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2022.12.14

鳥谷敬氏「体の使い方で一番重要なのはお尻」|体の筋肉の7割を占めるお尻を鍛えると変わる


阪神タイガースなどで活躍した元プロ野球選手の鳥谷敬氏が40歳まで現役を続けられた背景には、体の使い方や食事方法があったという(撮影:尾形 文繁)

阪神タイガースなどで活躍した元プロ野球選手の鳥谷敬氏が40歳まで現役を続けられた背景には、体の使い方や食事方法があったという(撮影:尾形 文繁)

阪神タイガース、千葉ロッテマリーンズで18年間活躍した元プロ野球選手の鳥谷敬氏。ショートという負担の大きいポジションを40歳まで守り続け、13シーズン連続全試合出場や2千本安打などの大記録を打ち立てた陰には、つねにベストパフォーマンスを発揮するための徹底した「体づくり」があったという。

その鳥谷氏が実践してきたトレーニングや食事管理、メンタルの整え方などを「鳥谷メソッド」として一冊に集約したのが、新刊『疲れない体と不屈のメンタル』。本書でも紹介している効率的な体の使い方やバランスの整え方、平常心を保ち続けるメンタル管理の手法などを聞いた。

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40歳まで現役を続けられた理由

──体づくりや生活習慣、メンタルの整え方に関する著書を出そうと思ったのは。

私自身、体も大きくなく、飛び抜けた才能に恵まれたアスリートではありませんでした。そのような私が18年間プロの世界でやってこられたのは、派手ではないけど走攻守にわたってコンスタントに成績を残し続けたこと。そして、何より「故障しなかった」ことだと思っています。そのために、つねに自分の体と向き合いながらトレーニングや食事、メンタルなどの自己管理を徹底してきた自負があります。

その体づくりのメソッドをわかりやすく伝えることで、一般の方の健康づくりにも役立てていただきたい。その思いから本書を出版するに至りました。

──その「体の使い方」について、本書では特に「お尻」の重要性を強調していますね。

体のある部分を中心に、ムチのように「しなり」を使うと、少ない力でパワーを最大化することができます。その「ムチの中心」に当たるのが「お尻」です。体の筋肉の70%を占めるのがお尻の筋肉。そのお尻を歩く時も走る時も意識することで、余計な力をかけずに体を動かすことができます。疲れにくく、ケガの防止にもつながります。

逆に、前ヒザや四頭筋、ハムストリングスに余計な力が入ると、お尻のムチのしなりをうまく使うことができません。それどころか、筋肉痛や関節痛の原因にもなります。

──すみません、お尻を意識する歩き方というのは具体的に……。

では、歩き方を実践してみますね。

ポイントは、肩から背中、腰、ヒザ、足首までのラインをつねに一直線に保つこと。上半身がお尻の上に乗っている状態で、地面からの反発をお尻で受け止めながら歩きます。体を少し前傾させてみてください。倒れないために前足が自然に出ますよね。足を前に踏み出すのではなく、自然に遅れて足が出るイメージです。

体より足が先に出ると、地面からの反発を前足のヒザで受けてしまう。例えるならS字に曲がった杖をついているようなもので、反発のパワーが逃げてしまうし、ヒザにも負担がかかってしまう。そうならないためにも、足が体を追い越さないよう意識するんです。

(撮影:尾形 文繁)

(撮影:尾形 文繁)

──お尻を意識しながら歩く。競歩選手のようなイメージですね。

まさにそうです。競歩選手は50キロという長い距離を、お尻を使って骨盤を左右に入れ替えながら歩いている。理にかなった歩き方です。

お尻を意識しながら歩くことで、体のバランスの崩れにも気づきやすくなります。歩いている時に「右のお尻に力が入っていないな」と感じたら、それはバランスが崩れているサイン。首を傾けるなど、別の形でバランスを保とうとしている証拠で、首や肩の痛みの原因にもなります。

その時は、右のお尻を特に意識して歩いてみる。そのように日々お尻や骨盤の向きを意識しながら歩いたり走ったりしているうちに、だんだんと体のバランスに敏感になっていきます。「あ、気づいたら1時間も歩いていた。でもまだ余裕があるぞ」と、体の疲れ方も変わってきます。

いろいろ試して自分に合った食事法に

──食事や睡眠など生活習慣を整えるためのメソッドも数多く紹介していますね。

現役の時は、体重は80~82キロ、体脂肪率は10~12%を目標に、さまざまな食事管理の方法を試しました。糖質制限、グルテンフリー、断食……いろいろ試しては数値の変化をチェックすることで、自分の体質に合う食事方法を選んでいました。

