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2022.05.27

マスク越しの意思疎通「声の使い方で超改善」の訳|「高い声」と「低い声」はそれぞれ役割がある


意思疎通が円滑になる「声の使い方」について解説します(写真:ふじよ/PIXTA)

意思疎通が円滑になる「声の使い方」について解説します(写真:ふじよ/PIXTA)

コロナ禍でマスクを着けて会話をするようになったことから、相手の表情がわからないために気持ちが読み取りにくく、コミュニケーションの難しさを実感している人は少なくないのではないでしょうか。

劇作家 、漫画原作者で、宝塚大学・東京メディア芸術学部教授でもある竹内一郎氏は、マスク時代のコミュニケーションには「声」の役割が重要だといいます。新著『マスク時代リモート時代の《新》コミュニケーション』を上梓した竹内氏が、声の使い方について解説します。

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声にはたくさんの情報が宿っている

表情では目しか相手に見える部分はないのですから、対面・オンラインを問わず、コミュニケーションの中で「声」のもつ役割の比重は今後、さらに高くなっていくはずです。

本来、声にはたくさんの情報が宿っています。仕事や遊びなどあらゆる場面で、声だけで「この人は仕事ができる」「この人は能力が低いな」と判断していることも多いのではないでしょうか(読みは外れることもありますが)。

理由は、人生の出会いの中でいろいろな声を聞いてきて、すでに自分なりの「声のデータベース」ができているからです。間違うことがあるのは、自分の出会った人に「偏り」があるからだと思います。地球上のすべての人の声がデータベース化されていれば、人柄もかなりの高確率で当たるのではないでしょうか。

このように、コミュニケーションにおいて声が担う役割はとても大きいのです。人間関係を考えるうえで、「声」にまで配慮の届いている人は意識無意識問わず、そうした事実を理解している「意識が高い人」といっていいでしょう。

声がいいと、私たちが普段思っている以上に得をするということがわかります。そんな「いい声」を作るにはどうしたらいいか。声の元は筋肉なので、習慣が「いい声」を作ります。

まず、時間をかければ「必ず変えられる」と自分に暗示をかけることが大事です。そして日々、「いい声」を意識していきましょう。そうすれば、声は本当に変わります。

声優には何種類もの声を使い分けている人がいます。彼らはプロだから高度なことができるのですが、その能力自体はすべての人に備わっているものです。

重要:「いい声」を意識する習慣をもつ

「高い声」と「低い声」の使い分け方

高い声の役割は「人の注目を集める」ことです。一般にお笑い芸人は、人の注目を集めなくてはならないので、声の高い人が多いもの。高い声は、人を興奮させる働きを持ちます。北朝鮮国営テレビのニュースアナウンサーを見れば、その原理はわかるはずです。

日本でも、テレビ通販のスタイルを作った「ジャパネットたかた」の髙田明元社長は、番組に出ているときは、非常に声が高かったものです。

人の注目を集めるために、考え抜いてあの声にたどり着いたのでしょう。普段の髙田氏は、大企業の経営者らしく、低く落ち着いた声でしゃべることが知られています。

では、低い声の役割とは何でしょう。芸人では、声の低い人は、ケンドーコバヤシさんや天野ひろゆきさん(キャイ~ン)、川島明さん(麒麟)などで「ええ声芸人」などと呼ばれています。

希少価値があると同時に、聞いている人にとって耳障りがいい声です。高い声を「嫌い」「不快」と思う人は一定数いると思いますが、低い声が「嫌い」「不快」という人は少ないのではないでしょうか。

天野ひろゆきさんはNHKでよく見かけますが、無理に盛り上げる必要のないNHKの教養番組では、彼の低い声が合うのだと思います。

サンドウィッチマンも好印象の芸人で、彼らを嫌いな人があまりいません。人柄もさることながら、その声にも嫌みがありません。サンドウィッチマンも天野さん同様、NHKで多く見られる印象があります。NHKに好かれる理由には、声質も入っているのではないでしょうか。

ヒートしなくてはならない場面では「高い声」、冷静に落ち着いて話したい場面では「低い声」が効果的と、覚えておくとよいでしょう。

ただ、高い声はあくまでもポイントで使うことです。会議などでいきり立って高い声でしゃべり続けている人を見るのは、あまり楽しいことではありません。

プレゼンテーションの場などでは、まず高い声で人々の関心をぐっと引きつけ、その後は説得力の増す低い声で話す、また強調したいところでは高い声……と、声の持つ役割を理解して使い分けていきましょう。

重要:「高い声」で注目を集め、「低い声」で語り掛ける

声を「意識的」に変えてみる

「自分の声をそんなふうに自由自在に使い分けられたら苦労はしないよ」と思われているかもしれません。たしかに、TPOによって声を変えようと考えている人はあまりいないかもしれませんね。しかし、実際は場面、場面で人は異なる声を出しているものなのです。会議の場でも「自説をまくしたてるとき」と「感情的になっている人を落ち着かせるとき」では、しゃべり方だけではなく、声も違うと思いませんか。

実際、カラオケで歌を歌うと、自分の声帯からさまざまな音域が出ることがわかります。 自分が普段使い慣れている声はありますが、それは「習慣」になっている声だというだけです。

例えば、俳優は「落ち着いた医者の役」をやるときは「落ち着いた声」で演じるし、感情抑制の効かない軍人をやるときは、いきり立つような高い声で役を作るものです。発声の訓練を積んだ俳優や声優だから、声の高低を自由に操れるわけではありません。誰もが多かれ少なかれ、無意識にやっていることなのです。

