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2022.11.08

日本人が陥る「朝食抜き」「短時間睡眠」のリスク|メタボのリスクは男性で約3割、女性も2割増


朝食抜きの慌ただしい朝は、肥満を招く可能性も(写真:Taki/PIXTA)

朝食抜きの慌ただしい朝は、肥満を招く可能性も(写真:Taki/PIXTA)

2017年、体内時計のメカニズムに対する研究がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。食事も、いつ、食べると体にいいのか、時間によって効果が変わることが解明されてきています。本稿では、『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい(柴田重信著)』より一部抜粋・編集のうえ、時間栄養学の観点から、日本人に多い肥満を招きやすい生活習慣をご紹介します。

『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい(柴田重信著)』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「食欲がわかないから、朝食はとらない」

「一日中、デスクワークなので、朝食をとるとカロリーオーバーになってしまう」

「朝食をとらないほうが、やせられる」

朝食は健康にいいといわれる一方で、「朝食はとらないほうがメリットが多い」という考えも広がっています。

大昔のように朝から食料を求めて狩りに行くわけでもない、移動も車や電車に頼り、自分の足を使うことは少なく、一日中パソコンの前に座っている。そんな現代のライフスタイルにおいては、一日3食しっかり食べましょうという習慣は時代遅れという考え方のようです。

たしかに、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスは重要です。摂取エネルギーのとりすぎは肥満につながるので、食べすぎないことは基本中の基本でしょう。

朝食抜きはダイエットにつながらない

しかし、摂取エネルギーオーバーにならないように朝食を抜いたとしても、一日の食べる量が減るとは限りません。特に夕食は、ゆっくり食事を楽しんだり、人と交流したりする中で、1食で通常の2食分に相当する量を食べていることも少なくないのです。

しかし、夜は脂肪をため込む時間帯なので、そのときに2食分も食事をとってしまえば、当然、太りやすくなります。さらに、夕食を食べすぎたために、翌朝、朝食をとらないと体内時計はリセットされないままになり、エネルギーを燃やす代謝の働きに不具合が生じてきます。

つまり、時間栄養学的にみると、朝食抜きは決してダイエットにはつながらないのです。

朝食は、3食の中でいちばん欠食することの多い食事です。ある人は、「ダイエットのため」意識的に朝食を抜き、ある人は「食欲がわかないから」と成り行き任せ。ぎりぎりまで寝ていて「作る時間も、食べる時間もない」という確信犯もいます。朝食をとっているという人でも、サプリメントを朝食代わりにしているという人もいて、食事の内容にも大きな差があります。

朝食を食べない人の割合は男性で14.3%、女性で10.2%。年代別では、男性は40代が最も高く3人に1人、女性は30代が最も高く5人に1人以上でした。

対象をひとり世帯の人に絞ると、この割合はさらに上がります。40代の男性ではなんと半数、20代女性の3人に1人以上が、朝食をとらないで一日の活動を始めています(「令和元年 国民健康・栄養調査」厚生労働省)。

むしろ肥満になりやすい

朝食抜きの習慣のいちばんの問題は、体内時計がリセットされないということです。時間栄養学の視点では、朝食をしっかりとって体内時計をリセットし、日中の活動に備えて十分にエネルギーを燃やせるよう朝のリズムをつくることが重要です。

朝食をとらないと、肥満やメタボになりやすいことも、国内外の多くの研究で明らかになっています。

ラットの研究で、活動期(ヒトにとっては朝)に食事を与えた場合と、4時間遅らせて「朝食をとらない状態」にした場合とで、体脂肪がどう変化するかを調べたところ、食事量は変えず、食事の時間だけをずらしただけなのに、朝食をとらないラットは体脂肪が増加するという結果になりました。

体内で何が起きているかを調べると、肝臓の末梢時計の時計遺伝子がリズムよく働いていないこと、脂質をエネルギーに変える代謝のリズムが乱れていたことがわかりました。

また、体温の上昇にも異変がみられました。通常、体温は活動期(ヒトでは朝)に高くなり、休息期(夜間)に低くなりますが、朝食をとらないラットはなかなか体温が上がらず、まだ食べている最中にもかかわらず体温が下がってしまうなど、体温が高い時間が短くなってしまいました。体温が低いままだと、脂肪を燃やす酵素も十分に働かなくなります。こうした体の中の反応が、体脂肪を増加させた要因ではないかと推測されています。

次に紹介する2021年発表の日本人を対象にした大規模な研究でも、朝食をとらないと肥満やメタボになりやすいことを裏づける結果となりました。

この研究は、35〜69歳の日本人(男性1万4907人、女性1万4873人)を対象に行われました。朝食を週6日以上食べている人を「朝食をいつもとっている人」、6日未満の人を「朝食をとっていない人」と厳しい基準で分け、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常などのリスクがあるかどうかを調べました。

解析の結果、朝食をとっていない人はいつもとっている人に対して、男性で1.26倍メタボのリスクが高いことがわかったのです。一般に、メタボのリスクは男性では30代から高まりますが、女性は女性ホルモンの分泌が低下する50代以降に高くなります。そのため、この研究でも、朝食抜きによる女性のメタボのリスクは男性ほどはっきりとは認められませんでした。

しかし、「肥満」(BMIが25以上)のリスクの上がり方は、朝食をとっていない男性で1.15倍、女性で1.18倍でした。

この研究では、同時に、睡眠時間についても調べています。睡眠時間が6〜8時間の人を基準として、6時間未満の「短時間睡眠」の人と、8時間以上の「長時間睡眠」の人のメタボのリスクを調べました。すると、6時間以下の短時間睡眠の人たちがメタボになるリスクは、標準的な睡眠時間の人に比べて男性で1.28倍高くなっていました。

「朝食をとらないこと」と「短時間睡眠」は、まったく異なる習慣のように思われがちですが、体内時計の乱れという点でつながっています。

朝食をとらない人は、まず体内時計がリセットされません。そのため、栄養からエネルギーを作り出す代謝の働きがうまく動き出さず、肥満になりやすくなります。

また、朝食をとらないと、食べる時間も、活動する時間も、眠りにつく時間も、夜遅い時間帯へとずれていきます。その結果、学校や仕事の始業時間に合わせて無理やり起きなければならず、睡眠時間も足りなくなります。

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『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい (講談社+α新書)』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

睡眠不足もまた、肥満やメタボ、うつ病などのリスクを高めることが知られています。そして、朝、快調に起きられず、朝食をとる時間もなくなり、体内時計はリセットされないまま、夜型化が進んでいくのです。

このように「朝食欠食」が「睡眠不足」を招き、「睡眠不足」が「朝食欠食」の原因をつくるというように、どちらも関連し合いながら悪循環をくり返すうちに、肥満やメタボ、うつ病というありがたくない"お荷物”を背負わされてしまうのです。

この研究では、朝食欠食と短時間睡眠それぞれが、メタボのリスクを高めることを示しています。ここが重要で、朝食欠食と短時間睡眠が2つ合わさると、男性では1.35倍に、女性で1・17倍に高まりました。

実際に、朝食欠食の人は短時間睡眠になりやすく、短時間睡眠の人は朝食を欠食しやすいため、それだけメタボには注意しなければなりません。

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提供元:日本人が陥る「朝食抜き」「短時間睡眠」のリスク|東洋経済オンライン

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