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2022.11.08

【内臓脂肪】専門外来の医師伝授、確実な撃退法|「3~6カ月で3%の体重減」で血圧、尿酸値も安定


新型コロナ重症化にも関与しているという報告もある内臓脂肪について、専門家が解説します(写真:sPhoto/PIXTA)

新型コロナ重症化にも関与しているという報告もある内臓脂肪について、専門家が解説します(写真:sPhoto/PIXTA)

ラーメンやカレー、焼き肉が大好き。運動不足でお腹がぽっこり。当てはまる人は「内臓脂肪」たっぷりの肥満だと思っていいだろう。内臓脂肪は皮下脂肪とは異なり、体に悪さをすることがわかっている。

動脈硬化はもちろん、新型コロナの重症化にまで関与しているという報告もあるが、どれだけ悪いのか、内臓脂肪を減らすための効果的なダイエット法はあるのか。国立病院機構京都医療センター臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部部長の浅原哲子さんに聞いた。

肥満には大きく「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」がある。

皮下脂肪はお腹周りのほか、おしりや太ももの皮膚の下に付く脂肪。内臓脂肪は腸や胃など臓器の周りに付く脂肪だ。いずれも体に余った脂質の蓄積だが、40歳前後を過ぎたあたりから食事など生活習慣の影響で付くのは、大部分が内臓脂肪だ。皮下脂肪とは異なり、内臓脂肪は“たちの悪さ”で知られている。

「内臓脂肪は肝臓を経由して血液にとどまりやすく、『超悪玉LDLコレステロール(small dense LDL)』を増やすという特徴があります。血液中の中性脂肪が多く、かつ、内臓脂肪が多い人は動脈硬化のリスクがとても高いといえます」(浅原さん)

内臓脂肪が多い人は動脈硬化に注意

超悪玉LDLコレステロールとは、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールよりも、さらに小型化したコレステロール。酸化されやすく、小さいので動脈の内皮に入り込み、血栓を作りやすい。つまり、動脈硬化(血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態)を引き起こしやすいコレステロールだ(関連記事「【中性脂肪】コレステロールより悪者の衝撃事実」)。

「【中性脂肪】コレステロールより悪者の衝撃事実」 ※外部サイトに遷移します

脂肪組織はエネルギー源として必要だが、肥満にともなって増えていくと、体に悪い影響をおよぼす。脂肪細胞から分泌されるホルモンを「アディポサイトカイン」と総称するが、このアディポサイトカインには体にいい働きをする善玉アディポサイトカインと、そうではない悪玉アディポサイトカインがある。

善玉アディポサイトカインの代表ともいえるのが、「アディポネクチン」というホルモンだ。「アディポネクチンはエネルギー代謝に大きく関わっている物質。血管を修復する作用や脂肪を燃焼する作用、インスリンの効き方をよくして糖尿病を予防したり、動脈硬化を予防したりする効果なども確認されています」と浅原さん。

ところが脂肪細胞が増えすぎると、アディポネクチンの分泌が抑制され、逆に体に悪さをする悪玉アディポサイトカインが分泌される。

「悪玉アディポサイトカインの代表的なものに、IL(インターロイキン)-6や、TNFαなどの炎症物質があります。これらが出てくると、体が慢性的な炎症状態に陥ります。炎症物質は血管の壁に傷を付け、血栓を作りやすくするので、動脈硬化も促進されます」(浅原さん)

新型コロナと内臓脂肪の関係

最近では、肥満が新型コロナウイルス感染症の重症化にかかわっていることもわかっている。欧米のデータでは肥満(BMI〈Body Mass Index〉25※以上)の重症化リスクは、BMIが25未満の人に比べ、1.8倍という結果が報告されている(出典:Hussain et al.Obes Res Clin Pract.2020)。※BMI(Body Mass Index):体重(kg)÷(身長m)の2乗

