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2022.08.18

リーダーに必要なのは「指示ではなく依頼」の意味|自分が上でなければならないという考えはダメ


リーダーがまずすること。メンバーの選び方について考えてみます(写真:kikuo/PIXTA)

リーダーがまずすること。メンバーの選び方について考えてみます(写真:kikuo/PIXTA)

組織で何年か働いていると、いつの間にか仕事を教える立場になり、会社によっては役職がつきます。「私はそんな器じゃないんです」「人を取りまとめるのが苦手で……リーダーとか役職が嫌なんです」。

キャリア・人材コンサルタントをしていると、そんなコメントをよく耳にします。コロナ禍でリモートワークになると、チーム社員全体の仕事も見えづらく、「どうやってリーダーシップを発揮したらいいのかわからない」「何か言ったらハラスメントになってしまうのでは……」といった悩みもあるようです。

これらはすべて発想の転換で解決できる、一種の誤解にもとづくコメントだと私は思います。なぜならリーダーとは役割にすぎず、また、リーダーシップはどんな仕事にも求められるものですから。本来もっとパフォーマンスを出せる人や組織なのに、誤解のためにもったいない状況におちいっている可能性があります。

カリスマ性も威厳も才能もいらない、普通の方がリーダーになるためのテクニックをお伝えします(『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』より抜粋し、3回にわたって紹介。今回は1回目です)。

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「自分がトップ」のチームにしない

チームで仕事をする意味、それは「1人ではできない大きな仕事を実現するため」「個人がもっていない能力を全体で補うため」であるはずです。

でも現実には、自分が「リーダー」としてチームをつくり、運営するとき、つい「上司」として行動してしまっていないでしょうか? いいかえるなら、自分がすべてにおいて上でなければならないという責任感で、メンバーを選び、接してしまっていないでしょうか?

チームで目標を達成しようとするとき、これは逆効果です。

チームというのは、みんなで大きな仕事をしたり、自分のもっていない能力を補うために組むものですから、むしろ自分よりも能力の高い人を集め、それぞれをプロフェッショナルとして尊重して接したほうがうまくいきます。昨今の働き方や新技術の観点では、若ければ若いほど新しいものを持ち込んでくれます。

ここでのコミュニケーションは、「指示・命令」ではなく、「期待・依頼」にもとづくもの、つまり、上から目線で知ったかぶりをするのではなく、教えを請うべきだということです。

ただ本音をいえば、これって勇気が要りますよね。メンバーの目にはリーダーとして不甲斐なく映り、その心が離れていくのではないか……と。

でも実際には、すべての領域で自分が「トップ」であることを優先した結果、チームの目標が達成できないほうが、人心は離れていきます。いかに自分より優れた人に働きやすい環境を提供するかが、リーダーの仕事であるとすらいえるのです。

19世紀から20世紀を生き、「鉄鋼王」と称されたアメリカのアンドリュー・カーネギーの墓碑銘はあまりにも有名です。

「己の周りに、己より優れし人物を集めたる者、ここに眠る」

迷ったらこの言葉を思い出してください 。

異分子を入れ、多様性を意識

チーム内で反対意見が出ると、それは「議論」につながります。この議論とは、何のためにするものでしょうか。

議論とは、新しい価値をつくるためにするものです。今、自分が「正」しいと考える意見を正とすると、それに「反」する、または異なる意見が必ずあります。

この「正」と「反」を比べ、合意された「結論」を探すことが「議論」であり、この議論という作業で導き出された結論は、もとの「正」意見や「反」意見のいいところを取り込んで、より高いレベルになっています。 チームを組んで仕事をする醍醐味はここにあります。

チームで仕事をするとき、もし、合意された結論に対して、新たな意見が出てきたら、さらに高いレベルに届かせるための議論がはじまります。

こうして、新しい価値をチームでつくり出していくのです。この価値をつくり出すきっかけが、メンバーによる「反対意見」の表明です。このやりとりを感情を交えず「冷静に」できる人が、価値を発揮するのです。

価値をつくる議論を生み出すためには、異なる意見をもつメンバー(異分子)をチームに迎え入れることが必要です。新しい価値を生み出すリーダーは、常に「異見」をもつ人を歓迎し、招き入れ、それを評価する人です。

チームメンバーの構成について、もう1つ気をつけたいことがあります。
それは、「性別」「ライフステージ」「キャリア」「専門性」「趣味」「出身地」など、プロフィールの多様性を考える、ということです。

「ダイバーシティ」という表現で市民権を得た概念ですが、これは過去に誤解のあった「マイノリティを差別しない」という消極的な意図ではありません。

ここでの多様性とはより積極的に、多様な背景をもつメンバーをチームに招くということです。これがかなうと、チームメンバーのもつ個々の能力を最大限に引き出したり、異なるものの見方や能力が混ざり合い、チームとしての付加価値が向上します。