例えば、「朝は果物を摂るといい」とよく言いますよね。私も実際に取り入れてみたら、体脂肪率がすぐに2%上がってしまった。「自分の体質では、果糖は吸収がよすぎて太りやすくなるんだ」と気づいて、果物は摂らないようにしました。

──世の中で「これがいい」と言われるものが、必ずしも自分の体質に合っているとはかぎらないんですね。

そうなんです。プロ野球の世界ではピッチャーなら200勝、バッターなら2千本安打が一流選手の証とされますが、200勝した人は全員違う投げ方、2千本安打を打った人は全員違う打ち方をしています。1人ひとりが自分に合ったやり方で成功しているわけです。

食事やトレーニングも同じで、テレビやネットで「これをやれば痩せる」「これさえ食べれば健康に」と紹介していても、自分に何が合うかは1人ひとり違うんです。だからこそ、まずは自分で試してみること。市販の体組成計があれば体重や体脂肪率をチェックできるし、健康診断の血液検査でもわかることはたくさんあります。

──トレーニングでも食事でも、情報を鵜呑みにせず、自分に合ったものを選択することを大切にしてきたんですね。

プロのトレーナーや管理栄養士に一任する方法ももちろんあります。ただ、私の場合はどのメニューも自分に合うか試し、納得した上で取り入れるようにしていました。「あのトレーナーが薦めたトレーニングでケガしてしまった」「あの栄養士の言うとおりに食べていたら太ってしまった」と言い訳したくなかったので。

野球というスポーツの性質上、どんな強打者でも7割は失敗します。私の場合はその7割の失敗を納得して受け入れるために、何でも自分の判断で選択するようにしていました。鼻にデッドボールを受けた時も、医師からは「血が出てしまうので風呂には入らないでください」と言われましたが、「いっそのこと血を出し切ってしまおう」とサウナに入って延々と血を流し続けた。そうしたら腫れが引き、鼻の通りもよくなりました。

「野球選手・鳥谷敬」を別ものと考えている

──メンタルの整え方についてもお聞きします。鳥谷さんは、グラウンドの内外でさまざまなプレッシャーがあったと思いますが、その中で平常心を保ち続けられた秘訣は何ですか。

「野球選手・鳥谷敬」と「普段の鳥谷敬」を、完全に別ものと考え、切り離していました。グラウンドにいるのは「野球選手・鳥谷敬」。でも、家に帰ったら「普段の鳥谷敬」に戻って家族と接する。このように2つの人格を使い分けていました。

鳥谷敬(とりたにたかし)/1981年6月26日生まれ。東京都出身。聖望学園高校、早稲田大学野球部を経て、2003 年ドラフト自由枠で阪神タイガースに入団。2019 年までの16 年間プレーし、NPB 歴代2 位の1939 試合連続出場、13シーズン連続全試合出場、遊撃手として歴代最長の667 試合連続フルイニング出場記録を樹立。ゴールデングラブ賞5 回(遊撃手4 回、三塁手1 回)、ベストナイン6 回を受賞。史上50 人目の公式戦2000 本安打および、史上15 人目の1000 四球を達成。2020 年に千葉ロッテマリーンズに移籍、2021 年シーズンをもって引退。引退後は、野球解説や、社会人野球部の指導を行うなど活動の幅を広げている(撮影:尾形 文繁)

鳥谷敬(とりたにたかし)/1981年6月26日生まれ。東京都出身。聖望学園高校、早稲田大学野球部を経て、2003 年ドラフト自由枠で阪神タイガースに入団。2019 年までの16 年間プレーし、NPB 歴代2 位の1939 試合連続出場、13シーズン連続全試合出場、遊撃手として歴代最長の667 試合連続フルイニング出場記録を樹立。ゴールデングラブ賞5 回(遊撃手4 回、三塁手1 回)、ベストナイン6 回を受賞。史上50 人目の公式戦2000 本安打および、史上15 人目の1000 四球を達成。2020 年に千葉ロッテマリーンズに移籍、2021 年シーズンをもって引退。引退後は、野球解説や、社会人野球部の指導を行うなど活動の幅を広げている(撮影:尾形 文繁)

──野球選手の自分を別人格として切り離す……面白い発想ですね。

キャンプ中もシーズン中も、つねに記者に囲まれて「昨日、何食べましたか?」「髪切りましたか?」などと聞かれる。そこで「そりゃ髪くらい切るだろ」といちいち怒っていたら身が持たないですよね。でも、「野球選手・鳥谷敬」を演じていると思えば「そうなんですよ。昨日切ったんですよ」と冷静に返すことができます。そもそも「野球選手・鳥谷敬」には興味がないから、新聞も読まないし、エゴサーチもしませんでした。

