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2022.08.04

東大教授が教える「頭のいい人」が実践する会話術|コミュニケーションで誤解が生まれる原因を分析


コミュニケーションは5パターンに分類できます(写真:Eri/PIXTA)

コミュニケーションは5パターンに分類できます(写真:Eri/PIXTA)

「頭のいい人」はどのようなコミュニケーションの方法を身につけているのか――。『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』を上梓した東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏が、人間関係で悩まないための「思考習慣」について紹介します。

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コミュニケーションのパターンは「5通り」

「自分はどうして人に理解してもらえないのか?」

「言いたいことがなぜ上手く伝わらないのだろう?」

こうした人間関係の悩みの多くは、「誤解」が原因です。誤解は、コミュニケーションの流れにおける渋滞のようなもの。一度、誤解によって人間関係がこじれると、そう簡単には修復できません。誤解を解こうとしても思うようにいかず、むしろ誤解が誤解を招いて、関係性がさらに悪化することも……。

では、誤解されやすい人や誤解しやすい人は、何が問題なのでしょうか? 反対に、誤解されても気にせず放置できる人は、何が違うのでしょう?

こうしたことを長年、私自身も悩んできて、誤解の原因を分析し、予防方法について考えたことがあります。人間関係で悩んだときは、「大局力」や「場合分け力」で冷静に状況を把握して、適切な判断をしなければいけません。

そういうときのために、私が科学的に分析した“誤解のカラクリ”と対処法をお話ししましょう。

まずコミュニケーションは、相手に伝えたいメッセージがある「真意」を持った話し手と、そのメッセージを「解釈」する聞き手の二者間でのやりとりが基本になります。やりとりのプロセスを理解するために、次の記号を用います。

話し手の「真意」……I(Intention =意図)

話し手が発した「メッセージ」……M(Message =伝達情報)

聞き手の「解釈」……V(View =見解)

この3つの記号で場合分けすると、話し手の発したメッセージは、真意と同じ場合の「I = M」と、真意とは異なる場合、あるいはねじ曲がって伝わってしまう場合の「I ≠ M」の2パターンがあります。

次に、この2つのパターンを聞き手が解釈する際も、真意をそのまま受け取る場合の「M = V」と、そのままの意味で受け取らない場合の「M ≠ V」の2通りあります。さらに、結果として聞き手の解釈(V)が相手の真意(I)通りだった場合は「V = I」、違った場合は「V ≠ I」となります。

完全にわかりあっている2人なら、「I = M」「M = V」となり、三段論法から誤解や疑いがまったくない「I = V」の理想的な関係になります。

しかし実際は、お互い何らかの駆け引きをしている残念な現実があります。そこで、話し手がどのようにメッセージを発し、聞き手がどのように受け取るか、数学的に組み合わせたところ、次の5通りしかないことがわかったのです。

コミュニケーションの5パターン

(1)I=M=V=I

話し手は素直にメッセージを発し、聞き手も素直に受け取る。両者の気持ちが一致して完全に理解している

(2)I=M≠V≠I

話し手は素直にメッセージを発するが、聞き手が話し手のメッセージを誤解している、もしくは疑っている

(3)I≠M=V≠I

話し手は聞き手を騙したり誘導したりしている。聞き手は話し手のメッセージを素直に受け取っている

(4)I≠M≠V=I

話し手は真意と違うメッセージを発し、聞き手も話し手のメッセージを疑って真意を見抜いている

(5)I≠M≠V≠I

話し手は真意とは違うメッセージを発し、聞き手も違う意味で解釈している。間違ったメッセージのやりとりによる完全なる誤解

この中で、①は相互理解が成り立っているため問題はありません。反対に、⑤は詐欺か酔っぱらい同士の会話にありがちで、お互い理解し合うことを目的としていないため、解決する必要はないでしょう。「疑い力」によってコミュニケーションが上手くいく可能性が高まるのは、②、③、④の3つです。

あなたが人間関係で悩んだとき、どのパターンに当てはまるか照らし合わせてみると、コミュニケーションにつまずいている原因がわかるかもしれません。

また普段から、人と話をしているとき、5つのうちのどのパターンになりそうか意識していると、「疑い力」が高まり誤解を減らすことができます。

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

「いろいろ記号が出てきて、ややこしいな……」と思った方もいるかもしれませんが、安心してください。ここからはイラストも入れて、コミュニケーションのパターン(2)、(3)、(4)について1つずつわかりやすく説明していきます。実際に、どんな場面で「疑い力」を発揮すれば誤解を減らせるのか、いくつか例をあげましょう。

