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2022.07.11

「毎日何となく」で飲む人はお酒の怖さを知らない|「なにも考えずに惰性」で飲んでいませんか?


酒量は心配だけど、断酒はしたくない、できない人のために提案する「減酒」とはどんな方法なのか(写真:プラナ/PIXTA)

酒量は心配だけど、断酒はしたくない、できない人のために提案する「減酒」とはどんな方法なのか(写真:プラナ/PIXTA)

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「最近、どうも飲みすぎている気がする」「そういえば、休肝日が作りにくくなった」「飲みすぎて、ときどき記憶をなくすことがある」

今、この記事を読んでいる方の中にも、このような経験があり、心配になっているという方がいるのではないでしょうか?

2018年のWHO(世界保健機関)の報告によると、「アルコールの有害な使用による世界の死者数」は、約300万人(2016年)。これは糖尿病、結核、エイズによる死者数よりも多い数字で、世界中の全死者数の5.3%に当たります。飲酒は、日本でも深刻な問題です。2018年に厚生労働省が発表した推計によると、飲酒による日本の年間死亡者は約3万5000人にのぼります。

「止めたいけど仕事の付き合いもあるし、止められない……」「断酒はしたくない」という人もいると思います。そんな人のために、「もちろん、断酒がいちばんいい」と前置きしたうえで、アルコール依存症専門医の倉持穣医師が提案するのが「減酒」という方法です。よく知られている“断酒”ではなく“減酒”とは──? 『今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。

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いつの間にか、お酒に支配されている

「何となく体に悪い」とわかっていても、やめられないのがお酒の怖さです。お酒は、強力な依存性薬物の1つです。依存性薬物は、「精神作用物質」とも呼ばれ、脳に直接働きかけて快感を引き起こします。お酒によって得られた快感は脳に記憶され、判断力を鈍らせるのです。

「お酒で害があることはわかっているが、自分はそれほどひどくない」

「接待の席でお酒を飲まないと、取引先に失礼になるから仕方がない」

「明日の仕事をがんばるために、お酒を飲んでぐっすり眠らなければ」

このような言い訳をして、多くの人は無意識にお酒にしがみついています。気づかないうちに、お酒にマインドコントロールされているのです。お酒は、害があることはわかっていても減らせない、依存性のある物質なのです。飲む人であれば誰でも、お酒に依存してしまう可能性があることを忘れないでください。

お酒への依存(アルコール依存症)に対する治療は、今まで「断酒」しかありませんでした。断酒とは文字どおり、一生一滴もお酒を飲まないことを指します。お酒は強力な有害物質なので、断酒をするほうがよいことは明らかです。

しかしアルコールは、人間の文化の中に深く広く根づいている飲み物です。全面的に隔絶することは不可能に近いでしょう。またアルコール依存の中にも、依存症予備軍、プレ・アルコール依存症(前アルコール依存症)、軽症アルコール依存症など、さまざまなレベルが存在します。そういった人すべてが断酒をすることは現実的ではありません。

「減酒」とはいったい何か?

そこで、提案したいのが「減酒」です。近年、アルコール医療の世界で注目されている方法です。

減酒という考え方は、1970年代からヨーロッパで始まりました。研究が進むにつれて、アルコール依存症に至っていないハイリスク飲酒者や依存症予備軍、プレ・アルコール依存症の人に対して、短期的なお酒の教育を行ったところ、飲酒による問題が改善したという報告が続きました。

WHOは2013年に日本を含む加盟各国に対して、「アルコールの有害な使用を可能な限り減らしていこう」という勧告を出しています。

これらを受けて、日本でも産業保健や地域保健などの分野で、減酒の方法を教える「減酒指導・減酒支援」という考え方が、少しずつ広がりを見せています。いわば予防医学の視点です。

2010年代に入ってからは、「アルコール依存症の人に対しても、減酒を使えば一定の効果がある」という考え方に発展しました。もちろん、断酒が最も安全な治療法であることは明らかです。しかし、どうしても断酒は嫌だという人もいるでしょう。断酒することを拒絶するあまり、自分のお酒の問題から目を背ける人もいます。

従来の日本では、アルコール依存症の専門医療機関を受診すると、ほぼ100%、断酒を指示されていました。そのため受診を渋る人が多く、治療のハードルは限りなく高いものだったのです。

