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2022.07.21

東洋医学の知恵で猛暑の夏を涼やかに過ごすワザ|汗のかき方と水分の摂り方が一番のポイント


猛暑の夏の東洋医学的な過ごし方をお伝えします(写真:kuro3/PIXTA)

猛暑の夏の東洋医学的な過ごし方をお伝えします(写真:kuro3/PIXTA)

暑さで生じる食欲不振や下痢、だるさ、やる気が出ない、体がむくむ、めまい・立ちくらみ……。こうしたいわゆる“夏ばて”はなぜ起こり、漢方的にはどう対処していけばよいのでしょうか。

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漢方の古典『黄帝内経素問・四気調神大論篇(こうていだいけいそもん・しきちょうしんたいろん)』には、夏の過ごし方についてこう書かれています。「夏はすべてのものが繁茂し、勢いが盛んになる。万物は花咲き、実がみのる。自然界の一部である人もこのようにあるべき」。そして、具体的な行動として、以下のようなことを推奨しています。

・早寝早起き(夜更かしした翌日も朝は早く起き、太陽の陽気を取り入れる)
・日光をいとわず、おおいに太陽を取り入れる
・適度に汗をかくようにする
・怒らないようにする
・体と心を十分に解放する
・積極的に表に出て活動する

これに逆らう生活をしていると、“心”が乱れ、それに関連するさまざまな機能が変調をきたします。漢方でいう心とは臓器の心臓だけでなく、循環器系や血管系、メンタル系の機能を含みます。

“心”の乱れでキレやすくなっている

ここ数年は新型コロナの感染予防のため、夏のレジャーや帰省などを控えるなど、夏らしい過ごし方ができませんでした。そのせいか、キレたり、精神的に不安定になったりしている人が多いように見受けられます。コロナ禍の生活は、漢方からみても問題が多いのです。

実は、江戸時代にも熱中症や夏ばてがあったようで、当時の医書『牛山活薹(ぎゅうざんかっとう)』には、「暑邪の症(熱中症)には二つあり、動いて之を得るを中熱、あるいは中暍(ちゅうあつ)と名づく、静にして之を得るを中暑と言うなり、皆、熱火の病なり」と記載されています。中暍は熱中症、中暑は室内で起こる熱中症を意味します。

そして「外からは風を送り、食べ物や飲み物で体内を冷やし、内外ともに冷えるために、夏ばてが起こるのだ」と説明しています。

暑さを避けて過ごし、胃腸を健やかな状態にしていれば夏ばては起きません。では、そのためにどのようなことに気をつければよいのでしょう。具体的には、以下のような養生が大事だといえます。

・暑さを避ける
・正しい水分補給をする
・大汗をかかない
・冷たい飲食は控えめに
・衣服を工夫する
・寝不足や無理をしない
・体によい食材や漢方薬を活用する
・梅干しやみそ汁などで塩分を補給する

毎年、熱中症による死亡事故が報道されていますが、40℃近い炎天下では、外出すること自体がリスクです。実際、日中に30分ほど庭の草取りをしていて熱中症気味になった人もいます。買い物などは朝や夕方の涼しい時間帯にすませましょう。

室内の熱中症は、エアコンの間違った使い方も一つの要因と思われます。乾いた手で脇の下や背中を触り、ベタっとする感じがあれば体が熱を持っている証拠なので、エアコンの設定温度を下げましょう。

高齢者や健康志向が強い方のなかには、エアコンをできるだけ使わないという方もいますが、漢方的な見地からしてもそれは大変危険なことです。漢方の考え方では、たくさんの汗とともに毛穴から「気」が漏れると、夏ばてにつながります。気は生命力のおおもとですので、漏れ出るのはよくありません。

風呂上がりのビールやアイスはNG!

室内の過ごし方だけでなく、入浴の仕方でも気を消耗します。

冬と同じ設定湯温(40℃ぐらい)で入浴する人がいます。風呂から上がって大量の汗をかいているときに、冷たいビールやジュースを飲んだり、アイスを食べたりするのは爽快ですが、これは漢方的にはNGです。大量の汗から気が漏れるだけでなく、冷たい飲食で気を作り出す胃を冷やしてしまうからです。

夏の入浴はぬるま湯で、汗が出ない程度にとどめるのがベスト。36~38℃の湯に10分程度半身浴した後、最後に全身浴をします。この入浴法なら、大量の汗をかかずに冷えがちな下半身を適度に温めてくれます。

誤った養生で心に問題が生じたケースを紹介します。著者が営む薬局に来院した大学生の男性(19)のケースです。

その男性は周りの人に半身浴(42℃で1時間)を勧められ、熱心に実践していました。冬は調子がよかったのですが、気温が高くなり始めると顔が真っ赤にほてるように。それでも頑張って半身浴を続けていると、今度はイライラが止まらなくなり、些細なことにもキレ始めたのです。ついには家の中のものを投げつけるようになったため、心配した母親とともに薬局に相談に来られました。