ところで、新型コロナウイルス感染症では、細胞からさまざまなサイトカインが分泌される「サイトカインストーム」と呼ばれる現象が知られている。重症化する人の体で起こっているとされる現象で、肥満の人はこのサイトカインストームが起こりやすい。その理由として、悪玉アディポサイトカインによる体の慢性炎症が関係していると推察されている。

聞けば聞くほど怖くなる内臓脂肪。しかし浅原さんは、「幸い内臓脂肪は皮下脂肪に比べ、運動で減りやすいことがわかっています。大事なのは、即、行動を開始すること。該当する人は今日から生活習慣を改善し、減量に取り組みましょう」と前向きだ。

内臓脂肪は会社や自治体で行われる「特定健診(メタボ健診)」でチェックできる。腹囲の測定をしてもらった際、へその高さの腹囲が男性 85cm、女性 90cmを超えていれば内臓脂肪が付いている可能性が高い。また、BMIで算出した体格指数が25以上の場合も肥満ととらえる。BMI35以上の場合は健康上の問題がとても大きく、すぐに治療が必要な高度肥満とされているため、早めに医師に相談したほうがいい。

内臓脂肪型肥満によって起こる健康被害には、2型糖尿病や脂質異常症など生活習慣病のほか、お酒を飲まなくても発症する脂肪肝「非アルコール性脂肪性肝疾患」、月経異常・不妊、睡眠時無呼吸症候群など多くの健康障害が知られている。非アルコール性脂肪性肝疾患は肝がんのリスク因子であり、まだ研究段階ではあるが、大腸がんになりやすいという報告もある。

内臓肥満によって起こりやすい健康被害は以下の通りだ。

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「肥満に加え高血圧、高血糖、血中脂質の異常のうちの2つ以上が加わればメタボリックシンドロームです。4つすべてを持っていたら、何もない人に比べて約30倍も心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を起こしやすい。これは疫学調査にもとづいた、有名な数字です」

と話す浅原さんは、メタボリックシンドローム外来でこうした人たちの生活指導を行い、効果を上げている。実際の指導内容をもとに、読者にもすぐに取り組める生活療法のコツを紹介してもらった。

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「これらをまじめに実行すれば、必ずやせます。高度肥満の患者さんでは、3カ月で10kg減量できることも珍しくありません。やせれば中性脂肪など、各数値が下がり、動脈硬化の改善、心血管病の予防につながります」

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なお、京都医療センターでは、肥満メタボ専門外来チーム(医師・管理栄養士など)で減量に取り組むメタボ患者に指導している。「1食約500kcal、塩分約3g、低脂肪、食物繊維たっぷりのメタボ対策ランチ」を考案し、院内レストランで提供。このレシピを中心に、家庭で作りやすく、肥満が気になる人たちの好きなメニューも入れてまとめたレシピ本『京都医療センター メタボ外来の3カ月で確実!やせるレシピ』『京都医療センター メタボ外来のやせる弁当と作りおき』を出版している。

「多くの方が減量に成功されているので、ぜひ参考にしていただきたいですね」(浅原さん)

(取材・文/狩生聖子)

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国立病院機構京都医療センター臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部部長
名古屋大学環境医学研究所メタボ栄養科学研究部門特任教授
浅原哲子(あさはら・のりこ)医師

京都府生まれ。九州大学医学部卒業。京都大学医学博士。日本肥満学会評議員・専門医、日本肥満症治療学会 理事・評議員。京都医療センターの肥満・メタボリックシンドローム専門外来を20年にわたって担当。著書に『「いただきます」を言わない人が太るワケ』(知的生きかた文庫)『読むだけでやせる女医の言葉』(セブン&アイ出版)『京都医療センター メタボ外来のやせる弁当と作りおき』(セブン&アイ出版)『京都医療センター メタボ外来の3か月で確実!やせるレシピ』(セブン&アイ出版)。

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提供元:【内臓脂肪】専門外来の医師伝授、確実な撃退法|東洋経済オンライン

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