このメンタルコントロールの手法は、引退してからも続けています。引退後はいろいろなテレビに出演させてもらう機会も増えましたが、テレビに出ているのは自分ではない「元プロ野球選手・鳥谷敬」。だから出演した番組は一切観ません。変に観てしまったら「なんであのコメントがカットされたんだろう」などと余計な感情がわいてしまう。それが疲れるし、時間のムダになるので。

──ビジネスパーソンなども、日々さまざまな不満やストレスにさらされています。

現在の私も読者の皆さんに近い生活をしているので、気持ちはよくわかります。今日だってエレベーターの列に並んでいたら、知らないおじさんが列に割り込んで先に乗っちゃった(笑)。その瞬間は腹立つけど、“別バージョンの鳥谷敬”が「まぁ、この人なりの事情があるんだろう」と考えれば受け流せます。

仕事でも嫌なこと、受け入れたくないことも、“仕事バージョンの自分”としていったんは受け入れてみる。そうすれば「本当の自分は受け入れたくないけど、会社員としての自分が、会社のためにあえて受け入れている。これでいいんだ」と思える。両方の人格を行き来しながら上手く感情をコントロールできれば、余計な怒りに時間を奪われずに済みますよ。

──鳥谷さんが実践してきたトレーニング方法、食事管理などのメソッドに共通しているのは「自分を知る」ことの大切さだと思います。

そうですね。それはキャリア形成においても同じことが言えます。プロ野球の世界には、走攻守において私よりはるかに高い能力を持っている人がたくさんいました。その中で選ばれ、試合で使ってもらうためにも、自分の相対的な価値や強みを知ることはとても重要です。

「コンプレックス」は「人との違い」と捉える

──自分の価値や強みに気づかず、悩んでいる人は多いと思います。そこに気づくためのポイントはあるのでしょうか。

自分の経験から言えるのは、「コンプレックスがいちばんの強みになる」ということです。

私の場合、小学生で野球を始めてからずっと、「走る・守る・打つ」のいずれにおいてもチームメイトの誰かに負けていました。すべてが「2番手以下」で突出するスキルがなかった。このことは、野球選手としてコンプレックスに感じていました。

ところが、プロに入っていざ試合に出てみると、途中で代打、代走、守備固めを送られて交代させられることがない。「何でだろう?」と考えたら、「走る・守る・打つ」のすべてがそこそこ計算できるからだった。「突出したスキルがない」というコンプレックスは、「走攻守のすべてができる」という強みでもあると気づいたんです。

その「走攻守のすべてができる」強みを発揮するには、とにかく試合に出続けること。そう考え、よりトレーニングや食事管理を徹底するようになったし、デッドボールを受けようが骨折しようが、とにかくグラウンドに立ち続けた。その結果が、毎年チームメイトの10人前後がユニフォームを脱ぐプロの世界で、40歳まで現役を全うできたことにつながったと思っています。

人と比べて何かが変わっている。みんなは持っているけど自分は持っていない。誰しも、コンプレックスに感じていることはありますよね。でも、その時点で「人との違い」に気づいているということ。あとは考え方次第で強みに転換することができるんです。

「なりたい自分」を明確にし、今できることに集中

──鳥谷さんのように仕事でもプライベートでもパフォーマンスを維持し続けたい、と思っている人は多いと思いますが、何から始めればいいでしょうか。

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1つ挙げるなら「自分はどうなりたいのか」を明確にすることです。

私の場合は、「40歳までスタメンで出場し、ショートを守り続ける」ことが、プロ野球選手としての「なりたい自分」でした。本書で紹介したトレーニングや食事管理、メンタル管理のメソッドは、すべてはその「なりたい自分」を実現するために選択し、継続してきたものです。だから、まずは「自分はどうなりたいのか」が出発点となります。

「どうなりたいか」が明確になると、「そのためには何をしなければならないか」と考えます。試合でエラーしたとしても「次はエラーしたくないな」ではなく「次にエラーしないために、次はこの練習をしよう」と、自分のやるべきことに集中できます。

「人生100年時代」と言っても、先のことはわからない。明日車に轢かれるかもしれませんよね(笑)。だからこそ、常に「なりたい自分」を念頭に置いて、今できることに集中すること。日々のモチベーションを保つ上でも、そのことが大切です。

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提供元:鳥谷敬氏「体の使い方で一番重要なのはお尻」|東洋経済オンライン

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