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2022.12.22

認知症の予防に「補聴器が役立つ」医学的な理由|補聴器を嫌がる人は多いが認知症予防になる


デザイン性の優れたものが増えた補聴器(写真:metamorworks/PIXTA)

デザイン性の優れたものが増えた補聴器(写真:metamorworks/PIXTA)

「耳が遠くなってきたな……」と感じはじめても、補聴器をつけるのに抵抗がある人も多いのではないでしょうか。愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也氏は、「難聴は、認知症発症リスクを1.6倍に引き上げます。しかし、補聴器をつければ、日常生活や日常会話でのストレスが軽減されるので、認知症を予防していくことは十分に可能です」と言います。『100歳まで生きるための習慣100選』を上梓した伊賀瀬氏が解説します。

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耳が聞こえにくいことは認知症リスクを高める

もし、少しでも「耳が聞こえにくい」と感じているならば、補聴器の使用を検討してください。それだけで、QOL(生活の質)は確実に上がり、間違いなく健康長寿に寄与します。

イギリスでの調査によると、聴力に何らかの問題を抱える人は、およそ6人に1人います。2015年の日本でのアンケート調査では、難聴だと感じている人は、18歳以上で13%に達していました。

なぜ、難聴が健康長寿を阻害するのかというと、耳が聞こえにくいことは認知症のリスクを高めるからです。イギリスの医学専門誌『Lancet』によると、仮に難聴になる人が完全にいなかったとしたら、認知症になる人は今より9%も減ると試算していました。

同じくイギリスで行われた調査では、50歳以上で中等度の難聴(普通の大きさの会話での聞き間違いや、聞きとりにくさを感じる)がある人の認知症発症リスクは、1.6倍であると発表されました。

どうして難聴は認知症の原因になるのか、2つの理由が示唆されています。

1つ目は、難聴は社会的孤立につながるからです。相手の声が聞き取りづらいと、会話が難しくなり、他人と接するのが億劫になります。私の外来でも、認知症の患者さんの診察時、会話の聞き取りができない人が少なくありません。

社会的に孤立して自分の殻に閉じこもると、外界からの刺激がなくなり、また精神的なストレスを抱えて、認知症になりやすいという指摘があります。

2つ目は、難聴は認知的負荷(脳への負荷)が大きくなるからです。私たちは会話の一部が聞こえなくても、脳の仕組みにより、自動的に可能性の高い言葉を補って理解しています。たとえば、「こ○ばんは」としか聞こえなくても、「ん」という言葉を脳が補うことで言葉を理解しているわけです。

(イラスト:『100歳まで生きるための習慣100選』より)

(イラスト:『100歳まで生きるための習慣100選』より)

しかし、難聴がある場合は、たとえば「こ○○○は」としか聞き取れないと、脳は聞こえる人よりも大きなエネルギーを使わなければ言葉を理解できません。聞き取ろうとするたびに、脳に負担とストレスがかかり、他の重要な働きをする余裕がなくなっていき、結果として全体的な認知機能が衰えてしまう……、と考えられるのです。

次のような難聴のサインを自覚している人、あるいは家族からの指摘がある人は、一度耳鼻咽喉科を受診されることをオススメします。

・人の声がよく聞こえない、よく聞き間違える

・会話中、何と言ったか聞き直すことが増えた

・テレビのボリュームを大きくしてしまう

・電話の音、玄関のチャイムなどになかなか気づかない

・雑音がどこから聞こえてくるのかわからない

・聞くことに集中するのが異常に疲れ、ストレスに感じる

・自分の声が大きいとよく言われる

該当する人は、補聴器の使用について医師に相談してみるべきです。補聴器を嫌がる人は多いのですが、認知症予防になることは間違いありません。

それを実証した大規模な研究もあります。2016年に、アメリカの老年医学雑誌に掲載された研究によると、補聴器を使用した難聴の人のグループは、使用しない難聴の人のグループと比べて、認知症や認知機能が低下するリスクが減少することが明らかになっています。

現在は補聴器の性能も向上し、デザイン性の優れたものが増えています。周囲と円滑にコミュニケーションをとり、脳の老化を予防するために、ぜひ積極的に補聴器を利用してほしいです。

カラオケやおしゃべりは、老化をゆっくりにする

加齢とともに、昔よりも声が出しづらい、声のハリがなくなったと感じることがないでしょうか。これは、声帯と呼吸筋が衰えてくるからです。

声を出すとき、私たちは無意識のうちに声帯を振動させています。しかし、加齢とともに声帯は萎縮していくため、振動が声帯にうまく伝わらず、声量が低下したり、ハリがなくなったりしてしまうのです。

また、声を出すには、息を吸い込んで吐き出す必要があります。これを担っているのが、みぞおちにある横隔膜や、ろっ骨の間にある肋間筋などの「呼吸筋」です。

呼吸筋もその他の筋肉と同様に、歳をとるとしだいに衰えていきます。しかし他の筋肉と同様に、今からでも鍛えれば老化のスピードを遅らせることも可能です。

呼吸筋の衰えは、声が出しづらくなるだけでなく、日々の呼吸を浅くする原因にもなります。肺そのものはふくらんだり、しぼんだりしておらず、呼吸筋の力で膨張・収縮しているのです。つまり、呼吸筋が衰えると、十分な酸素を取り込むことができなくなり、全身の老化を進行させることにつながります。

呼吸筋を鍛えるには、有酸素運動が有効です。ウォーキングやサイクリングを習慣にすれば、自然と呼吸筋は鍛えられます。また、深呼吸もトレーニングになります。深呼吸の効能については、このあと詳しくお伝えしましょう。

最もお手軽なトレーニングは、カラオケや会話などで「声を出す」機会を増やすことです。声を出さないと、声帯や呼吸筋は日に日に老化していきます。独り言でも一人カラオケでもいいので、積極的に声を出すようにしましょう。

吐く時間を長くすると、脈拍や血圧が安定する

イライラしたり、怒ったり、緊張したりすることは、寿命を縮める原因になります。なぜなら、そんなとき人間は、自律神経における交感神経の働きが過剰に活発になっているからです。交感神経の働きが活発になりすぎると、心拍数や血圧が上がり、血管にも大きな負荷がかかるのです。

実は感情は、呼吸である程度コントロールすることが可能です。ネガティブな感情にとらわれそうになったときは、深呼吸をしてみてください。深呼吸によって、体をリラックスモードにする副交感神経の働きを強めることができます。

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深呼吸のコツは、息を「吐く時間を長くする」ことです。1、2、3、4と鼻から息を吸ったら、5、6、7、8、9、10 と口から息を吐きます。このとき、合計10カウントで、吸う息と吐く息の比率は2対3になります。

このように、息を吐く時間を少し長くするのがポイントです。その際、吸うときはお腹がふくらんで、吐くときにはお腹が平らになっていく「腹式呼吸」を意識すると、より効果的です。

吸う時間よりも吐く時間を長くして、呼吸をゆっくりにしていくと、副交感神経が活性化し、心拍数や血圧の上昇を防ぐことができます。昔から「深呼吸をすると心が落ち着く」といわれますが、これは医学的にも証明されているのです。

深呼吸は、たんにネガティブな心が穏やかになるだけではありません。呼吸筋のトレーニングにもなるので一石二鳥です。呼吸筋は体幹を支えるインナーマッスルでもあるので、姿勢や腰痛などの改善にも役立つでしょう。

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提供元:認知症の予防に「補聴器が役立つ」医学的な理由|東洋経済オンライン

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