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2022.11.15

タバコやお酒より「孤独」が体に悪い不都合な真実|孤独感を感じる状況は、心身の多大なストレスに


人とのつながりが少ないことは、タバコやお酒の害を超えるほどのリスクがあるといいます(写真:Luce /PIXTA)

人とのつながりが少ないことは、タバコやお酒の害を超えるほどのリスクがあるといいます(写真:Luce /PIXTA)

季節の変わり目は風邪を引きがち。喉が赤く腫れてしまう人もいるでしょう。

一般に「炎症」と呼ばれるこの症状ですが、実は「急性炎症」のほかに「慢性炎症」が存在します。そして、実はこの慢性炎症はとても厄介なもの。内科医・今井一彰さんは「長く続く炎症は、体のどこでも起こる可能性があり、全身の多くの病気の原因になります」と語ります。

今井さんの新著『名医が教える 炎症ゼロ習慣 ~体内年齢が10倍若返る~』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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「体のコゲ」を増やすストレスは早めに解消

精神的ストレスがさまざまな病気を引き起こすひとつの原因になっていることはよく知られていますが、そこには慢性炎症がかかわっていると考えられるようになっています。

たとえば、仕事による過労や人間関係のトラブルなどが原因となるうつ病は、炎症との関連が注目されています。デンマークの研究では、7万人以上の人たちに高感度CRP検査を行ったところ、社会的ストレスが高く、うつ病と診断されている人のグループは、対照となるグループに比べて、CRPの値が高かったそうです。また、日本の研究では、マウスにストレスを与え続けると、脳内に炎症を引き起こすサイトカインがつくられて炎症が起こり、うつ病に似た症状が起こるという結果が出ています。

これらの結果だけで、うつ病と慢性炎症の関係が証明されたわけではありませんが、ストレスが脳や体に炎症を引き起こすことがわかってきているのです。

ストレスによる体の変化としてよく知られているのが、自律神経との関係です。

ストレスは自律神経のバランスを乱し、これも慢性炎症につながります。過剰なストレスがかかると、交感神経が優位にはたらき、副交感神経との切り替えがうまくいかなくなります。交感神経は血糖値を上昇させるため、糖化が起こりやすくなります。結果、体内のAGEが増えてしまうのです。このほか、「腸はこころの鏡」という言葉もある通り、腸の炎症によって起こる過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎なども、ストレスが原因だと言われています。

以上のように精神的なストレスは、体にさまざまな影響を与えて、それが炎症を引き起こします。そして、ストレスが解消されることなく、どんどん累積していけば、炎症は慢性化してしまいます。

慢性炎症を防ぐには、自分なりにストレスとうまく付き合っていく方法を見つけて、実践していくストレスマネジメントが必要不可欠なのです。

ストレスの度合いを「見える化」する

ストレスマネジメントをするために、まず重要なのが「自分のストレスを自覚する」ことです。「気づかないうちにストレスが限界に達していた」ということがないように、自分にどんなストレスが、どのくらいたまっているのかを把握し、早めに対処しましょう。

ときどき「何も悩みがないから、ストレスなんてない」と言う人がいますが、そんなことはありません。ストレスの原因というと、仕事での失敗、夫婦の不仲など、マイナスな出来事を思い浮かべるかもしれませんが、実は、昇進や結婚といった一般的に喜ばしい出来事も、ストレスになるからです。

これは当然と言えば当然のことで、どんなにうれしい変化であっても、新しい環境に身を置けば、「新しい上司や部下との付き合い」や「パートナーとの生活習慣のちがい」など、そこに適応するためには苦労はつきものです。喜びややりがいの裏側で、気づかないうちにストレスをためこんでしまうこともあります。

そうならないためには、早めにストレスに気づいて対処できるよう、ストレスのサインを見逃さないことが大切です。

ストレスは、「やる気が出ない」「イライラする」といった心の変化だけでなく、「食欲不振や過食などの食欲の異常」「疲れがとれない」「よく眠れない」「動悸がする」など、体の変化としてあらわれることがあります。そういった心身の症状に早めに気づいて、ストレスを自覚することが大切です。

アメリカのブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授たちの研究によると、喫煙が約1.6倍、過度の飲酒が約1.4倍死亡リスクを高めるのに対して、社会的孤立によって死亡リスクは1.9倍高くなるという結果が報告されています。つまり、人とのつながりが少ないことは、タバコやお酒の害を超えるほどのリスクがあるということです。