「異業種からの転職組」「自分とは異なる専門性をもった人とのコラボレーション」「趣味や習慣、宗教観の違い」も、新たな考え方やものの見方の選択肢を増やします。

スポーツ経験者は、仕事をスポーツにたとえてわかりやすく解説しますが、これなどもよいです。新しい刺激はメンバーの視野を広げ、プロフェッショナルとしての成長をもたらします。

ライフステージ、キャリアの違いも重要です。刻々と変わっていく要素――たとえば、子育て世代や介護世代のメンバーがいたら、子どもの送り迎えの時間を融通する、介護休暇の取得をみんなでカバーするなど――をチームメンバーが経験できると、それはチーム全体の財産になります。

こうした経験のないメンバーは、自分がいずれ経験するときの予備知識になりますし、すでに経験ずみのメンバーは、その経験を活かし、直接・間接にメンバーを支えられます。

もし万が一、あなたのチームがいまだに「男性」「新卒生え抜き」「フルタイム正社員」、もっといえば「日本国籍」「日本語」のメンバーのみで固められたチームであるなら、むしろそれを弱みだとすら思うべきかもしれません。

ただし理念だけは共有している必要があります。 これが共有されていないと、多様性は裏目に出るリスクがあります。

相談できる人を1人は入れる

私自身も常に心がけているのが、チームには必ず相談相手になってくれる人に入ってもらうということです。

この人は、必ずしも現時点で能力の高い人でなくてもかまいません。ただし、リーダーであるあなたが信頼でき、口の堅い人である必要はあります。

こうした人に入ってもらうメリットは、状況をわかった上で、客観的なアドバイスを淡々としてもらえることです(本人はアドバイスをしているというよりは、感想を述べている程度の認識かもしれません)。

あなたからの相談は、たとえば「さっきのAさんへの私の指示の出し方、横で見ていてどうでしたか?」や、「Bさんのあの言い方には、どんな気持ちが込められていると思われますか?」と、リーダーシップの悩みが中心になります。

「あの言い方はまずかったかもしれません。Aさん、しばらく仕事が手についていませんでしたよ」とか、「Bさんは、最近Cさんとの折り合いが悪いんですよ、実は」という反応を得られれば、その後のAさんやBさんとのコミュニケーションに活かせます。

経験的には、同期や、年齢・社歴が先輩にあたる人に入ってもらうと、こうした関係を築きやすくなります。

一方、自分より若い人やキャリアの浅い人でも、過去にハードな意思決定をした経験のある人や、相応の想像力のある人であれば、相談者になりえます。こうした人は将来組織を引っ張る素養のある人(あなたの後継者候補)でもありますから、意図的に相談をもちかけるのがおすすめです。

相談できる人をチームに入れることは、自身のリーダーシップの確立を早く、また確実なものにし、判断や指示・依頼の独りよがりを防ぐとともに、後継者育成にもつながります。

現在チームがすでにあり、そのチームで目標に向かって仕事をしている人も多いでしょう。実はこういうときもリーダーは、今のチームを入れ替えることを考え、一時的な不協和音はあっても定期的なシャッフルを、常に考えているべきです。

長く同じ人とチームを組むと、そのメンバー同士ではやりやすい一方、仕事のマンネリ化、馴れ合い、(マイナスの意味での) 阿吽の呼吸が生まれるリスクが発生します。

新しい刺激がなく、狭い範囲で部分最適を追求し、第三者からはわからない仕事のやり方を続けると、新しい発想が生まれる機会が減ります。また、新たな競合の出現などの変化に耐えられないどころか、その変化にさえ気づけず、新しい価値を生み出すことができなくなってしまいます。

それを回避するため、1つのやり方に固執せず、視野を広げるために、プロジェクト型に近いチーム運営をするとよい、というのがここでのポイントです。

人を入れ替え組織を活性化

チームというのは常に新しいメンバーを迎えることで、意図的に組織に刺激を与えることが大切です。

『知的創造企業』で有名な野中郁次郎氏は、「ゆらぎ」を意図的に与えることで、組織は活性化すると言っていますが、私は人の入れ替えも1つの大きな「ゆらぎ」になると思っています。

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メンバーが入れ替わった直後は新しい刺激があると同時に、一時的にやりにくさや不便なことも発生します。しかし、これは前進するための摩擦です。

リーダーはこれを意図して、あえてチームメンバーを入れ替えるのです。
長くチームを組んできて、今や片腕ともいえるメンバーも、定期的に自分のもとから旅に出すようにしてください。これはそれぞれにとって、いい成長の機会になります。

そしてのちに、別の場所で異なる経験を積んだ者同士が再会し、新たなレベルでチームを組むと、お互いの成長を感じることができるはずです。それは実に新鮮な刺激となり、次の新しい価値を生むスタート地点になるのです。

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提供元:リーダーに必要なのは「指示ではなく依頼」の意味|東洋経済オンライン

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