男性には、高温で長時間にわたる半身浴は止めるように言い、入浴はシャワーのみにしてもらいました。そして、熱を冷ます作用のある漢方薬、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を処方しました。すると、その日からイライラが改善され、2週間ほどで症状が完全に消失したのです。

前述しましたが、イライラは心に熱がこもって限界に達したときに出てくる症状です。この男性は間違った入浴法が原因でしたが、夏の暑さが原因になることもあります。そのようなときはがまんせず、次ページのような養生を実践してみましょう。

(1)水分を正しく補給する

近年、水分の摂り過ぎによる「水毒(すいどく)」の症状を訴える患者さんがとても多いように感じます。夏の脱水は死に至る恐ろしいものですが、だからといって水をガブ飲みすればいいというものでもありません。

夏の適切な水分摂取量は、汗のかき方や運動量、年齢で異なりますが、基本的には「食べて1000mL、飲んで1000mL」です。飲み物として摂るのは1Lくらいにとどめます。

この1000mLの摂り方も重要です。胃を冷やさないようにしないと、気を消耗します。1回あたり1~2口、1回50mL以下にするのがよいでしょう。飲み物の温度は体温以上が基本で、涼しい部屋にいる場合は、ホットで飲むのをおすすめします。

(2)冷飲食を避け、タンパク質をしっかり摂る

冷たい飲み物や食べ物は控えめに。毎日冷たい素麺やソバ、冷やし中華を食べていたら、あっという間に夏ばてしてしまいます。

とはいえ、熱をこもらせる揚げ物や脂の多い肉、うなぎ、ニンニク、トウガラシも要注意です。こもった熱を中和させるため、冷たい飲み物が欲しくなります。唐揚げとビール、焼肉と酎ハイなどで体調を崩し、来局する人は毎年必ずいらっしゃいます。

では、何がいいかというと、夏には体の熱を冷ます「清熱作用」のある食材が理にかなっています。具体的には以下のような食材です。

セロリ、ゴーヤ、レタス、あずき、緑豆、もやし、トマト、きゅうり、とうがん、ナス、スイカ、メロン、梨、そば、豆腐、こんぶ、のり、わかめ、緑茶

むくみが気になる人におすすめ食材

むくみが気になる人は、利水作用のある食材もおすすめです。

あずき、緑豆、ささげ、そらまめ、えんどうまめ、インゲンまめ、とうもろこし、スイカ、キウイ、きゅうり、とうがん、れんこん、鮭、鯉、どじょう

お茶であれば、ハトムギやどくだみ、おおばこ、トウモロコシのヒゲがいいでしょう。ハトムギやおおばこは、漢方薬の材料としても用いられています。

熱中症や脱水症状の予防には、「雪梨槳(せつりしょう)」を。梨を薄切りにして水に浸して食べます。梨は体を冷やして潤す作用の強い食材です。運動時や汗をかいたときに摂るとよいでしょう。

(3)夏ばてに効果的なツボ

暑さで熱が体にこもって汗が噴き出るようなときは、手のひらにある「労宮」を冷やすのがお勧めです。タオルで巻いた保冷剤を握るとよいでしょう。水道が近くにある場合は、ひじから先をザーッと水で洗ってもよいと思います。

・体にこもった熱を冷ますツボ

労宮(ろうきゅう)手のひらの中心

手のひらのツボ(イラスト:おおしま/PIXTA)

手のひらのツボ(イラスト:おおしま/PIXTA)

予防にはお腹のツボと足のツボ

予防には、お腹のツボである「中脘」「関元」「足三里」に刺激を。夏ばて予防には胃腸を健やかに保つことが重要ですが、お腹や足は冷えやすいので、ツボ刺激で血流をよくして温めてあげます。

・お腹や足を温めるツボ

中脘(ちゅうかん)へそとみぞおちの真ん中
関元(かんげん)へその下、指4本分
足三里(あしさんり)ひざの外側、指4本分

お腹のツボ2つ(イラスト:ナミッコ/PIXTA)

お腹のツボ2つ(イラスト:ナミッコ/PIXTA)

足のツボ(イラスト:にしやひさ/PIXTA)

足のツボ(イラスト:にしやひさ/PIXTA)

漢方では、夏の時期を健やかに過ごすことで、冬に悪化する冷えや痛み、呼吸器の症状などが好転する「冬病夏治(とうびょうかち)」という考え方があります。ぜひ、これを機に夏の養生と漢方について知り、これから迎える季節のためにも、日々を快適に過ごしていただければと思います。

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提供元:東洋医学の知恵で猛暑の夏を涼やかに過ごすワザ|東洋経済オンライン

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