2022.06.29
食欲をそそる大阪名物「肉吸い」家で簡単に作る技|定番の卵かけご飯を添えると、さらに絶品に
だしが体にしみる大阪名物「肉吸い」の作り方を解説します
在宅勤務などによって、家で料理をする人が増えたのではないでしょうか。料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する連載『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は大阪名物「肉吸い」です。
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味のポイントは「うすくちしょうゆ」
<だしをとる>のはハードルが高いと思われていますが、実はかんたん。しかも、市販の顆粒だしを使うよりも香りよく仕上がります。香り成分は揮発性のため、インスタントだしでの再現が難しいからです。
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今回はかつおだしをベースにした大阪名物、肉吸いの作り方をご紹介します。肉吸いは肉うどんからうどんを抜いたスープ料理。千日前にある「千とせ」という店が発祥とされますが、今では多くの飲食店で提供されています。
作り方としてはまずかつお節と水でだしをとり、そこにうすくちしょうゆと砂糖で味をつけたうどんだしをつくります。このだしで肉を煮て、青ネギを加えれば完成。シンプルな料理ですが、作り方にコツがあるので、それは後ほど。
味のポイントは「うすくちしょうゆ」です。関西圏で愛用されてきましたが、今ではどこのスーパーでも入手可能になりました。
関東圏ではキッコーマンの製品が入手しやすい
「うすくち」は「淡口」と書くように、色の淡さが特徴。塩味が薄いわけではなく、むしろ濃口しょうゆよりも塩分濃度は強いので、うどんつゆや吸い物、炊き込みごはんに使うとかんたんに味がまとまります。
うすくちしょうゆに慣れないうちは使用頻度が低くなりがちで、せっかく購入しても使い切れず鮮度が落ちてしまう……という問題がありましたが、酸化防止機能がついた二重ボトルの製品が登場したので、解決しました。1本買うだけで普段の料理の味がよくなるので、ぜひ酸化防止二重ボトルのうすくちしょうゆを購入してください。
青ネギの量は好みで増やせます
肉吸いの材料 (2人前)
牛肉切り落とし 180g
青ネギ 5本
うどんだし
かつお節 20g
水 1L
うすくちしょうゆ 50ml
砂糖 小さじ2
まずはうどんだしをつくります。
かつお節は削った状態のパック詰めがスーパーなどで入手できます。
かつお節の味は価格に比例するので、ある程度の価格帯を選ぶのが無難です
作り方はかんたん。かつお節と水を鍋に入れ、沸騰するまで中火で加熱し、沸いてきたら弱火に落としてコトコトと5分煮るだけです。ここに昆布を加えると味に厚みが出ますが、今回は味の切れを出すためにかつお節単体でだしをとっていきます。
だしパックでもかまいません
だしをこします。このとき、かつお節は絞っても問題ありません。ちなみに、だしを抽出した後のかつお節はしょうゆを加えて乾燥させれば食べられますが、うま味物質はほとんど残ってないので、捨ててももったいなくはありません。
ザルに不織布タイプのキッチンペーパーを敷いておくと、捨てるのが楽です
うすくちしょうゆと砂糖で味を整えます。出来上がりの分量は800mlです。料理に詳しい方であれば「2人前に800mlは多くない?」と思うかもしれません。多めに準備した理由はこの後の工程にあります。
うどんだしはペットボトルなどに詰めて冷蔵保存すると2〜3日は持ちます
さて、うどんだしの準備が終わったら、肉吸いをつくりはじめましょう。牛肉は1.8cm幅に切り、室温に戻しておきます。室温に戻すことで、うどんだしに入れたとき、ほぐれやすくなります。
牛肉は国産牛、または黒毛和牛の切り落としを使います。一般的に切り落とし肉にはバラ肉など脂の多い部位が使われているからです。脂肪交雑(筋繊維の間に脂肪が入ること、いわゆる霜ふり肉のこと)が多い肉であれば加熱後も柔らかさが保てます。
牛肉はだしを取る前に切っておいてもいいでしょう
青ネギを小口切りにします。
青ネギは小ねぎや万能ねぎなどさまざまな商品名がありますが、どれを選んでも大丈夫です
鍋にうどんだし400mlを入れ、中火にかけ、沸いたところに牛肉を加えます。
沸いたところに入れるのもポイントです
沸騰してくるのでアクをすくいます。
はじめのうちはある程度しっかり沸かすとアクが集まるので取りやすくなります
火を弱火に落とし、さらにアクをすくい続けます。普通、アクをすくう場合は煮汁が減らないようアクだけをすくうようにしますが、肉吸いの場合は大胆に煮汁をすくいとってください。目安は100~150mlほどすくって捨てるイメージです。この工程で余分な脂を取り除けます。
アクをとるときは大胆に
肉に火が通ると、アクがでなくなるので、うどんだしを200ml足し、減った分を補います。
だしを足すことで煮汁も澄みます
青ネギを加えて15秒ほど煮ます。仕上げにふる青ネギを少し残しておいてください。
青ネギはたっぷりと
火を止めて器に盛ったら出来上がりです。シンプルなので、好みで豆腐(肉と同時のタイミングで入れます)やポーチドエッグを入れるとボリュームがでます。
火が通った青ネギと薬味としての生の青ネギが入ることですっきりした味に
肉吸い用ポーチドエッグの作り方を紹介します。最初に用意したうどんだし200mlと水200mlを鍋に入れて沸かします。
沸いたところで火を弱火に落とし、器に割り入れた卵を落とします。
容器に移してから割り入れると卵がまとまります
黄身を割らないように箸でやさしく、転がします。裏返すイメージです。水溶性卵白がゆで汁に散るので網杓子などで取り除き、静かに4~5分茹でます。黄身が半熟の状態が理想です。
煮汁で加熱することで卵に味がつきます
プロは指で押して固まり具合を確認しますが、熱いので注意
出来上がり
肉吸いは青ネギが余ったときのメニューとしてもオススメで、ネギの甘みと香りがだしに与える影響がよく理解できます。牛肉を下ゆでしてアクを抜くレシピもありますが脂とうま味が抜けるのが難点。また、使用する鍋が増えるので洗い物も面倒です。
脂は多すぎてもいけませんが牛肉の風味は脂にあるので、このだしで煮てから足す方法であれば好みの具合に調整できます。本家の作り方に習いましたが実に巧妙な手法。やはり名物として残るにはきちんとした理由があるのです。
おまけ
肉吸いには卵かけご飯を添えるのが定番。卵かけご飯に使う卵は白身の比率が少ないS玉がおすすめなのですが、スーパーで売っているのはM玉以上の大きさなので、ややバランスがとりづらくなります。
そこで卵を容器に割り入れ、白身の水っぽい部分をスプーンですくって捨ててしまいましょう。
水っぽい部分をとりのぞくと味もよくなります
これが卵かけご飯をおいしくつくる秘訣です。
地鶏の卵は白身が少なく、黄身が大きいので適していますがふつうの卵でも大丈夫
(写真はすべて筆者撮影)
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提供元:食欲をそそる大阪名物「肉吸い」家で簡単に作る技|東洋経済オンライン