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2022.07.27

医師が警告!急増「社会的時差ボケ」の根深い問題|健診でも放置されるケースがほとんどな理由


リモートワークによって増えた「社会的時差ボケ」はかなり大きな問題だ(写真:maruco/Getty Images Plus)

リモートワークによって増えた「社会的時差ボケ」はかなり大きな問題だ(写真:maruco/Getty Images Plus)

コロナ禍をきっかけにリモートワークが増えるなか、心身のストレスにより調子を崩す人が増え続けています。最先端の医学研究を行いつつ、そこで得た知見を診察や治療にも応用している根来秀行教授は、未病段階での「気づき」こそが大切だといいます。

深刻なメンタルヘルス不調に陥る前に、ささやかな日々の行動を変えることでコンディションを整える術とは? 『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来が教える ストレス リセット呼吸術』から、一部抜粋・再構築してお届けします。

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仕事環境の変化により心身のストレスが蓄積

リモートワークの定着により、リアルでの人との接点が減るなど、働く環境や行動は大きく変化しました。

私の外来にいらっしゃる方々も、「通勤がなくなった分、時間のやりくりがラクになったというより、むしろ、つねに何かに追われている感覚がつきまとっている」とか、「時間配分が自由になった反面、朝食を抜く、間食が増える、食事の時間がバラバラなど、むしろ不規則になった」という人、さらには、「デジタルデバイスと向き合う時間が大幅に増えて、睡眠時間がどんどん後ろにずれ込んでしまう」と訴えられるケースが増えてきました。

ひとつひとつはささいなことのようですが、この小さな生活リズムの乱れの蓄積は、想像以上に大きなダメージを生み出します。本人はなんとか新しい環境に適応しているつもりでも、心身がついていっていないのです。

しかも、多少の不調はあっても「病気」ともいえず、健診でも特には異常がないために放置されているケースがほとんどです。

不調の原因として特に増えているのが「社会的時差ボケ」です。 これは体内時計により遺伝子レベルで刻み込まれている「体内の時間割」と、実際の行動がズレることで引き起こります。

最適な時間割を決める「時計遺伝子」

早寝早起きをはじめ、規則正しい生活が健康のためにいちばんよいというのは、よくいわれることですが、この「規則正しい時間割」は、仕事や世の中の都合などの、社会的な決め事ではなく、「遺伝子」によって決められています。

人間の体は約60兆個の細胞からできており、それらの細胞核には22本2組の常染色体と2本の性染色体が入っています。

染色体には約2万2000個の遺伝子があって、その中の「時計遺伝子」が最適な時間割を決めています。人の遺伝子上には、時計遺伝子が20種類以上存在し、それぞれの時計遺伝子が生まれてから死ぬまで細胞内で仕事を続け、体内の時を刻むようにプログラミングされているのです。

しかも、ハーバード大学医学部の同僚で友人のチャールズ・サイズラー教授の研究で、人の体内時計は、1日に24時間11分のリズムを刻んでいることがわかっています。そもそも11分間のズレがあります。

すべての細胞に時計遺伝子があり、時間割を決定づけているということは、それだけ時間割のもつ意味が人体にとって重要だということです。「食事」「睡眠」「運動」「仕事」など生活の中のすべての活動は、行う時間帯によって効果効率や意味が違ってきます。

同じ7時間の睡眠時間であっても、「0時に寝て7時に起きる」のと「深夜3時に寝て10時に起きる」のでは、睡眠の質も、それに伴う全身の細胞の再生力も変わってきます。

また、おやつを食べたいと思ったときに、15時に食べるのと、21時に食べるのでは、同じものを食べたとしても、体脂肪になりやすいか、なりにくいかが変わります。わずか6時間の時間差で、違いが出てくるのです。

もちろんそれが1日だけのことであれば、大した差にはなりません。それが習慣化し毎日のこととして積み重なってくると、問題が起こるのです。このように、あらゆる行動・活動に、最適な時間割は存在しています。

生体リズムのズレによる不調の典型は「時差ボケ」です。

時差ボケになると、疲れて眠りたいのに眠れない。日中ボーッとして倦怠感や頭重感が続くといった症状が出てきます。上手にリセットしないと、不調がいつまでも続いてしまって困った経験がある人も多いのではないでしょうか?

