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2022.08.30

「70代で元気な人・介護必要な人」50代の過ごし方|70代を健やかに過ごすために必要なのは「貯筋」


50代後半~60代は、元気な70代へ向けて大切な時期と言えます(写真:つむぎ/PIXTA)

50代後半~60代は、元気な70代へ向けて大切な時期と言えます(写真:つむぎ/PIXTA)

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人生100年時代と言われる中、寝たきりや要介護を遠ざけるには、運動機能をいかに長持ちさせるかが大切になります。そこでカギとなるのが、「貯筋」。「平成28年 国民生活基礎調査」によると骨折・転倒は要介護4、5での介護が必要になった主な原因の第3位。筋力の低下によって転倒・骨折の危険が高くなります。

50代後半~60代は、元気な70代へとソフトランディングしていくための大切な時期。『70歳すぎても歩ける体になる!』の著者でもある慈恵医大リハビリテーション科の安保雅博氏と中山恭秀氏が、健康格差がますます広がっていく時代だからこそ、覚えておきたい重要な心がけを紹介します。

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70代が「最後の活動期」

ここ10年、年金は下がり、人口も出生率も下がり続け、先行きの不安は増すばかりです。そんな中、平均寿命は20年以上にわたって延び続けています。2001年に男性=78.07歳、女性=84.93歳だった日本人の平均寿命は、2016年には男性=80.98歳、女性=87.14歳と、その間まさに右肩上がりで延びています。

ただ、平均寿命が延びたからといって、単純に喜ぶわけにはいきません。寿命関連ではもう1つ、「健康寿命」という指標もあり、こちらにも気を配らなくてはいけないからです。

平均寿命とは「何歳まで生きられるか」という指標です。一方、健康寿命は「何歳まで健康でいられるか」の指標です。その健康寿命を2016年で見てみると、男性=72.14歳、女性=74.79歳となっています。平均寿命との差は、男性=8.84歳、女性=12.35歳となります。この年月は「日常の生活において、誰かの手によって介護や看護などの世話になる期間」を意味します。

平均寿命は男女ともに80歳を超えていますが、誰の世話にもならずにいられるのはどちらも70代前半までなのです。

できるなら最後の最後まで誰の世話にもならずに日常生活を送りたい、というのが誰にとっても切なる思いでしょう。どうすれば、それが可能になるのでしょうか。

厚生労働省が公表している「平成28年 国民生活基礎調査の概況」には、「要介護度別にみた介護が必要となった主な原因」が記されています。

それによると、要支援の主な原因は関節疾患であり、要介護の主な原因は認知症や脳卒中です。要するに、最後までピンピン楽しみ、ゴールするためには、関節を痛めず、骨折や転倒などをしないようにし、脳卒中や認知症にならないようにすればいいのです。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

筋力は40代から衰えていく

関節疾患や脳卒中、認知症などにならないためには、ストレッチングや筋力トレーニングをしてしっかり体を動かすことが重要になります。筋は20代までに爆発的に成長します。この成長期ともいうべき時期は、さまざまな臓器が成熟していきますが、筋も同様で、使えば使うほど筋量は増えていきます。

しかし、40代になるともうあまり成長しません。次第に代謝、つまり血液の循環は減り、骨も痩やせていくからです。たとえ若いときにつけた筋力が高くても、その後、運動習慣がなくなれば筋力は次第に低下します。関節や体をあまり使わない状態が続くと、筋は次第に痩せていきます。

若いときにつけた筋を“貯筋”などといいますが、「いつまでもあると思うな、親と貯筋」というわけです。逆に、若いときにあまり運動をしていなくても、ある程度年を取ってから運動をしたらそのぶん筋力は強くなります。がんばりようによっては、いつからでも貯筋は可能なのです。

筋線維は大きく分けて「速筋」と「遅筋」の2つがあります。

速筋はすばやく収縮できる筋肉です。短距離走やウエイトリフティングなど瞬間的に強い力が求められる動きで使われます。瞬発力はありますが、持久力には乏しく疲労しやすい筋肉です。一方、遅筋は、ゆっくり収縮する筋肉です。速筋とは真逆で、長距離走など持久力が求められる場面で使われる、疲労しにくい筋肉です。当然、両者の鍛え方は違ってきます。速筋は大きな負荷を短時間(少ない回数)かけること、遅筋は小さな負荷を長時間(継続して)かけることが鍛えるポイントになります。

