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2022.09.02

専門医が指摘「危険ないびき」「ただのいびき」の差|無呼吸を防いでよい睡眠も得られる「CPAP治療」


ぐっすり眠れていない、昼間眠い…もしかしたらいびきが原因かも?(写真:mits/PIXTA)

ぐっすり眠れていない、昼間眠い…もしかしたらいびきが原因かも?(写真:mits/PIXTA)

寝不足の原因は、もしかしたら「鼻」の不調のせいかもしれません――。
いびきに悩む人は実に4000万人いるといわれています。いびきや鼻づまり、アレルギー性鼻炎などで「鼻呼吸」がスムーズにできないことで、睡眠負債が蓄積され、さまざま不調や病気になることも。

睡眠医学の専門医である高島雅之氏の著書『専門医が教える鼻と睡眠の深い関係 鼻スッキリで夜ぐっすり』から一部抜粋して紹介します。

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「高いびき」を辞書でひくと、「大きないびきをかいてよく眠ること」と、よい意味のように書かれています。ですから、いびきというのは安心して寝ている、緊張していない状態ともいえ、日本人にとって概念的にはそんな悪いイメージではないように思えます。

しかし最近は、「睡眠時無呼吸症候群」がよく知られるようになったこともあり、いびきは一般的によくない印象になってきました。

いびきのメカニズム

そもそも、いびきはどうやって起こるのでしょうか。

人間ののどを「窓」にたとえてみると、いびきをかかずに寝ているときは、窓を全開に開けて、風通しのよい状態だといえます。空気が十分に取り込まれ、入れ替えがスムーズにできている状態です。

一方、窓がなかば閉められ、空気の入れ替えがされにくくなると、ピューピューと隙間風が吹くような状態になります。その風の影響で、のどちんこなどが振動し音を発生します。これがいびきです。

そして窓を閉めきった状態、これはみなさん想像がつくことでしょう。そうです。これが無呼吸の状態です。いびきのその先に無呼吸が存在する可能性があります。大きないびきをかいているとき、それは無呼吸かもしれないという、アラーム(警報)のようなものかもしれません。

一般的に、いびきや無呼吸を悪くする要素として、疲労と寝不足、お酒の3つがあげられます。お酒に関しては飲酒量や飲む時間、休肝日をもうけるなど飲酒習慣の見直しによって改善される見込みが十分あります。疲れや寝不足によって生じる場合も、年度末や、明日までに仕上げなければならない仕事があるという場合など、一過性のものであれば、さほど気にする必要はないでしょう。

しかし、日常的にいびきをかいているとしたら要注意です。夜中に無呼吸になっていないか疑ってみてください。いずれにしても、いびきは熟睡、つまり質の良い睡眠を妨げてしまいます。

「無呼吸」の定義は、寝ているときに10秒以上の気流停止(息が止まってしまう状態)があることです。舌やのどちんこには、支えとなる骨や軟骨がありませんから、仰向けに寝ると、のどがベチャッと潰れてしまう。これが無呼吸という状態です。

無呼吸が1時間に5回以上出現すると「睡眠時無呼吸」とされます。この「1時間に何回認めたか」の指標を、「無呼吸低呼吸指数」(Apnea HypopneaIndex:AHI)と呼びます。最近では、睡眠中の呼吸やそれに伴う換気が不十分な状態そのものを全般的に「睡眠呼吸障害」(SleepDisorderedBreathing:SDB)と呼ぶようになっています。「睡眠時無呼吸症候群」は、英語表記でSAS(SleepApneaSyndromeの略)と呼ばれます。

人の呼吸は「鼻呼吸」が本来の姿

のどには、噛んだ食べ物を飲み込んで食道に送り込む機能と、呼吸によって空気を取り込む2つの機能があります。噛んだ食べ物を飲み込むとき、のどの筋肉がつぶれて、食べ物を食道に引っ張り込むような動きになっています。

したがって、この機能において、のどは柔らかい構造であることが必要です。一方、空気の通り道はトンネルみたいにつぶれない状態が保たれていないといけません。そのためには硬い構造が必要です。

のどは咽頭開大筋といういくつかの筋肉のグループによって、普段はしっかりと開いた状態が保たれているのですが、疲れてくると筋肉はゆるんだ状態になります。夕方になると、会社から帰宅する電車の中で、全身の力が抜けてしまったように顔を上に向けて寝ているような人をよく目にしませんか? 筋肉が弛緩するとああいう寝方になってしまいます(反対に、朝だと下向きに寝ている人が多いように思います)。

