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2022.12.20

「下半身のストレッチ」で高血圧や冷え性を予防|「体が硬い人」は血管が詰まりやすいという真実


体が硬くなると、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる重大な疾患のリスクが高くなります(写真:apple/PIXTA)

体が硬くなると、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる重大な疾患のリスクが高くなります(写真:apple/PIXTA)

若い頃よりも歳を取ってからのほうが、体が硬くなった。そうした実感を持つ人は多いでしょう。実はそれ、単に「歳だから」と軽く見てはいけない現象なのです。あまり知られていませんが、体が硬くなると、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる重大な疾患のリスクが高くなるのです。では、どうすればいいのか。その意外な対策について、立命館大学スポーツ健康科学部の家光素行教授の著書『体がやわらかくなると血管が強くなる』より、一部抜粋、再編集してお届けします。

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健康的な生活をしても血管は硬くなる

「血管」は、生命維持に欠かせない血液の通り道。

血液は体の細胞や各器官に酸素と栄養を届け、いらなくなった老廃物や二酸化炭素を回収する働きを担っており、それが正常に行われることによって体は健康が保たれています。

その血管に不具合があれば、血液が全身に行き渡らなくなり、命に関わる影響も生じてしまいます。

さて、みなさんは血管が年齢とともに硬くなっていくことをご存じでしょうか。

どんなに健康的な生活をしている人でも、若々しい人でも、誰しもの血管が、20歳くらいを機に徐々に硬くなっていきます。

主に硬くなるのは動脈なので、血管が硬くなるこの現象を「動脈硬化」といいます。これが健康によくないとか、恐ろしいというのはなんとなくご存じの方もいるでしょう。しかし、具体的に何が恐ろしいのかは、ほとんどの人は知りません。

しかも、自分の体の中で今まさに進行していることを認識している人は非常に少ないのです。

「動脈硬化」というと、肥満や長年の不摂生な生活がたたって起こるというイメージを抱く人も多く、「自分は大丈夫」と思っている人もいるようです。

そんな思いを裏切るようですが、動脈硬化は、例外なしに誰しもの血管に起こっているのです。

「人は血管とともに老いる」という有名な言葉もあります。そして、老いていく、つまり「老化」によって起こる現象のひとつが「動脈硬化」なのです。

ただし、動脈硬化を進めるのは年齢だけではありません。偏った食生活や運動不足、喫煙など、血管の負担になる生活をしていると、老化は速まっていき、実年齢よりも10歳も20歳も「血管年齢」が高いということもあるのです。

ところで、「硬くなっていく」「老化していく」といっても、血管は見ることも触れることもできないのですから、ピンとこない人も多いでしょう。

例えば、ゴムホースを想像してみてください。

新品のときはハリと艶と、しなやかさがあるゴムホースも、日が経つにつれ硬くなり、ヒビが入りもろくなります。血管もそれに似ていて、老化すると、硬くなり、もろくなり、しなやかさを失ってしまうのです。「若い血管」は、そのしなやかさのおかげで、血液が流れてきたときに、波を打つように少し広がりをみせます。対して、老いた血管は、カチコチに硬いためほぼ広がらないのです。実はこの「広がらない」ことが、命に関わる重大な病への前段階です。

体が硬くなると動脈硬化が進行する

実は、自分の血管がどれだけ硬くなっているのか、簡単に実感できる方法があります。

あなたにひとつ質問です。あなたは昔に比べて、体が硬くなったという実感がありますか。

「前屈をしても、手の指が足先に届かなくなったなあ」

例えば、こんな実感をお持ちの方は、動脈硬化が進行している可能性が大です。

実は「体の硬さ」と「血管の硬さ」には、深い関わりがあることが、私の研究で明らかになりました。

実験では、60歳以上の中高年層132人を体の硬いグループとやわらかいグループに分けました。次に、それぞれのグループの動脈硬化度を測定すると、体が硬いグループのほうが、動脈硬化度が高いという結果が出たのです。

つまり、体の硬さと動脈硬化は正比例の関係にあることが科学的なデータで裏付けられています。

血管が硬くなると、高血圧や冷え性などの体調不良を誘発します。なかでも最も恐ろしいのは、硬くなっていくことによって起こり得る、血管の「詰まり」や「破裂」です。

そして、硬くなった血管は、傷ついたり、炎症を起こしやすくなるのです。

なぜかと言えば、硬い血管は伸び広がりませんから、心臓が血液を送り出す圧を血管壁がダイレクトに受けます。やわらかいゴムの板ならばボールをぶつけても衝撃を吸収しますが、硬いプラスチック板だったら衝撃によって板にヒビが入りかねません。つまり、硬い管の場合、圧の衝撃によって、なおのこと血管の内側の細胞が傷ついたり、炎症を起こしたりしてしまうのです。

