2023.01.16
食習慣には自信があったつもりでも!女性の脂質異常症と更年期の関係
普段から健康には気を使い、体型や食事にも気を付けてきたつもりなのに、健康診断でコレステロールや中性脂肪が基準値を超え、脂質異常症の診断を受けてしまい「なぜ?」と驚いた経験はありませんか?
もし、あなたが40~50代の女性であれば、女性ホルモンの変化が原因となっている可能性があります。今回は、脂質異常症と女性ホルモンの関係と改善のために必要なポイントをご紹介します。
脂質異常症はなぜ起こり、何が怖いの?
血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の血中濃度の異常があり、動脈硬化の促進と関連しています。
動脈とは、心臓から送り出される血液を全身に運ぶ血管で、酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を持っています。通常は弾力性がありしなやかですが、加齢による老化やさまざまな危険因子によって動脈の血管が硬くなり、弾力性が失われた状態を動脈硬化といいます。この状態になると血栓が生じて血管が詰まりやすくなり、心臓に負担がかかると心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしてしまうので注意が必要です[1,2]。
閉経後の女性は特に注意!
日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えます。閉経後の女性においては動脈硬化に起因する心筋梗塞などの病気が急速に増加すると言われています。
その理由は女性ホルモンのエストロゲンには、肝臓からコレステロールを全身に運ぶたんぱく質の粒であるLDL粒子の合成を抑え、さらに血液中から肝臓へLDL粒子の取り込みを促す働きがあるためなのです。閉経によってエストロゲン分泌が低下すると、これらの働きが失われて血液中のLDL粒子が増えてLDLコレステロール濃度が上昇してしまいます。こうした理由で閉経後の女性は脂質異常症になりやすいのです[3,4]。
女性ホルモンが関係する場合の改善策は特別な方法が必要?
女性ホルモンが関係する脂質異常症であっても、基本は生活習慣の改善が第一選択であり、ほかに疾患があるか状況をみて薬物療法が検討されます。
また、加齢によって代謝が低下していくため、若いころと同じ食生活を続けていると、体重増加や肥満・高血圧など、脂質異常症以外の疾患を発症する原因となり、さらに動脈硬化のリスクを高めてしまう恐れもあります[5,6]。
食習慣と運動習慣を見直そう!
基本は生活習慣の改善が必要とわかったところで、今回は食事と運動において特に押さえておきたい点を説明していきます。
食事のポイント
とにかく食べすぎを防ぐことが重要ですが、特に2つのポイントを押さえましょう。
お肉の脂、乳脂肪(飽和脂肪酸)を控える
LDLコレステロールが高い方は飽和脂肪酸を控えましょう。飽和脂肪酸は肉の脂身・バターやラード・生クリームなどに多く含まれています。パームヤシやカカオの油脂も飽和脂肪酸のため、インスタントラーメン、スナックやチョコレート菓子など加工食品が好きな方は摂りすぎている可能性があります[1]。
糖質の摂りすぎを抑える
中性脂肪が高い方は主食であるごはん・パン・麺類や、甘いお菓子の食べすぎ、ジュース類やお酒の飲みすぎについて見直す必要があります。だからと言って「主食は抜く」など極端にならずに、適量を心掛けましょう[1]。
運動のポイント
HDLコレステロールの低値は中性脂肪の高値と連動することが多く、その原因には運動不足もあります。運動や食事による減量・禁煙によりHDLコレステロールの上昇が見込まれています。
「運動はしければいけないけれど、苦手だ」と思うかもしれませんが、実は激しい運動や筋トレではなく、「話しながら継続して実施できる運動強度」を目安にした運動がおすすめなのです。家族や友人と会話しながらウォーキングやその場で足踏みをするなど、楽しんでできる手軽な運動を継続してみましょう[1,5]。
ホルモン補充療法という選択肢も知っておこう
女性の脂質異常症に対する治療は食事と運動習慣の見直しが基本ではありますが、ホルモン補充療法という選択肢があることをご存じでしょうか?
閉経後の女性に対してエストロゲンを補うホルモン補充療法を行うと、血液中のLDLコレステロール濃度が減少することが知られています。
ホルモン補充療法は更年期障害の治療に用いられているものですが、メリット・デメリットがあり、既往歴などによって適さない人もいるため、まずは病院の先生に相談してみましょう[4]。
より良いライフスタイルをつくるチャンス
女性ホルモンの変化による脂質異常症でも、治療の基本は生活習慣の改善です。健康に気を付けてきたつもりでも、加齢によって今までと同様ではうまくいかなくなってくるところもあるでしょう。それは、今後の健康とライフスタイルを見直すチャンスと思い、前向きな気持ちで改善に取り組んでみてくださいね。
【参考文献】(すべて2022年11月4日閲覧)※外部サイトに遷移します
[5]一般社団法人日本動脈硬化学会:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
【プロフィール】管理栄養士 皆川ゆり
中学1年生でダイエットによる拒食症になったことをきっかけに管理栄養士を志す。30代になるまで摂食障害・ダイエット依存を繰り返し、さまざまな分野から改善を試みて「食と心の両輪で整えること」が近道!という答えにたどり着く。管理栄養士養成校の助手を経て、病院勤務にて栄養サポートチーム、高齢者の食事管理に携わる。現在は短期大学助教として働く傍ら、摂食障害やダイエットに悩む方へ食と心のサポートを行っている。
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記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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