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2022.11.04

仕事の休憩に効くのは「おやつ」と「雑談」どっち?|科学的に正しい「脳パフォーマンス」の高め方


効率よく仕事をするためには、効果的な休憩をとることが大切です(写真:EKAKI/PIXTA)

効率よく仕事をするためには、効果的な休憩をとることが大切です(写真:EKAKI/PIXTA)

とかく時間と仕事に追われがちな現代人。でも本当に良い仕事をしたいならホワイトスペース、つまり戦略的に休むことが必要だ。そうすることで脳の洞察力や創造力を高めることができる。そして「休み方」によっても、その効果は変わってくる。ジュリエット・ファント著『WHITE SPACE ホワイトスペース 仕事も人生もうまくいく空白時間術』から、休息がもたらす脳への影響と、正しい脳の小休止のさせ方について紹介する。

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認知機能を回復させる唯一の方法

私たちは、かつてないほど時間に追われて息苦しさを覚えている。世界中どこもかしこも、労働者は疲れきって青息吐息になっている。

そこで私が見つけた解決策が、「ホワイトスペース」と呼ばれるもの。1日の中に考える(そしてひと息つき、内省し、計画し、創造する)ための自由な時間を設ける、というアイデアだ。

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グラフィックデザインの世界で、ホワイトスペースはページの空白部分を意味する。わが社では「予定が入っていない時間」と定義している。長いか短いか、計画的にとったか偶然空いたかはともかく、それはスケジュール外のオープンな時間であり、日々の活動を「戦略的に休む」ことで手に入る。

脳はホワイトスペースを愛している。これは、科学が証明している。小休止はパフォーマンスの向上に役立つ。

サンフランシスコを拠点とする、受賞歴のある神経学者アダム・ガザレイは、仕事中にときどき休憩を挟むことが、なぜ必要で効果的なのかを私に教えてくれた。人間は、脳に休息のための時間を与えないまま、複雑で集中力を要する作業をしていると、認知の疲労を起こす。脳の限られたリソースが使い果たされ、パフォーマンスが低下してしまうのだ。

研究により、前頭葉(人間の最高レベルの認知機能と実行機能をつかさどる部位)は、とりわけ認知の疲労に弱いことがわかっている。前頭葉の実行機能がなければ、人は複雑なことを効果的、また効率的に計画したり、実際に行ったりすることができない。

ガザレイ博士が説いたように、認知能力の低下から真に回復するための現在知られている唯一の方法は、「脳を休ませること」だと、研究も示している。

根本的な問題解決などに欠かせない要素は、現在の思考と過去の経験を結びつける能力だが、これには前頭葉の実行領域と脳の記憶領域のやりとりが必要になる。オープンな思考の時間がないと、こうした領域同士のやりとりは、精神疲労や認知の過負荷によって、ともすれば損なわれてしまう。

だが、日常のルーティンにホワイトスペースを組み込むと、前頭葉の再編成と再活性化が促され、ニューラル処理の速度が増して生産性や創造性がアップする。安静時に脳のMRIスキャンを撮ると、脳内のデフォルト・モード・ネットワーク(脳の活動の統括センター)が、驚くほど複雑に活動しているのが見てとれるはずだ。この活動は、洞察力、つまり物事の本質を見抜く力や、記憶力や創造力と関係している。

したがって、脳が疲れているときに戦略的小休止をとれば、新鮮な視野を得るのに必要な記憶の関連づけをするチャンスを、過負荷状態の脳に与えられる。これが創造性を高めてくれる。マラソンのきつい下り坂で給水したときのように、視界が一気にクリアになるのだ。

注意を逸らして脳をリセットする

ところで、なぜ小休止は、働く人間のスタミナやパフォーマンスにこれほど重要なのだろう? 

それを説明しているのが、科学誌『コグニション』に発表された研究である。この研究では、被験者を4つのグループに分け、それぞれ同じ作業を50分間してもらい、各グループの集中力がどのくらい持つかを調べた。ただし、1つのグループだけは、途中で作業の手を止めて、ほかのことに注意を二度そらし、また作業に戻るよう指示された。

50分間の作業中、4つのグループのうち3つは、明らかに集中力が低下した。ところが残りの1つ、つまり注意を二度そらしたグループは、時間がたっても集中力が落ちなかった。

ここからわかるのは、作業の合間に少し頭を休ませるだけで、長時間集中する力を劇的に高められるということだ。たとえそれが「何もしない」休みではなくても、「目的の活性化と非活性化を行うことで集中力は保てる」と、研究を主導したアレハンドロ・レラスは私に語った。要は、目の前の作業から離れると脳がリセットされるので、より良い状態で作業に戻れるわけだ。

実社会の例も見てみよう。コーネル大学の調査によると、ウォール街の企業のコンピューター利用者が勤務中に休息や短い休憩をとったところ、作業の精度が13%上がったという。カーネギーメロン大学の研究者は、作業をわずか3秒から30秒中断するだけで、労働者の集中力が続くようになり、やる気もアップするというデータを得た。

また南アフリカとオランダの研究者による共同研究で、「積極的な活力マネジメント」(自分の気力体力を観察して休息のために小休止をとること)を実践している人々は、実践していない人々よりも創造力に富むことがわかった。

読書やSNS、おやつは脳の休息にならない

どんな休憩をとることが大事かもわかっている。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とジョージ・メイソン大学の研究者は、会社員およそ100人の休憩のとり方を観察した。

研究の参加者は平日の10日間、日記をつけ、ランチ休憩後に仕事のプレッシャーをどのくらい感じたか、休憩中に何をしたか、1日の終わりにどの程度疲れていたかを記録した。その後、研究者が各人の休憩時の活動を「リラックス」(ぼんやりする、ストレッチをする)、「栄養摂取」(間食をとる)、「社交」(同僚と雑談する)、「認知活動」(読書、メールチェック、SNS)に振り分けた。

すると実際に効果があったのは、「リラックス」と「社交」だけであることが判明した。仕事の休憩中に認知に関わる活動をすると、休憩で取り戻そうとしている脳の処理能力の多くに負担をかけるので、疲れはむしろ増してしまう。

神経科学から創造性の認知的処理に至るまで幅広い分野のさまざまな研究が、小休止は仕事の質を高める、と証明している。休憩をとるとパフォーマンスが上がるなら、過度の時間的プレッシャーがその逆の働きをすることもすぐに想像がつくだろう。

ハーバード・ビジネススクールのテリーザ・アマバイル教授は、「人間はプレッシャーがかかった状況で創造的になれる」という誤解が世間にあることに気づいた。せっぱ詰まると急に仕事がはかどるからだろうが、現実には低いか中くらいの時間的プレッシャーの中で、脳に内省のためのスペースがあるほうが成果はあがる。

これをアマバイル教授は、「人は概して“仕事をする時間が足りない”と感じており、創造的で革新的な仕事をしたいときにはなおさらそう感じている」とまとめている。

(訳:三輪美矢子)

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提供元:仕事の休憩に効くのは「おやつ」と「雑談」どっち?|東洋経済オンライン

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