2022.06.24
「わざわざ○○する」が周囲の信頼度を上げるワケ|された人は「ありがたい気持ち」が湧いてくる
「わざわざ○○する」のが信頼度を上げるポイント。人生を幸せにしていくための「これからの仕事術」を、3回にわたってお伝えしています(写真:ペイレスイメージズ1/PIXTA)
「90歳まで現役」という時代がそこまで到来し、多くの人が会社・仕事と人生の関係性や仕事への向き合い方を見直すタイミングに来ています。労働を提供する対価として給与を得るという従来続いてきた仕事の仕方を捨て、仕事と人生の関係性をアップデートできれば、仕事も楽しくなり、幸せな人生を送れるのです。
大企業とベンチャー、プレーヤーとマネージャー、フィジカルとデジタル、ルーティンとクリエイティブ、グローバルとドメスティック、ありとあらゆる環境下で仕事を追求した必殺仕事人の美濃部哲也氏の著書『仕事の研究』から、人生を幸せにしていくための「これからの仕事術」を3回にわたってお伝えしています。今回は3回目です(1回目はこちら、2回目はこちら)。
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基本的に、「for You」と「for Me」が人の心と行動に内在しています。
経験を積み重ねることで、「for Me」がどんどんと薄れていき、しまいにはなくなってしまう場合があります。そして「for You」が増えるほど、手を差し伸べてくれたり、一緒にやろうと言ってくれる人が増えていきます。気が付くと、賛同、賞賛、協力、依頼、感謝、信用など、仕事がよりよくなり、人生が豊かになるために大切なことが、あとからついてくるようになります。
「誰かのため」が成功につながる
大きな仕事の中心にいる人、誰かを感動させるような仕事を仕掛けている人、賛同や協力を多く集めている人において、自身の情熱が注がれる先は「自分」ではなく、「誰か」や「何か」だということが多々あります。それが結果的に、共感や賛同といった形で自身に返ってくるので、成功を収める可能性が上がっていくのです。
昨今の「パーパス経営」の流れもあり、社会や未来のため、つまり「for You」な考え方と経済的な成長を掲げる企業も増えています。
経営理念として掲げるだけでなく、経営者を筆頭にそこで仕事をする1人ひとりが、「for You」を基本に、専門性や「らしさ」で、社会や未来にどう貢献していくのか? を考えながら、行動にその想いを反映していくことが大切です。すると、掲げているパーパス(存在意義)と企業活動と仕事が1本の筋でつながっていき、やりがいを感じながら1人ひとりが仕事に取り組んでいける状態が生まれます。
「for Me」は連鎖を生まず、「for You」は連鎖を生んでいきます。「誰かや何かのために」というスタンスで、ある目的(=想い)の実現に向かって、自分の得意なことや好きなことをベースにした専門性で貢献していくという姿勢。それに人は引き寄せられます。
自分1人では実現できないようなことも叶えられるようになっていきます。「for You」を追求しながら仕事をしていくことで、人生が充実して豊かなものになっていくのではないでしょうか。
フランス人作家のサン・テグジュペリの「星の王子さま」にこんなフレーズがあります。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」。
目の前のものや人の背景にある想いや、それが生まれるまでにかかった時間や手間など、目に見えるものの背景や意味などを想像することが大切です。プロジェクトに携わっている人の動きの背景にある想いや、アウトプットに要したプロセスや時間などを想像することはとても大切です。なぜなら、互いにそういう視点を持てば、専門性に対するリスペクトは増していき、唯一無二のチームワーク感が生まれるからです。
マネジメントをする立場の人は、メンバーの先にいる人の存在に想いを馳せることです。メンバーが既婚者で子どもがいる家庭を持っているのであれば、家族のことまで考えるようになると、専門性を発揮していく環境に多様性が生まれ、活躍しやすい環境にどんどんなっていくはずです。
「わざわざ」で信頼貯金が積み上がる
信頼関係を深めていく際に、とても大切にしたいものがあります。それは「わざわざ」というものです。しかも、「わざわざ喜んで」「わざわざ自分勝手に」という感じの動きであれば、普通は行われない「自分らしい動きのプラスα」になっていくわけです。わざわざやればやるほど、その人の行動の蓄積は自分らしさが磨かれ、際立っていき、信用貯金が積み上がっていきます。
もらったメールの内容に、「わざわざ」自分のためを思って書いてある一文が添えられていた。メールやチャットで済ませられるのに、「わざわざ」電話をかけてきてくれた。「わざわざ」手紙を書いてきてくれた。郵送すればよい届け物を、「わざわざ」持ってきてくれた。オンライン会議でも済ませられるのに、「わざわざ」会いに来てくれた。
そういったことをされた側としては、「申し訳ないな」という気持ちと同時に、ありがたい気持ちになります。
「わざわざ」には、その人のために時間を使って調べたり、考えたり、動いたりした軌跡があります。その軌跡がわかると、その人に対して、好意や信用が生まれるのは間違いありません。
自分らしい「わざわざ」を、「効率化」などという言葉に惑わされることなくどんどんやっていくと、自分らしさが磨かれ、人間関係も深まり、そして広がり、仕事も生活もさらに充実していくのではないでしょうか。
「愛とはお互いを見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである」。これはサン・テグジュペリの『人間の大地』という著書に出てくるフレーズです。これからの時代は「共創型」の取り組みが重要視されるといわれています。企業はお客様と向き合うのではなく、共に同じ方向を向いて歩くことで、豊かさを生み出していきます。
共に同じ方向を見て歩くことが大事
これまでは、「お客様の意見に耳を傾けて、商品やサービスをつくる」という形がよいとされてきました。もしくは、商品・サービスをつくっている本人たちがユーザーでもあるので、よい商品・サービスを追求するという状態が生まれていました。そのさらに発展形の「お客様が参加しながら」商品・サービスが生まれたり改良されたりしていく「共創型」が徐々に増え始め、その流れは勢いを増しています。
会社が「なぜ、この世に存在しているのか」といった存在意義、つまり、「社会や未来をどうしていきたいのか」「社員の人と共に目指していく世界は何か」ということがパーパスとして言葉化されている会社は、共創型の採用活動がしやすくなります。
これから入社する学生にとっても、自分が向かっていきたい方向を向いている会社なのかどうかがわかりやすくなるからです。そして、「共に同じ方向を向いて歩いていくこと」が直観される状態であれば、そこに愛が生まれます。会社にも、採用候補者にも、運命的な出会いとコミットメントが生まれるのです。
「誰かや何かに合わせるのではなく、自分らしい生き方をしたい」。それではダメなのですか、ということを耳にすることがあります。「自分らしい生き方」はとてもよいことだと心から思います。
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その「自分らしさ」をいかに社会や未来に役立てていくのかが自分自身でも見えて、それが周囲に伝わりだしたときに、「一緒にやっていきたい」と同じ方向を向いて歩きたいと思ってくれる人も現れます。
「共に同じ方向を向いて歩いていきたい」と思える人と出会える。「共に同じ方向を向いて歩いていきたい」と思ってくれる人に出会える。お互いが宝物のような存在になれる。それが、仕事に一生懸命になれた人へのご褒美なのかもしれません。
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提供元:「わざわざ○○する」が周囲の信頼度を上げるワケ|東洋経済オンライン