2022.06.14
メールが劇的に伝わりやすくなる3つのポイント|一文に要素を詰め込みすぎていませんか?
口では伝わるのに、文章だとなぜか伝わらない……と悩んでいませんか?(写真: jhphoto/PIXTA)
コロナ禍をきっかけに定着したリモートワーク。対外的なメールだけでなく、社内コミュニケーションにおいても対面から文章へと比重が大きく傾きましたが、文章で伝えるのは苦手、というのは少なくありません。そこで本稿では、『マジ文章書けないんだけど』著者で、朝日新聞社元校閲センター長、文章コンサルティングファーム「未來交創」代表取締役などを務める文章のプロ、前田安正氏が伝わりやすい文章を書くコツを伝授します。
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文章で伝えるのが苦手な人は少なくない
社内やプロジェクトチーム内でのコミュニケーションにおいて、Slack、Microsoft Teams、LINEなどのチャットツールの活用が増えました。「仕事が早く進められるようになった」との声がある一方、「文章で伝えるのは苦手。発言するのが怖い……」という悲観的な声も耳にします。
「話が勘違いされやすい」
「期待通りの返事がもらえない」
「いつも不安で落ち着かない」
こんな悩みを持つビジネスパーソンに向け、本記事では、拙著『マジ文章書けないんだけど』より、3つの例題をご紹介。それらの文章の改善に、ぜひチャレンジしてみてください!
【1】主語と述語、ちゃんとかみ合っていますか?
<例文 1>
このモデルは背が高くて脚が長くスタイルがいいので顔が小さく、どんな服でもよく似合うモデルだ。
まずは、この例文を見ていきましょう。何となく言いたいことはわかるのですが、不自然なところがあります。お気づきでしょうか。
まず、「このモデルは……モデルだ」という構造になっています。これは「は」という係助詞(副助詞)が、遠い述語(述部)にかかるという働きがあるからです。そこに、「脚が長くスタイルがいい」「顔が小さい」「どんな服でもよく似合う」という要素が詰め込まれているのです。そのため、主語と述語の関係があいまいになってしまうのです。
複雑な構造になったもう一つの原因が「ので」という根拠・理由・原因を表す接続助詞です。接続助詞は文の要素をつなぐ役目があります。例文の場合、「顔が小さい」の理由が「背が高くて脚が長くスタイルがいい」から、という説明になってしまっています。顔が小さいのは、背の高さとは直接関係ありませんね。
以上を踏まえ、わかりやすい文章に作り替えてみてください。ポイントは、文の要素を分けて主語と述語の関係を明確にすることです。
<改善例 1>
このモデルは背が高く脚が長いのでスタイルがいい。加えて顔も小さいので、どんな服でもよく似合う。
改善例を見てください。
まず、背の高いモデルのスタイルがいい理由を、1つの文にまとめて言い切ります。そして、「顔が小さい」に関してはスタイルのよさの一因ではありますが、背の高さとは直接関係ないので切り分けています。最後に、「どんな服でもよく似合う」という要素でまとめました。
■ポイント
・主語と述語をしっかり対応させる。
・1つの文は1つの要素で書く。
丁寧に書くことと何度も同じことを言うのとは別
【2】あれこれ言っても伝わらないぞ! 言葉を整理しよう
<例文 2>
会社の帰りに最近できたハンバーガーショップに行った。バーガーショップでハンバーガーとコーンスープとコールスローを頼んで支払いをして、出店した。
翌日、財布がないことに気づいた。慌ててバーガーショップに電話をしたら、店で預かってくれていた。
この間1日、店頭に寄って財布を返してもらった。
これも、何となくわかるけれど、どこかぎくしゃくした印象になっています。短い文章の中に「ハンバーガーショップ」が2回、「バーガーショップ」が1回。同様の言葉が計3回も出てきています。
また「出店した」というのはお店を出ることではなく、お店を出すことです。ここでは不適切な言葉です。最後の「この間1日」という表現もこなれておらず、すっきりしません。
以上を踏まえて、わかりやすい文章に作り替えてください。ポイントは、無駄な言葉をしっかり削ることです。
<改善例 2>
会社の帰りに最近できたハンバーガーショップに行き、ハンバーガーとコーンスープ、コールスローを買った。
翌日、財布がないことに気づき、店に電話をすると、預かっていると言うので、受け取りに行った。
さて、こちらが解答例です。
丁寧に書くことと、何度も同じことを言うのとは別だ、ということを理解しましょう。最初の「ハンバーガーショップ」と「バーガーショップ」は、飲食したできごとを一文にまとめることで繰り返しを避けることができます。そして最後は、「店」と言い換えました。
時系列もはっきりさせます。
1. 会社の帰り、ハンバーガーショップへ行った。
