、「村人A」になったつもりで日々を過ごすのがおすすめ。ドラクエの最初の村に出てくるようなサブキャラです。

主人公の勇者は定員制。誰もがなれるわけではありません。プロ野球選手になれる人、有名な芸能人になれる人、大企業で若くして活躍できる人、いずれもほんの一握りです。だからと言って「勇者になれなかった人」はダメなのでしょうか? いえ、そんなことはありません。村人Aには村人Aの人生があり、楽しく生きる権利があるのです。

勇者に憧れる人は、「目に見えてすごいことをやろう」「誰もが納得するような成果をあげたい」と考えがち。でも本当に大事なのは、目に見えない世間から賞賛されることよりも、自分の身近にいる誰かの助けになること。

SNSで幸せそうな人は「歴史上の人物」だと思え

今のボクは、Twitterのフォロワーさんや、ココナラで受け付けている『うつ病彼氏の恋愛相談』に相談を寄せてくれる人の役に立つことが、自分の幸せになっています。見たことも話したこともない世間の誰かの賞賛を渇望していたころより、やることはずっとシンプル。「○○さんの役に立てている」と素直に思え、心が満たされるようになりました。

一握りしかなれない勇者を目指すのではなく、身近にいる誰かに感謝される村人Aになる。これって十分素晴らしい生き方ではないでしょうか。

SNSでつい他人の「勇者ぶり」を見てしまい、自分と比較して落ち込むこともありますよね。仕事で活躍している人、大勢の友だちに囲まれている人、結婚して幸せそうな人。SNSの中では、みんな華やかな人生を送っているように見えてしまいます。

昔はボクもそうでした。他人と比較しては「うらやましい」「自分なんてダメだ」と落ち込んでいた。でも今は、他人を情報として捉えるようにしています。イメージは、歴史上の人物。

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「私は織田信長と比べてダメだから死んでやる」と思う人はいないですよね。なぜなら、生きている時代も条件も違いすぎて比較しようがないからです。SNSの中の他人だって本当は同じ。生きている時代こそ同じですが、育った環境も性格も何もかも違います。幸せそうに見えて実は深刻な悩みを抱えているかもしれないし、大きな失敗をしているかもしれません。つまり、比較しようがないのです。

他人を情報として捉えると、自分にとって参考になるデータだけを切り抜いてストックしておくことができるようになります。

たとえば、Aさんが結婚したというSNSを見たとき。以前のボクは焦りや嫉妬を感じていましたが、今は……

1. Aさんと自分は比べられない

2. 育った環境も性格も出会った人の数も違う

3. 比べても意味はない

4. Aさんが結婚できた要因はなんだろう

5. それを知ることで自分の結婚できる確率が上がるかも

という流れで考えられるようになりました。

考えても無駄なことは考えず、自分にとってプラスになることだけを考える。こうすることで心の消耗量はガクンと減り、さらに他人の人生からヒントを得られるようになりました。

手の届かない成功や幸福を追い求めるあまり、自分自身をすり減らし、本来感じられるはずの幸せを逃してしまうのはもったいないこと。世間や他人に左右されず、等身大の人生に幸せを感じられる人がもっと増えたらいいなと思います。村人Aとして生きることにしたボクの人生には、小さな幸せがたくさんあふれています。

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提供元:元うつ病経験者が幸せそうな人を見て今思うこと|東洋経済オンライン

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