さらに進むと、血管の炎症や傷から悪玉コレステロールが入り込み、プラークと呼ばれる粥状の塊が血管内にできてしまいます。すると血液の通り道が狭くなってしまいます。そして、そのプラークがどんどん膨らんでくると破裂が起こり、その傷をふさぐための血栓(血の塊)ができるのです。それが、狭くなった血管部分に詰まってしまえば、血液の流れを止めてしまいます。これが、脳で起これば脳梗塞、心臓なら心筋梗塞に。こういった重大な疾患へとつながりかねないのです。

このようにプラークができた状態の動脈硬化を「アテローム性動脈硬化」もしくは「粥状動脈硬化」というのですが、世間一般的に「動脈硬化」というと、この状態をイメージする場合もあります。ただ、これは血管が単に硬くなる「動脈硬化」がさらに進んだ状態。先に説明してきたように動脈硬化自体は誰でも起こりますが、できるだけ「アテローム性動脈硬化」へと進行させないことが大事なのです。

体が硬くなると高血圧と冷え性も悪化

血管自体に痛みがないため、気づきづらい——。

それが、動脈硬化の特徴です。

ただ、全身の不調としていくつか現れる症状があります。なかでも、はっきりと変化するものがあるのです。それが、「血圧の値」です。

みなさんも、健康診断などで血圧を測る機会がありますよね。直近の血圧と、例えば5年前や10年前の血圧の数値を比べてみてください。高くなっていませんか?

ぐんと上がっている、あるいはわずかだけど高くなっている。その度合いには個人差がありますが、年齢とともに高くなります。

血圧と血管の硬さは、比例していると思ってください。

血圧が、ぐんと上がっていれば、それなりに血管の硬度も高くなっているということ。血圧の数値の上昇がわずかならば、動脈硬化もさほど進行していないということ。

このように、血圧の数値は、血管の硬さのバロメーターなのです。

血圧が高くなると、当然、動悸、息切れ、むくみといった症状が誘発されます。その背景には、血管の硬さが潜んでいるのです。

また、私たちの研究では「冷え性の人は、血管が硬い」という事実もわかりました。

次のグラフは、冷えと血管の硬さの関係性について、表したものです。

(図表:『体がやわらかくなると血管が強くなる』)

(図表:『体がやわらかくなると血管が強くなる』)

冷えが強い人のほうが、血管が硬いという結果になっています。冷え性というと、「末端の冷え」が圧倒的に多いのですが、これは末端の毛細血管が消失しているからと考えられます。私たちの体には、動脈、静脈以外に「毛細血管」があり、この極細の血管が体の隅々まで血液を運んでいます。しかし、血管が硬くなると末端まで血液が届きません。

そして、血液が届かなくなった箇所の毛細血管というのは「不要」と判断され、消失してしまうのです。この毛細血管を再生させるためには血液を送り込むことが必要です。

ストレッチが血管をやわらかくする

では、すでに「硬くなってしまった血管」はもう、諦めるしかないのでしょうか。

元に戻すことはできないのでしょうか。

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『体がやわらかくなると血管が強くなる』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

いえ、そんなことはありません。

実は、硬くなった血管は、若返らせることができます。

そのために効果的なのが、意外なことに「ストレッチ」です。

世間一般的に、ストレッチといえば、「筋肉の柔軟性を高めること」が効果や目的のひとつです。実際、ストレッチを何度も何度も繰り返し行っていくと、筋肉が伸びやすくなって、前屈したときに床につかなかった手が、つくようにもなっていきます。

「体をやわらかくする手段」としては、とても効果的です。

私たちの研究では、「体の硬い人は、血管も硬い」という事実がわかっています。それであれば、その逆の見方もできるのでは? つまり、「ストレッチで体をやわらかくしていけば、血管もやわらかくなる」。そう考えて実験を行ったところ、その仮説は的中したのです。

まさか、と思いました。いくら逆転の発想とはいえ、体がやわらかくなれば動脈硬化が改善するなんて今まで考えた人はいないと思います。しかし、これは、れっきとしたエビデンスのある事実なのです。

そして、私は、全身に血流が行き渡り、血管がやわらかくなるよう計算されたストレッチを開発しました。

「全身の7割の筋肉が集まる下半身に働きかける」

「大きい筋肉と太い血管を同時に伸ばす」

こうしたポイントを押さえたストレッチです。1日1分から始められます。

動脈硬化の改善といえば、塩分を減らし野菜が多い食事を摂る、日々の生活に運動を取り入れる、なるべくストレスを減らす、酒やたばこを控えるといったことが知られています。

もちろん、そうした心がけは依然として大事なのですが、ハードルが高く、続かない人が多いのも事実です。特に、一定以上の年齢の方にとって、強度のある運動は心身ともに負担が大きいものです。

それに比べると、短時間のストレッチをコツコツ続けるだけで、動脈硬化の改善につながるという事実は、多くの人を日本人の死因上位にくる心疾患や脳血管疾患から救う手助けになる画期的な方法であると、確信しています。

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提供元:「下半身のストレッチ」で高血圧や冷え性を予防|東洋経済オンライン

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