2. 翌日、財布がないのに気づいた。
3. お店に電話をした。
4. 財布を受け取った。
【1】は、前日のできごと。
【2〜4】は、その翌日のできごとです。
最初の一文で前日のできごとをまとめ、そこから翌日の話につなげました。また「この間一日」は、その前の文に「翌日」とあるので削ります。頭に浮かんだことを整理しないまま書き出してしまいがちです。いったん、時系列に沿ってまとめると文章の構成がつかみやすくなります。
■ポイント
・丁寧に書くことと、何度も同じことを書くことは違う。
・読む人にわかりやすく言葉を整理する。
一文に要素を詰め込みすぎない
【3】1つの文に、1つの要素
<例文 3>
大学時代は応援部で吹奏楽のために良好な人間関係の構築と部の運営に尽力した。
この文は要素を詰め込みすぎているため「何のために」「何に尽力した」のかが、明確になっていません。そのため理解しづらいのです。
<例文1>のポイントで「1つの文は1つの要素で書く」とお伝えしました。要素を詰め込み過ぎた文は、要素ごとに分けるようにします。ここのポイントは、「応援部に所属していた」ことと、そこで「尽力」した内容を分けて書くことです。書き直してみてください。
〈改善例 3-1〉大学時代は応援部の吹奏楽に所属していた。そこで良好な人間関係の構築と部の運営に尽力した。
一旦、要素をわけて文を書き直しました。例文3よりはすっきりしました。しかし2つ目の文にある「良好な人間関係の構築」と「部の運営」がそれぞれ何を言っているのか、具体的にわかりません。
・何のために良好な人間関係を構築したのか?
・部の運営とは何のことなのか?
それぞれを、さらに分けて考えます。ポイントは、概念的な言葉ではなく、できるだけ具体的にイメージできる言葉で表現することです。具体例はみなさんの想像にお任せします。まずは「良好な人間関係の構築」について、書き加えてください。
〈改善例 3-2〉大学時代は応援部の吹奏楽に所属していた。吹奏楽のクオリティーを高めるために、仲間とのコミュニケーションを第一に考えた。
ここでは「吹奏楽のクオリティーを上げるため」という目的を付け加え、「そのためには良好な人間関係が大事だよね」という形にしました。また、「人間関係を構築」という言葉は堅苦しくわかりづらいので、「コミュニケーション」という一般的な言葉に置き換えています。
次に、「部の運営」についても加筆してみてください。想像の範囲でかまいません。
〈改善例 3-3〉応援部は野球部など他部との日程調整が必要だ。また、対戦相手となる他大学との応援の打ち合わせなども頻繁にある。
いかがですか? 野球部との日程調整や他校との打ち合わせなど、具体的な内容を加えました。そして最後は、
私はこうした部の運営にも力を注いだ。
という風にします。具体的な話を受けて、これが「私の役割だった」という形で締めくくります。
以上を踏まえて書き直したものが、<改善例3−4>です。
<改善例3-4>
大学時代は応援部の吹奏楽に所属していた。吹奏楽のクオリティーを高めるために、仲間とのコミュニケーションを第一に考えた。応援部は野球部など他部との日程調整が必要だ。また、対戦相手となる他大学との応援の打ち合わせなども頻繁にある。私はこうした部の運営にも力を注いだ。
いかがですか? <例文3>の修正は、少しみなさんの想像力を助けにしなくてはならなかったので、難しかった以下のポイントを再度確認して、文章の組み立て方を理解していただければ、と思います。
■ポイント
・1つの文は、1つの要素で書く。
・要素が増えたら、文を分ける。
・具体的な要素を加える。
伝わる文章は相手の負担も減らす
リモートワークをしていて、あなたの発信に対して反応がなかったり、趣旨とは違う返信がきたりしたら、自らの文章を再度確認してみてください。独りよがりな文章になっていませんか? 第三者に伝わる過不足のない文章になっていますか?
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相手が同僚などであれば「どういうこと?」と、気軽に確認できるかもしれません。しかしこれが相手が取引先だと、仕事が滞る場合も出てきます。 理解のできない文章は、相手の大切な時間を奪ってしまうことにもなるのです。それだけではなく、お互いの信頼関係が揺らぐ場合もあります。それはビジネスにとって大きな損失になります。ストレスのかからない文章は、相手への思いやり、ビジネスマナーでもあります。
「主語と述語をかみ合わせる」「同じ言葉の繰り返しを避ける」「1つの文には1つの要素」など、今回ご紹介したポイントは、文章を書く際にすぐにでも役立つものです。円滑な文章コミュニケーションに役立てください。
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提供元:メールが劇的に伝わりやすくなる3つのポイント|東洋経済オンライン