時差ボケは、時差のある国へ移動するときにだけ生じるものではなく、不要な夜ふかしや、週末に昼まで寝てしまうなど体内時計が刻むリズムを無視した行動をしていると、同じような症状が起こってきます。これが「社会的時差ボケ」です。

日常生活のリズムが狂った、慢性的な時差ボケを放置していると、さまざまな疾患の原因となる認知機能や、ストレスホルモン、遺伝子などにも影響が及ぶことがわかってきています。また、実際の時差ボケ同様、一度、社会的時差ボケになってしまうと、もとに戻すのはなかなか容易ではなく、いったんリズムが乱れると、1時間の乱れに対する修正には、早くても約1日かかると考えられています。

だからこそ、まずは生体リズムを大きく乱さないこと。

ズレが小さなうちに、こまめに体内時計の乱れをリセットしていくことが大事になってくるのです。

体内時計をリセットするために最も大切な時間は朝

そもそもの11分間のズレと、生活習慣による体内時計のズレ、このリセットに最も有効なタイミングは「朝」です。ポイントは3つあり、

「(1)朝日を浴びること」

「(2)朝食を必ずとること」、そして、できれば

「(3)毎朝同じ時間に起きること(できれば6~7時に起床)」

が挙げられます。

理想的な睡眠時間は7時間ですが、一般的な生活ペースに当てはめると、夜の11~12時に就寝し、6~7時に起きるパターンがベストということになります。

しかも体内時計は、リセットポイントを逃してしまうと後ろにズレていってしまうため、生活時間がどんどん夜型となり、目覚める時間もその分、遅くなります。夜ふかしが簡単にできて早起きが難しいのは、人間の生理機能や体内時計の仕組みを考えると当たり前といえば当たり前なのです。

が挙げられます。

理想的な睡眠時間は7時間ですが、一般的な生活ペースに当てはめると、夜の11~12時に就寝し、6~7時に起きるパターンがベストということになります。

しかも体内時計は、リセットポイントを逃してしまうと後ろにズレていってしまうため、生活時間がどんどん夜型となり、目覚める時間もその分、遅くなります。夜ふかしが簡単にできて早起きが難しいのは、人間の生理機能や体内時計の仕組みを考えると当たり前といえば当たり前なのです。

時間を決めて睡眠を実践しようとして、「よし、今日は早寝をしよう」といきなり思っても、遅くまで起きている習性がついていると、そう簡単には眠れないでしょう。

「寝よう」と思っても、人は、意思だけで眠ることはできません。

そういう場合は、ひと晩くらい寝不足になったとしても、まず「早起き」をしてみてください。いつもより1~2時間、がんばって早起きすることが、手っ取り早く体内時計のリズムを正す方法です。

自分の意思で眠るのは無理でも、目覚ましなどで強制的に起きるのは可能です。とにかく起きて活動してしまえば、その日の夜は早寝がしやすいはずです。健康のためには「早寝早起き」とよく言われますが、「早起き早寝」のほうが正しいといえます。「寝る」を起点にするのではなく、「起きる」を起点にするだけで、同じ目的でも達成しやすくなるからです。

吐く呼吸を長めにとって朝の新鮮な空気でリフレッシュ

カーテンを開けて太陽の光を浴びたら、両手を上にぐーっと上げて伸びをし、ゆっくりと深呼吸をしましょう。朝は、筋肉全体が硬くなっていますが、特に背中の大きな筋肉(広背筋・僧帽筋)が固まりがちです。

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そのままでは胸を大きく開けないので、深い呼吸ができません。伸びをしながら深呼吸するという簡単な動作ですが、それだけで筋肉が適度に刺激され血流はアップし、呼吸もしやすくなっていきます。

深呼吸は、お腹を膨らませながら鼻から吸って、お腹をへこませながら鼻から吐くことを意識し、4カウントで吸って、吸う息の倍の長さの8カウントで吐いていきます。

朝からしっかり横隔膜を動かすことで、精神を安定させる神経伝達物質のセロトニンの産生が促され、自律神経のバランスが整い、快適に1日をスタートできます。

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提供元:医師が警告!急増「社会的時差ボケ」の根深い問題|東洋経済オンライン

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