そこを「意識的」に変えてみましょう。自分が置かれた場面で、どの声を出すのが一番効果的か、わかるようになっていきます。そういう訓練を習慣的に重ねていくと、「こういうとき、あの人みたいな声が出せたらなあ」と思える人が出てくると思います。そういうときは、ぜひその人のまねをしてみてください。やがては自分の声がその人に近づいていくものです(5年以上はかかりますが)。

鳥類(ウグイスなど)は声のよい雄に雌が寄ってきます。求愛行動は、種の保存に関わる生物の本質にかかわるもの。人間は理性を重んじるあまり、本能の持つ大きな力を忘れがちです。この機会に、声の本能に訴えかける力を意識し、改善を図るのも得策です。

重要:声の力は、本能に訴えかける力

「コロナ太り」などという言葉が一般的になりましたが、外出自粛期間、いわゆる巣ごもり生活によって悪影響が出たものは少なくないでしょう。

私が最も気になるのが「姿勢」です。人は他人に見られていないと、どうしても姿勢が悪くなります。テレワーク、オンライン授業ともにソファに座って数時間過ごすことも少なくありません。デスクチェア、丸椅子などと違い、柔らかくリラックスするために作られているソファで正しい姿勢を保ち続けることは難しいものです。

自然、悪い姿勢で過ごす時間が思いのほか長くなってしまいます。それだけでなく、人に見られていないと、どうしても人はだらしなくなってしまいます。私も同じです。

腹筋と背筋を鍛えるといい理由

だらしない姿勢のいけない点は、腹筋と背筋を使わなくなることです。腰は腹筋と背筋で支えています。歳をとると、腰痛の人が増えるものです。年齢とともに、腰骨の軟骨が減っていき、骨が神経を圧迫するからです。

そんなとき、腹筋・背筋が強いと、骨の圧迫を緩和してくれます。筋肉が骨を支えるのです。中年以降の腰痛緩和のためにも、正しい姿勢をキープし、腹筋と背筋を強化しておきたいものです。

ホテルマンのアルバイトをしたときに、「ホテルに与えられた制服を着ると、自分の背筋がビシッと伸びてくるのでびっくりした」という学生がいました。同じ制服を着た先輩社員の背筋がビシッと伸びている。ホテルにやってくるお客様は、自分と先輩を同じホテルマンとして見る。そのような状況で制服を着ると、先輩のような姿勢でないと自分自身がしっくりこないのでしょう。「他人の目」が及ぼすいい効果の一例です。

だらしない姿勢では印象が悪くなるのは、何もホテルマンに限ったことではありません。私たちも同様です。

重要:だらしない姿勢は印象を悪くする

一戸建てに住んでいる人は、巣ごもり生活でも家の中で結構歩いているものです。しかし、ワンルームマンションなどに住んでいる若者は、数歩歩けば、部屋にあるものすべてに手が届きます。結果的に下半身の筋肉を使うことが少なくなってしまいます。

私は大学の授業で「総合芸術論」という科目を持っています。演劇入門のような科目で、「声を出す」「表情豊かにしゃべる」「身体全体を使ってコミュニケーションをする」というのが目的の科目です。

メディア芸術学部の教員なので、普段はPCに向かって絵を描くことが好きな学生を教えています。勉強でPCの前にいて、趣味でもPCの前にいるという学生たちに、何とか筋肉を使ってもらおうと始めた科目です。

2019年までは対面でやっていたので、教室を動き回ることができました。それ以降はリモート授業ということもあり、PC画面に入る範囲での「動き」や「発声」をやっています。残念ながら走り回ることはできません。しかし、エクササイズやストレッチなどで、巣ごもり生活では使わない筋肉を刺激する動きをやってもらいます。すると、身体が覚醒してくるものです。

例えば、両手を水平に開き、「片足立ち」を1分やってもらいます。小学校時代は簡単にできたことができなくなっている人もいます。学生たちは、少し動いただけで筋肉痛になることに驚き、自分の筋肉が衰えていることを自覚します。「これではいけない」「明日は少し家の近所を歩こうか」などと思うだけでも意義があると思っています。

本当に翌日から、運動を始めてくれる学生が沢山いるとは思いませんが、少なくとも「これではいけない」ことに気づくだけでも、十分に役に立つ授業になっているのではないでしょうか。

身体が動かないと、表情もますます乏しくなる

身体全体を使って、コミュニケーションをすることは大事なことです。自分の感情や伝えたいことが相手により伝わりやすくなります。

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身体が動かないと、表情もますます乏しくなっていきます。ただでさえ、表情や身体全体での表現が控えめな日本人がますます「何を伝えたいのかわからない人」になっていくことを私は危惧しています。

晴れて自由に対面コミュニケーションできるようになったとき、筋肉が衰え、動かなくなっていることがないよう、日々確認し、鍛えておきましょう。そして筋肉とともに確認してほしいのが、体重です。1日に1回は体重計に乗る習慣をつけましょう。

マスク時代、リモート時代はさらに「見た目」が重要になっていきます。人に会うことが減り、容姿に無自覚になることが簡単な時代だからこそ、自分を律し、つねに見た目を整えておく。それができる人は、人から信用を得ることができます。

重要:身体が動かなければ、表情も動かない

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

「脱マスク」が正解?欧米は誰もしてないは勘違い

「空気感染」日本であまり知られていないカラクリ

5日間のタイ旅行で感じた会社員が行くハードル

提供元:マスク越しの意思疎通「声の使い方で超改善」の訳|東洋経済オンライン

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