2022.08.11
健康になる「体の整え方、鍛え方」情報のウラ事情|ベテラン編集者が教える「筋トレ∔αの真実」
「健康書」プロ編集者の会メンバーが読み込んだ「健康書」の一部(写真:主婦と生活社)
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医療に詳しい編集者やライター、医療ジャーナリストたちの「よりよい健康情報を提供する場を増やしたい」という志のもと、所属する組織の壁を超えて結成されたユニット、「健康書」プロ編集者の会。メンバーのひとりは指摘する。「忙しい日々を過ごす中高年の皆さんが、あふれる健康情報のなかで“本当に自分に役立つ情報”を選び出すのは、かなり難しい」。そこで、会が著した新刊『「ベストセラー健康書」100冊を読んでわかった 健康法の真実』から、前回は「食事術」の最適解について紹介したが、2回目の今回は「体の整え方、鍛え方」の最適解について、一部引用・再編集してお届けする。
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健康情報のウラ側に隠されている「真実」
書店で「健康書」のコーナーに立ち寄ったときに最近よく目につくのは、体のある部位をほぐしたり、伸ばしたり、押したりすることで、痛みや不調の解消にとどまらず、病気の予防・改善までが簡単にできるとアピールしている本。手軽さが非常に魅力的です。
でも悩ましいのは、ある専門家の健康書では「ふくらはぎをもみなさい」と書いてあったかと思うと、別の専門家の健康書では「肩甲骨をほぐしなさい」と書いてあったりすること。両方の本を目にした読者からしたら、何をするのが本当によいのか、よくわからなくなってきます。
たしかに、専門家の間でも見解・主張の異なることは数多くあります。でも、職業柄、数多くの健康書の制作に関わり、その表も裏も知る私たち「健康書」の編集者だからこそ、気づいていることが実はあります。それは、主張が異なる健康書でも“共通して注意喚起している重要なこと”があったり、アプローチ(実践ハウツー)が違う健康書でも“狙っている健康上の効果・目的は同じなので、その違いはそれほど重要ではない”という場合があったりすることです。
1冊の健康書を読むだけではなかなか気づけない「真実」があります。まっとうな専門家の意見はもちろん価値のあるものですが、ひとりの専門家の意見だけを盲信するのは危険です。1500冊以上の健康書づくりに関わってきた編集者チームのメンバーの1人として、最近とくに感じている重要なことは、1冊の健康書を安易に信じ込んではいけない、多くの意見に耳を傾けたほうがよい、ということです。
「××をほぐせば健康になれる本」の正しい読み方
ふくらはぎだったり、ひざ裏だったり、肩甲骨だったり……いろいろな部位に注目した本が出版されていますが、健康書100冊を精査してわかったことは、痛いところ、不快な部位が「ほぐすべき部位」とは限らず、意外な部位へのアプローチが、不調の改善や健康につながることがあるという驚きの事実です。
私たちは痛みや不調があると、ついその部分が悪いのだと思い込みがちです。でも、一部の専門家が注目する部位は私たちがふだん気にしないような部位で、加えて、その注目部位は専門家によってさまざま。そうなると、いったいどの部位をほぐせばよいのだろうかと悩んでしまうところですが、健康書100冊をさらに精査してわかったことは、それら専門家の最終目標の多くは、体のある部位をほぐすことで本来の「正しい姿勢」と「動き」を取り戻すことにあった、ということでした。
つまり、どの部位をほぐすかはあくまでも手段であり、「正しい姿勢」と「動き」を取り戻すことの実現が最重要ということ。となると、どの部位をほぐすのが正しいのだろうかと迷って何もしないくらいなら、まずは自分でいくつかの部位を専門家の言うとおりにほぐしてみて、気持ちのよいもの、自分の体調が改善されていくものを探していくのが、とりあえずの「最適解」といえそうです。
「体のほぐし方」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1) 痛いところ、不快な部位が「ほぐすべき部位」とは限らない。
(2) 意外な部位をほぐす目的は、実は「姿勢を正す」ことによる呼吸と血流の改善。幅広い健康効果をもたらす。
(3) 日頃から、自分の体を観察する習慣を身につけることが大切。不調の始まりは、体のどこか一部のわずかな変化や異変がもとになっている場合がある。