そんな中、2017年に国立病院機構久里浜医療センターで、日本初の「減酒外来」が開設され、各地の医療機関に広がりつつあります。減酒外来がどこまで有効であるのか臨床研究は始まったばかりですが、

「減酒治療でアルコール問題の重症度が改善された」

「アルコール依存症への進行をある程度予防できた」

このような報告がいくつか認められるようになっています。

拙著における減酒の考え方も、基本的には予防医学および進行防止の視点に基づいています。「依存症には至っていないけれど、将来的に依存症に進行するリスクのある人たち」が、「健康を害さない適切な飲酒」を実践してほしいと考えています。

減酒を始めるためには、まずあなたの飲酒状況を客観的に把握する必要があります。

「飲酒による損益収支表」を参考に表を作ってみましょう。本来、人はこのような収支に基づいて飲酒をしています。しかし習慣的に飲むうちに、多くの人が収支を意識しなくなり、「何も考えずに惰性で飲む」という状況になりがちです。

(画像:『今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる』)

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お酒の利益しか目に入らなくなる

お酒は強力な依存性薬物なので、ほかのことよりも最優先になる性質を持っています。

本来、人間にとって重要なのは、家族と暮らす幸せ、健康の喜び、仕事の生きがい、趣味の楽しみなどでしょう。お酒は、人生の主役ではなく、脇役にすぎません。

家族や仕事や趣味がメイン料理や主食だとしたら、お酒は、そこに彩りを与えるスパイスのような存在です。

しかし習慣的に飲酒をしているうちにその優先度が増し、いつしか家族や仕事や趣味は隅へと追いやられてしまいます。お酒によってマインドコントロールされている脳は、それに気づきません。論理的に考えているように見えて、実はお酒中心の歪んだ思考になっていきます。

アルコール依存が進行するにつれ、「飲酒による損益収支表」は、図「依存が進んだ場合の損益収支表」のように見えてきます。次第に「飲酒による利益」や「断酒/減酒による損害」しか見えなくなるのです。

「お酒をやめるなんて、できるわけがない」「お酒を減らしたら楽しいことが何もなくなってしまう」などと考えるようになり、無意識にお酒にしがみつくようになります。

(画像:『今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる』)

(画像:『今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる』)

逆に、「飲酒による損害」は見えません。健康への害、家族の心労、仕事への影響は大きくなるものの、依存が進行するにつれ、「大した問題ではない」と思うようになります。

「減酒/断酒による利益」についても同様です。世の中にはお酒以外の楽しいことがたくさんあるはずなのに、お酒漬けの脳には想像がつきません。アルコールの作用により、知らぬ間に人生の価値観が歪んでいるのです。

このように考えると、正確で客観的な「飲酒による損益収支表」を書くことこそ、減酒を続ける基礎になります。最初はうまく書けないかもしれませんが、それでもよいのです。減酒を続けるうちに、今までは考えもしなかった「飲酒による損害」「減酒/断酒による利益」の空欄が、次第に埋まっていくはずです。

減酒は認知行動療法の1つです

記事画像

『今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる』(主婦の友社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

現在、うつ病の治療では、認知行動療法が世界的な主流になっています。自分に起こることすべてを悪いほうにとらえる「考え方のクセ(認知の歪み)」を、ワークの繰り返しや実際の行動などを通して修正しながら、回復を目指す治療法です。

明らかなエビデンス(効果があるという証拠)が認められており、うつ病のほか、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害など、多くの病気に対して第1選択の方法です。減酒も認知行動療法の1つです。

1 お酒やアルコール依存についての正しい知識を学ぶ
2 お酒によって歪んでしまった物の見方や考え方(認知の歪み)を修正し、飲酒に対する客観的で正しい判断力を取り戻す
3 お酒を飲まない行動を意識的に行うことで、減酒生活の習慣を新しく築いていく
4 実際に減酒生活を送る中で、考え方や感じ方がどう変化したか自己観察をする

このように、段階を踏んで治療を進めます。減酒とは、意志の力だけに頼ってお酒を我慢することではありません。「我慢の減酒」は、短期間はできても決して長続きすることはありません。

我慢の減酒ではなく、認知行動療法の知見を援用しながら「科学的な方法論に基づき無理なくお酒を減らし続けていくこと」が、減酒という新しい方法なのです。

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提供元:「毎日何となく」で飲む人はお酒の怖さを知らない|東洋経済オンライン

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