瞬発力の速筋、持久力の遅筋。もちろんどちらも必要な線維筋ですが、若い頃はウエイトトレーニングをしてマッチョな体をつくるなど、速筋に目が行きがちかもしれません。

若い頃は“貯筋”も豊富にあるので、速筋を多く鍛えてもべつだん問題は起こりませんが、年を重ねるとそうはいきません。バランスを考慮せずに昔と同じ気持ちでウエイトトレーニングなどをすると、“貯筋”が減っている身では、たちまちひざや腰を痛めてしまうことになりかねません。

中年以降、大事になるのは、加齢に伴って低下していく筋力をうまく調整することです。それには遅筋を鍛えるほうにシフトすることがおすすめです。では、どんな運動がおすすめなのか説明していきましょう。

安定した歩行に必要な筋肉は

○疲れにくい体になる「大殿筋」トレ

安定した歩行に大きく関与しているのが、足関節と股関節であることが最近の研究でわかってきました。特に体の重心に近い股関節をしっかり固定できるかどうかが、年齢を問わず安定性に大きな影響を与えているといえます。

股関節を鍛えるトレーニングとして代表格ともいうべきものが足を持ち上げる運動です。この股関節を後ろに反らす作用を持つのがお尻の筋肉である大殿筋です。うつ伏せで寝転がって足を持ち上げると、お尻の筋肉が隆起するのがわかるはずです。歩きでは、体を前に移動させるという大きな役割もあります。体を前方に運んでくれる筋肉なので、歩きがラクになる部位です。

鍛えるには、うつ伏せになり、ひざを片方ずつ伸ばしたままで足を持ち上げてください。このとき、ひざをしっかり伸ばすことが重要です。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

〇背中の丸まりをリセットする「背筋」トレ

「背中の丸まり」には、実は種類があります。

・前方向に倒れるように背骨が丸くなる
・肩が内側に入って丸くなる

という2つです。

肩が丸くなるというのは猫背や円背の方に共通していて、背中が丸く見える大きな要因のひとつです。加齢に伴って肩甲骨が外側に移動することで丸くなります。改善するには、胸を張ることです。まず両手で〝前へならえ〟のポーズをしましょう。そこから胸がしっかり張れるくらい後ろに反らしていきます。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

背筋を効率よく鍛えるには

年を重ねると、多くの方は背筋をピンと保つことが難しくなります。これは、頭の重さが年を重ねてもほとんど変わらないのに対して、背筋をはじめとする筋は徐々に弱くなっていくことが原因です。要するに、背筋で頭を支えられなくなっていくのです。

しかし、背筋を鍛えることで今よりも強くすることは可能です。子どもの頃に「腹臥上体反らし」として測定したのを覚えていますか。うつ伏せになり、手を体の後ろで組んで上体を持ち上げることで背筋群は鍛えられます。足は押さえてもらってもそのままでも結構です。床からあごが浮くくらいでも大丈夫です。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

〇歩行困難になりたくないなら「大腿四頭筋」トレ

太ももの前面に位置する大腿四頭筋は、下肢の筋肉の代表格といってもいいでしょう。ひざ関節の伸展機能をつかさどる筋肉で、立ち上がりや歩行速度に関わっています。イスに座ってひざを伸ばします。伸ばしたところで数秒キープして、ゆっくりと下ろしてください。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

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〇ひざ関節への負担が軽減される「下腿三頭筋」トレ

ふくらはぎの筋肉は、腓腹筋とヒラメ筋という2つで構成されています。2つを合わせて下腿三頭筋といいます。主に足首の関節を曲げる動作をつかさどっています。下腿三頭筋は、「第二の心臓」とも呼ばれています。下半身の血液を重力に逆らって心臓に送り返す際に、下腿三頭筋がポンプのように収縮する役割を担っています。

壁に手をついて、爪先立ちになることで強化できます。トレーニングでは両足同時に行ってかまいません。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

腹筋には骨盤を安定させる働きが

〇腰の凝りや痛みを解決! 「腹筋」トレ

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腹筋とは、腹部にある「腹直筋」を指します。背筋と腹筋とで体の前後の安定性を保っています。腹筋には骨盤を安定させる働きがあるので、弱まると骨盤が後ろに倒れて腰痛を引き起こす可能性があります。

腹筋の強化で最も簡単なのが、仰向けで寝た姿勢からひざを立てておへそを覗き込むように首を持ち上げる運動です。可能なら上体を持ち上げてください。このとき、ひざは立てたままにします。ひざを伸ばして行うと腰に負担がかかるため、必ずひざを立てて行ってください。

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

(出所:『70歳すぎても歩ける体になる!』)

これだけでも、しない人と比べて確実に筋力を高く維持することができます。ほんの軽い気持ちでいいので、始めてみましょう。

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提供元:「70代で元気な人・介護必要な人」50代の過ごし方|東洋経済オンライン

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