ここ最近、筋肉のもつ役割や機能が見直され、それほどハードではない筋トレでもすぐれた健康効果が得られることがわかってきました。アスリートや美魔女を目指しているわけではない、普通の中高年向けの筋トレ本が増えているのです。
健康書100冊を精査してわかったことは、「正しい姿勢」を支える筋肉を鍛えること、「見えない筋肉」を鍛えることが、健康維持のためにとても重要だということです。
「2人に1人はがんになる時代」の筋トレ
でも、さまざまな筋トレメニューがあるなかで、何をすればいいのでしょうか。実は、東大名誉教授の「筋肉博士」石井直方さんも、医師で作家の鎌田實さんも、自律神経研究の第一人者の小林弘幸さんも、自らの実生活で「ゆっくりと行うスクワット」を実践していることを告白し、スクワット指南の健康書を出しています。
ベストセラー健康書を出している著者たちがそろってスクワットをすすめているので、筋トレを始めるとしたら、まずはスクワットがいいのかも。
なお、60代に入ってから二度のがんを克服した「筋肉博士」の石井直方さんによれば、スロースクワットは、ロコモ・フレイル予防だけでなく、がん対策にもなるとのこと。これは、スロースクワットをすればがんにならずに済むということではなく、がんになってもさまざまな治療に耐えられる“がんと闘える体”になれるということだそう。
ならないための努力をいくらしても、がんになってしまう場合があることを考えると、“がんと闘える体”になっておくという視点は、「2人に1人はがんになる」といわれる今の時代にとても有効かもしれません。
スクワットは、やり方(フォーム)しだいで体にかかる負荷がかなり変わる。実践する場合には、自分に合ったスクワット健康本を選んで、やり方をしっかりチェックすることがおすすめ(画像:主婦と生活社)
「筋トレ」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1) 老後の家計が安心できるほどのお金を貯める「貯金」は大変だが、将来の寝たきりを防ぐ筋肉を貯める「貯筋」はカンタン。
(2) 「正しい姿勢」を支える筋肉を鍛えることが、健康維持にはとても重要。
(3) 超高齢社会が進む現代では、「見せる筋肉」を鍛えるよりも、「見えない筋肉」を鍛えるほうがおすすめ。
(4) さまざまな筋トレメニューからひとつだけ選ぶとしたら、おすすめはゆっくりの「スクワット」。がん対策としても有効といえそう。
健康のために何か運動しなければと思い立ったとき、ウォーキングを選ぶ人は多いと思います。
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ただ、健康書100冊を精査してわかったことは、健康効果が出にくい歩き方をしている人が多くいそうなこと。自分にとって「ちょっとキツい」と感じる程度の負荷をかけた歩き方をしなければ、たとえ1万歩を歩こうとも、健康効果は期待できないと多くの専門家が口をそろえて忠告しています。
また、「正しい姿勢」で歩かないと体に負担となる歩き方になってしまい、効果が出ないだけでなく、ケガの原因となってしまうこともあると指摘する専門家もいます。体のほぐし方や筋トレだけでなく、ウォーキングにおいても「正しい姿勢」が重要ワードになっていました。
なお、単調で面白みの少ないウォーキングは、飽きが来て続かないことも多いので、マンネリ化を防ぐ工夫も重要。ウォーキングの代わりになる運動としては、「スロージョギング」や「踏み台昇降」をおすすめする健康書が多いようです。
(画像:主婦と生活社)
「ウォーキング」について、ベストセラー健康書100冊を精査してわかったこと
(1) 期待する健康効果は、「ただ歩く」だけでは得られない。「早歩き」などを取り入れて、運動強度を少し上げることが必要。
(2) 歩数ではなく、「速度」と「姿勢」を重視する。
(3) 負荷がかかる「早歩き」が続けられそうもない人は、逆に小刻みに走る「スロージョギング」なら続けられる場合も。
(4) 雨風の強い日は、ウォーキングの代わりに「踏み台昇降」がおすすめ。
「正しい姿勢」と「激しすぎない負荷」
100冊の健康書から「体の整え方、鍛え方」の部分を精査してわかることは、「正しい姿勢」の重要性と、激しすぎない(でもちょっとキツい)負荷を体に与えること。
ラクをしすぎず、かといって激しいトレーニングにはせず、自分にとってちょうどよい加減の運動を見いだすことが、あなたの健康を守る「最適解」になるでしょう。
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提供元:健康になる「体の整え方、鍛え方」情報のウラ事情|東洋経済オンライン