こうして筋肉が緩むことによって、のどが潰れた状態になってしまい、先ほど窓を例に述べた、「窓の閉まった」状態になるわけです。もし、のどが息をするためだけの硬い構造だったら無呼吸は起こらないでしょう。しかしこれだと、食べ物を食道へ送り込むことができません。

また、人は構造上、口呼吸になると舌の付け根が狭くなるため、いびきをかきやすくなり、その結果、眠りの質が悪くなってしまいます。口呼吸によりのどが乾燥し、風邪をひきやすくなったり、喘息の人は発作を引き起こしやすくなったりします。呼吸のためにのどが開きやすい状態を保つには、鼻呼吸はとても重要なのです。

CPAPとは、Continuous Positive Airway Pressure(持続的陽圧呼吸)の頭文字をとったもので、睡眠時無呼吸症候群の治療法の1つです。日本では「鼻マスク治療」などと言われることも多く、nCPAP(nはネーザル=鼻)と表記されることもあります。

鼻にマスクをつけて圧力で風を送り、つぶれてしまうのどを押し広げることで、無呼吸状態を防ぎ、よい睡眠がとれるようにする治療です。人間の体が呼吸をするとき、息を吸うと肺が膨らみ、胸が広がります。それにより、空気が鼻からのどを通って肺へと送り込まれます。楽器のアコーディオンのようなイメージですね。

しかし無呼吸のときは、のどはつぶれてしまっているため空気を取り込めません。これを防ぐため、鼻マスクから圧力をかけて空気を押し込み、息の通り道であるのどを広げようとするのがCPAPの原理です。

東京ドームを思い浮かべてください。東京ドームに行ったことのある方は、出口から外に出るとき、ブワッと風の圧力で押し出されることをご存じだと思います。なぜあのようになるかというと、ドーム内の気圧は外部より0.3%ほど高くなっているためです。

東京ドームの屋根は約400トンもの重量があるそうで、圧をかけて屋根を膨らませ持ち上げているそうです。よって圧力がかかっていないとき、屋根はしぼんでいます。

CPAPもこの原理と似ていて、鼻から風を送り、圧をかけることで、のどというつぶれやすい部位を広げているイメージです。なお、ここでCPAPにより送り込まれるのはあくまで風、空気であって、酸素ではありません。単に圧力をかけているのです。

CPAPを使う場合、鼻呼吸ができていることが前提で、鼻がつまるとCPAPは使えません。したがって鼻づまりのため鼻呼吸ができず、CPAPを付けて苦しい場合は、まずは鼻呼吸のための治療をしなければなりません。

よく質問を受けるのですが、あくまでもCPAPは症状を改善するものであって、その後CPAPがなくても無呼吸が治ってしまうというものではありません。眼鏡と同様、矯正装置です。したがって、使用を中断してしまうと、元に戻ってしまいます。

ただし、肥満の程度が強い方は、ダイエットをすることで、軽減や改善が見込めることもあります。

CPAPで眠りの質はよくなる

鼻呼吸ができるようになると無呼吸が改善するのではないか、という研究は、20年くらい前に盛んに行われていましたが、望ましい結果は出ませんでした。鼻呼吸ができるようになったからといって無呼吸が治るわけではないというのが、現在1つの結論となっています。

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ただし、眠りの質は明らかによくなります。CPAP治療をする人に鼻治療を施すのは、あくまでも鼻呼吸によりCPAPが使用できるようにするためのサポートなのです。

CPAP治療をされている60代の女性は、CPAPを使いはじめて無呼吸や血液中の酸素飽和度の低下が改善された結果、「これまではイヤな夢や、恐い夢をみることが多かったけれど、CPAPをはじめてから悪い夢がほとんどなくなり、いい夢を見るようになりました。この間はお花畑にいる夢を見ちゃいました!」と、夢の中身が良くなったことを大変喜んでいました。

悪い眠りは、ストレスホルモンの分泌も高めることになり、悪夢につながることもあるんですね。夢のようなホントの話です。

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提供元:専門医が指摘「危険ないびき」「ただのいびき」の差|東洋経済オンライン

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