また、その後の研究では、孤独感やひとり暮らしも、健康のリスクを高めることがわかっています。孤立して、孤独感を感じる状況は、心身のストレスになるということです。

ひとり暮らしの人、リモートワークをしている人、高齢で家にいることが多い人などはとくに、「毎日、人とコミュニケーションをとる」ことを意識しましょう。

友人と食事をしたり、ボランティアや趣味のサークルに参加するなど、できるだけ人と会う機会をつくるのがベストですが、電話で話をするだけでも「癒やしホルモン」と言われるオキシトシンが分泌されることがわかっています。スマホやパソコンのアプリを使ったテレビ通話もよいですね。

どうしても時間がない日や相手と都合が合わないときは、LINEやメールでのやりとりでも、孤独感をやわらげることはできます。新型コロナウイルスの流行をきっかけに人と会う機会が減っているいまだからこそ、意識的に人とやりとりする時間を増やしていきましょう。

「病気の写真」を見ないことも大切

2011年、ブリティッシュコロンビア大学で行われた研究によると、「風邪をひいている人の写真」を見た被験者の血液を調べたところ、炎症性サイトカインの一種インターロイキン6の値が上昇することがわかりました。つまり、「風邪の人の写真を見ただけ」で、体の中に炎症が起こってしまうということです。

人は、「ものまね細胞」「共感細胞」などと言われる神経細胞「ミラーニューロン」を持っており、病気やケガの人を見たとき、つらくなったり、痛みを感じたりします。他人のネガティブな情報を耳にするだけで、まるで自分が経験したかのようなストレスを受けてしまうことがあるのです。

ところが一方、同じ研究で「銃をつきつけられている写真」を見た被験者では、インターロイキン6はほとんど増えなかったそう。この結果から予測できるのは病気などの情報にふれると体内で炎症が起こることがあるけれど、それはかならずしも感情と連動しているわけではないということです。

ネガティブな情報によってつらい、苦しいという気持ちになっても体内に炎症が発生しないこともあれば、反対にそういう気持ちはなくても知らないうちに炎症が起こることもあるのです。自分がどう感じるかにかかわらず、「ネガティブな情報自体」にふれる機会を減らすことを心がけましょう。

一方で、現代人は、スマホやパソコンなどから、四六時中、大量の情報を得ています。さらに「ネガティビティ・バイアス」といって、人はネガティブな情報に注意が向きやすく、記憶に残りやすいという特性があります。大量の情報を浴びていると、自然と悪いニュースばかり目や耳に入ってきてしまうものなのです。

悪い情報だけ見ないようにすることは不可能なので、よい悪いにかかわらず、情報を遮断する時間をつくることを心がけましょう。まずは、デジタル機器を使う時間を減らす工夫を。「通勤時間は読書をする」「寝る2時間前にスマホの電源を切る」など、できるところから始めてみてください。

「私」と言ってはいけない

人はおしゃべりな生き物です。人と会話していないときでも、しゃべっていないようで実は心の中で常に、自分自身に語りかけています。「がんばらなくちゃ」「今日のお昼ごはんはどうしよう?」など、自分に問いかけるその回数は、1日に4万〜7万回と言われています。

このような心の中のひとりごとを「セルフトーク」と言います。そして、この毎日、何万回と繰り返されるセルフトークを上手に利用すると、ストレスを減少することができます。

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その方法はとても簡単。「三人称を使うこと」です。つまり、「私は、がんばらなくちゃいけない」という一人称の自分視点ではなく、「鈴木(自分の名前)、がんばれ!」という第三者の視点から自分に語りかけるようにするとよいのです。

ミシガン大学では、見る人が動揺するような画像を見せたり、過去のいやな出来事を思い出させたりしたうえで、心の中で「私はなぜ動揺しているのだろう?」などと一人称でセルフトークした場合と、「トム(自分の名前)はなぜ動揺しているのだろう?」と三人称でセルフトークした場合とで、脳血流や脳の反応(事象関連電位)を調べた実験を行っています。

その結果、三人称のほうが、脳に負担をかけることなく、感情のコントロールができていることがわかりました。つまり、三人称のほうがストレスを軽くできるということです。

これは「メタ認知」による効果だと考えられます。メタ認知とは、他者の視点で客観的に自分を見つめること。冷静な視点で自分の気持ちや状況を把握・分析することで、感情をうまくコントロールすることができるようになります。

できれば日ごろから、あるいは緊張や不安を感じたとき、落ち込んだときなどにはとくに、ひとりごとに「三人称」を使うことを意識してみましょう。

「○○(自分の名前)は、なぜイライラしているんだろう?」「いま、○○の悩みを解決するにはどうしたらよいだろう?」などと、まるで他人の悩みを考えるかのように、自分に問いかけてみましょう。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

仕事中「なぜか機嫌がいい人」がしていないこと

よく悪口を言う人ほど「不幸になる」科学的根拠

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提供元:タバコやお酒より「孤独」が体に悪い不都合な真実|東洋経済オンライン

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