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2022.11.11

【血糖値】平気で丼物食べる人に起こる悲劇|肥満の人・やせている人、それぞれの対策も伝授


何も気にせず牛丼を食べる人に待ち受ける悲劇とは?(写真: genki/ PIXTA)

何も気にせず牛丼を食べる人に待ち受ける悲劇とは?(写真: genki/ PIXTA)

健康診断などで「血糖値が高め」と医師から言われたら、どうしたらいいのか。糖尿病や予備群では、エビデンスにのっとった高血糖対策がわかってきている。そこから導かれたのは、太っていて血糖値が高い人の対策と、やせていて血糖値が高い人の対策は、実は微妙に異なるということだ。

そこでそれぞれのタイプの対策と、コロナ禍で血糖値がよくなった人・悪くなった人の特徴、そして今年4月に報告されたコーヒーと血糖値の関係について、国立国際医療研究センター病院糖尿病研究センター長の植木浩二郎さんに聞いた。

糖尿病に限らずどの生活習慣病もそうだが、病気を改善させるためのセルフケアの柱となるのは、「食事」と「運動」だ。今回の記事をとくに届けたいのは、糖尿病予備群、あるいは初期の糖尿病の人たち、このままだと糖尿病になるのでは……と危惧している人たちだ。

糖尿病で今のところわかっている発症の主要な原因は、「遺伝的、体質的な素因」と「肥満」の2つ。前者は生まれ持ったものなので変えられないが、後者であれば改善が可能だ。植木さんは「肥満を指摘されていて、かつ血糖値が高い人は、とくにセルフケアが奏功しやすいので、がんばって実践してほしい」とエールを送る。

一方で、やせていて血糖値の高さを指摘されているケースでも、これから紹介する方法で血糖値を下げることは可能だ。

肥満の人は「3kgやせる」を目標に

まずは、肥満でかつ高血糖を指摘されている人の対策から見ていきたい。

肥満(体格指数BMI25~28ぐらいの人、身長170cmなら72~81kgぐらい)があるいわゆるメタボ型の人の最初の目標は、「3kgやせる」だ。ベルトでいうと穴1個分ぐらいのやせ方だ。

でもなぜ3kgなのか、植木さんが言う。「体重が減る場合、内臓脂肪から先に減るので、3kgの減少でも内臓脂肪が出している悪玉のアディポカインが減って血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがよくなり、血糖値が上がりにくくなるのです」。

気になるのは3kgやせるための方法だが、植木さんは「過剰な食事制限は不要」という。代わりに以下の4つのことを守ってほしいと、外来で患者に伝えているそうだ。

1 食事で満腹感を得る
2 間食はしない
3 おかずをしっかり摂る
4 食べる順番にこだわる

まずは、「食事で満腹感を得る」と、「間食はしない」について。

「やせるために無理なダイエットをして、1日に必要なエネルギー量が摂れなくなって筋肉量が減ってしまったり、間食をしてしまっていたりする人が大勢います。まず、普通に社会生活を送っている人であれば、食事の量を減らす必要はありません。その代わり、間食はできる限りやめてください」と植木さんは語る。

とくに菓子やジュースなどの単純糖質を間食で摂ると、糖尿病の素因がある人では急激に血糖値が上昇してしまう。植木さんが外来で診ている患者に詳しく話を聞くと、ほとんどの人が間食をしていると答えるそうだ。

「本人はそのつもりでなくても、甘い缶コーヒーなどの飲み物を飲んだりとか、口寂しくてチョコを食べていたりします。まずはそれをやめてもらいます。どうしても食べたいときは、チーズやナッツ、無糖のヨーグルトなどにするようお願いしています」

アルコールのあとの〆のラーメンや甘いものも同じような理由で避けてほしいという。

おかずから食べるのが効果的

そして、「食べるもの」「食べる順番」に対するこだわりも重要だという。とはいえ、さほど難しいものではない。

そばやうどんといった炭水化物だけの食事はできるだけやめて、定食、あるいは牛丼+サラダといった、肉や野菜などのおかずが多めで主食や麺類が少なめの食事に代えるだけだ。

そのうえで、「食べるときは、まずはおかずから。最後に主食を摂るようにしましょう」と植木さんはアドバイスする。実はこれには理由がある。

おかずから先に食べると、インクレチンという消化管ホルモンが分泌される。このインクレチンは膵臓のβ細胞を刺激して、インスリンの分泌を促す作用がある。しかも血糖値が高くなったときに発動するという特徴がある。

このため、まずはおかずから食べるのが理にかなっているのだ。

「減量で絶対やってはいけないのは、絶食系のダイエットです。食事を抜くことで筋肉が落ちて、かえって血糖値を下げにくくしてしまいます」(植木さん)

この食事改善に組み合わせるのが、運動だ。運動の目的は2つ。1つは「血糖値を上げにくくすること」、もう1つは「筋肉を付けること」だ。減量を目的としないのは、運動だけで減量できるほどのカロリーを消費するのは難しく、体重を落とすのは至難の業だからだ。