コミュニケーションの誤解を減らす

(2)「I=M≠V≠I」

話し手は素直にメッセージを発するが、聞き手がメッセージを誤解している、もしくは疑っている場合

話し手は真意(I)を素直に伝えているけれど、聞き手がそのままの意味で解釈していません。そのため誤解が生じているので、話し手が「疑い力」で聞き手の解釈の間違いを確認して、本人にフィードバックすればいいのです。よくあるのは、教育者が生徒の誤解に気づき、間違いを指摘するケース。あるいは、上司が部下の違いを指摘して正しいやり方を教えて直すケースです。

この場合、聞き手が意図的に曲がった解釈をしているわけではないため、話し手が間違いを指摘するときはミスや誤解をとがめて非難してはいけません。一方、聞き手が先入観を持っていたり、感情的になっていたりして、話し手の真意(I)がストレートに伝わらないこともあります。

こういう場合は、聞き手の先入観を取っ払うか、冷静に聞く耳を持ってくれるときに、改めて話をする必要があります。私は、誤解を回避するための手段として、第三者に相談することもよくあります。

たとえば、会食などで自分と考え方が違う初対面の人と話をする必要がある場合、その人と仲のいい第三者を探してどういう人物なのかを聞いてみるのです。すると、自分の偏ったイメージや先入観が軽減され、少しでも相手の人となりがわかると自分の気持ちに余裕が生まれるので、本人に会ったときも冷静なスタンスで話をすることができます。

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

(3)「I≠M=V≠I」

話し手は聞き手を騙したり誘導したりしている。聞き手は話し手のメッセージを素直に受け取っている場合

ビジネスの場面でよく起こりやすいのは、本音と建前を使い分ける「I≠M」のケースです。たとえば、苦手意識がある人や信頼できない人から、仕事の協力を求められた場合、本心では「この人と一緒に仕事をしたくないな」と思っていても、建前上、忙しさや他のことを理由に断る場合などが、これに当てはまります。

ところが断られた相手が「M=V」だと思い込んでいると、相手の言葉をそのまま素直に信じ、「落ち着いた頃にまた声をかけてみよう」とポジティブに解釈してしまいます。こういうタイプにはなかなか建前が通じないため、また懲りずにお願いしてやんわりと断られて……を繰り返す可能性もあります。一方、「疑い力」が強い人は、「M=V」より「M≠V」の可能性を考えます。

そして、「忙しいのはみんな同じ。断られるということは嫌がられてるのかもしれない」と相手の本音を読み取り、潔く引き下がることができるのです。それが、次のパターンです。

言葉の裏に隠された本音を察する

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

(4)「I≠M≠V=I」

話し手は真意と違うメッセージを発し、聞き手はメッセージを疑って真意を見抜いている場合

ここでは、上方落語から生まれた有名な逸話「京都のぶぶ漬け(お茶漬け)」の例を紹介しましょう。京都の人は、早く帰ってほしい客人に対し、「何もお構いするものはありません」という意味(真意)を含めて、「ぶぶ漬けはいかがどすか?」とすすめます。何も知らない人は、「ありがとうございます」と素直に答えてしまいます。

記事画像

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「疑い力」がある人は、「お客にお茶漬けをすすめるなんておかしいな」「早く帰ってほしいんだな」と、言われたことをそのまま受け取らず、「疑い力」を使って相手の真意を読み取ります。

そして、「お茶漬けは結構です。そろそろ失礼します」などと丁寧に断って、そそくさと帰るのです。つまり、話し手と聞き手の曲がったメッセージのやりとりだけで、お互いの真意が理解できるというわけです。

このように、言葉の裏に隠された本音を察することで、コミュニケーションが上手く成立することは、日常の場面でもありませんか? 人間には、「本音」と「建前」があります。相手が発した言葉が「本音」なのか「建前」なのか、いったん「疑い力」を使って考え、冷静に判断してから返事をすることは、コミュニケーションの基本なのです。

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

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提供元:東大教授が教える「頭のいい人」が実践する会話術|東洋経済オンライン

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