血糖値を上げにくくするための最適な運動は、有酸素運動。散歩程度でいいので、30分ほど歩く。お勧めは、食後30分~1時間経ってからの散歩だ。

「有酸素運動をすることで、インスリンとは別の仕組みで血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれます。つまり、インスリンの働きとは関係なく血糖値を下げてくれる、あるいは上げにくくしてくれるのです」(植木さん)

その筋肉を作る運動が筋トレだ。ジムや自宅でスクワットなどの筋トレをしてもいいが、散歩中でもできることがあると植木さん。

「階段を使う、きつめの坂を上るとか、です。その程度でも太ももに負荷がかかるので、筋トレにはなります」

やせている人はどう対策をするべきか

続いて、やせていて高血糖を指摘されている人はどうか。

「肥満の人と同じく、3食きっちり食べたうえで間食をしないということを徹底してほしい。インスリンが出にくい遺伝的素因を持っている人が多いので、食後の運動で血糖を上げないようにすることも効果的です。また、太らないように気をつけることも重要です」

やせていて高血糖を指摘されるのは、男性よりも女性のほうが多いそうだ。

そもそも女性は閉経を迎えるまで、エストロゲンという女性ホルモンの働きで、血糖値が上がりにくいものの、男性より筋肉量が少ないため、ブドウ糖を処理しにくい状態であるといえる。結果的に、食後の高血糖が起こっている場合が案外少なくないという。

「食後の血糖値やインスリンの状態を見るブドウ糖負荷試験をすると、血糖値がけっこう高く出る女性がいます。ご飯を食べないでお菓子ばかり食べている人は、油断していると糖尿病を発症してしまうリスクがあるので、気を付けたほうがいいでしょう」(植木さん)

このタイプの場合、食事以上に大事に考えたいのは運動だ。有酸素運動と筋トレを組み合わせて、ブドウ糖が処理されやすい体を作っていく。運動のやり方は先に紹介した方法でOKだという。

さらに、こんな+αの取り組みも試してみたらどうだろう。1つは犬の散歩、もう1つはコーヒーを飲むこと、だ。

植木さんらはコロナ禍で血糖値がよくなった人・悪くなった人のパターンを調べている。その結果、悪くなった人は通勤がなくなってテレワークとなり、運動量が減った人、反対によくなった人は宴会などの外食が減って、自宅で食事を摂るようになった人だった。興味深いのは、テレワークに変わった人たちのなかでも血糖値がよくなったグループがいたということ。

「それは、犬を飼っている人のグループでした。糖尿病専門医の間ではよく知られた話なのですが、飼っていた犬が死んでしまうと、飼い主の患者さんの血糖値はとたんに高くなります。つまり、犬の散歩はかなり有効ということなんですね」(植木さん)

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犬の散歩だけでなく、コーヒーも血糖値の改善につながる。

国立がん研究センターらが進めている多目的コホート研究(JPHC Study)が、今年4月に発表したのが、「非アルコール飲料の摂取と血糖値の指標との関連について」だ。

糖尿病ではない男性約4000人、女性約6000人を対象として、アンケート調査をしたところ、コーヒーの摂取量が多い人(1日あたり240ml以上摂取)は、飲んでいない人に比べて空腹時血糖値が低いという関連性が明らかになった。

この結果に対し、植木さんはこう見る。「これまでも、コーヒーを飲むと糖尿病の発症を抑えられるという研究結果がいくつも報告されています。カフェインが作用するのではないかという考えもありますが、ウーロン茶や紅茶など、ほかのカフェイン飲料では結果が出ていないので、別の仕組みが働いているのでしょう。今のところそこまではわかっていません」。

とはいえ、コーヒー嫌いでなかったらうまく生活に取り入れたいところだ。

毎日体重計や歩数計をチェック

最後になるが、今回紹介した食事と運動を継続したり、その効果を実感したりするために、ぜひ続けてもらいたいことがあると、植木さんは話す。

「それは“毎日体重計に乗ること”と“歩数計をチェックすること”です。体重は朝起きてトイレに行ったあと、これが1日のうちでいちばん体重が低い。日々の推移を見て増えたらちょっと気を付けようとか、考えるといいと思います。歩数計は今はスマホのアプリについていますので、それを活用しましょう。5000歩ぐらいは毎日歩いてほしいですね」

(取材・文/山内リカ)

この記事の前編:【血糖値】高めの人の体で起こっている怖い事象 ※外部サイトに遷移します

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国立国際医療研究センター病院糖尿病研究センター長
植木 浩二郎

1987年東京大学医学部卒業。ハーバード大学医学部Joslin糖尿病センターに留学。東京大学医学部附属病院特任教授など経て、2016年より現職。インスリンの作用メカニズムやインスリン分泌不全のメカニズムの研究、また糖尿病の大規模臨床研究などに関わる。日本糖尿病学会専門医・研修指導医。

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提供元:【血糖値】平気で丼物食べる人に起こる悲劇|東洋経済オンライン

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