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2022.05.11

「外出控え」高齢の親が寿命を縮める本当のワケ|優先的にトレーニングすべき3つの要素とは?


長引くコロナ禍の運動不足で、歩行困難を引き起こすこともあります(写真:Luce/PIXTA)

長引くコロナ禍の運動不足で、歩行困難を引き起こすこともあります(写真:Luce/PIXTA)

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長引くコロナ禍で「歩けない」高齢者が増えつつあります。歩行困難な状況は、単に移動に困るだけでなく、さまざまな健康上の2次被害を引き起こす恐れがあります。大事なのはどんな状況下でも歩く力を衰えさせないこと。日本初の足の総合病院「下北沢病院」の菊池守医師の著書『2万人の足を診てきた名医が教える 弱った足でもぐんぐん元気になる! スタスタ体操』より、高齢者の足を守る方法を一部引用・再構成してお届けします。

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歩かない高齢者の筋力は急速に衰える

「何かにつかまらないと立てない」

「歩くとふらついて、バランスをくずす」

ご高齢の方からこんな声を聞く機会が増えました。

あなたの親御さんや、親類の方にも同様の悩みを抱える方がいるのではないでしょうか。コロナ前は散歩くらいなら問題なくできていたのに、久しぶりに外に出ようとしたら、思わぬ困難に直面して驚くケースが増えています。

長く続いた外出自粛のせいで、あまり外に出なかった高齢者の足が弱ってしまったせいです。このままでは、歩くことが困難になり、近所のお店に買い物に行くことすらも難しい状況になりかねません。

コロナウイルスに感染しないために、外出自粛はやむをえない措置でした。

ただ、「歩けなくなる」ことは、高齢者の健康にどれだけ大きな影響を与えるのか、一般にはきちんと認識されていないように思います。

「歩くことは健康にいい」という漠然としたイメージはあっても、具体的にどのような健康効果があるのでしょうか。たとえ万歩計を毎日持ち歩いたとしても、いったいどのくらいの距離を歩けば効果があるのかよくわかりません。

そこで、ご紹介したいのが「中之条研究」です。

中之条研究とは、群馬県にある中之条町で2000年から実施されたモニタリング研究のこと。中之条町で暮らしている65歳以上の住民およそ5000人を対象に、日頃の運動の頻度や生活習慣、睡眠時間、食生活など、健康に関する詳細な調査が、15年以上にわたって行われました。

さらにこの調査では、被験者5000人のうち、2000人に対しては血液検査や遺伝子解析を実施し、さらに詳しく健康状態を調査。

そのうち500人には身体活動計を携帯させ、毎日の歩数とそのスピードを365日にわたって記録しています。

世界でも類を見ないこの詳細な研究により、どのような運動をどのくらい行えば健康維持に役立つのかが、具体的に突き止められたのです。

健康を維持するためには1日8000歩が必要

結論から言えば、健康を維持・増進するためには、1日平均8000歩以上歩くことが理想的。また、ただ歩くだけでなく、早歩きなど中強度の活動が20分以上ふくまれていれば、さらにさまざまな病気に対する予防効果が得られることがわかりました。

「中之条研究」1日あたりの歩数で予防できる主な病気(画像:アスコム)

「中之条研究」1日あたりの歩数で予防できる主な病気(画像:アスコム)

ここでいう中強度の活動とは、うっすらと汗ばむ程度の速さで歩くことを意味しています。ウォーキング以外でいえば、雑巾がけやラジオ体操など、多少息がきれてもどうにか他人と会話ができる程度の運動のことです。

たとえば、1日2000歩の歩行量を維持するだけでも、筋肉のおとろえを防ぐことができ、結果として寝たきりになるリスクを軽減することができます。

1日4000歩では、運動による血流促進はもちろん、風景や環境の変化が脳にあたえる刺激がリフレッシュ効果を生み、うつ病予防の効果が認められました。

1日7000歩なら、血流が維持されることによって血管が鍛えられ、ガンや動脈硬化に対する予防効果があります。さらに、鍛えられるのは血管や筋肉だけでなく骨も同様であるため、骨粗しょう症や骨折を防ぐ効果も期待されます。

そして、1日8000歩なら、高血圧症や糖尿病、脂質異常症の予防にまで効果がおよぶと、中之条研究では結論づけられています。

2022年5月現在はまん延防止等重点措置も解除され、外出する高齢者も徐々に増えつつある状況かと思います。

しかし、「歩きたくても歩けない」ようだと、感染症以外の健康被害がこれから増加する可能性が高いのです。場合によっては、寿命に影響を及ぼす恐れもあります。

高齢者自身も「このままではまずい」と不安に駆られている方が多いのか、とりあえず筋トレを始めたり、部屋を何周も歩くなどの自己流のリハビリを始める方も増えているようです。

そうした努力を否定するわけではありませんが、足の専門医の立場からすると少々効率が悪いようです。

大事なのは「歩く」ことに直接関連する箇所を優先的、かつ集中的にトレーニングすること。それだけで、「歩く」力を保つことができるようになります。

高齢者が優先的にトレーニングすべき3つの要素

では、それはどの箇所なのか。

それが次の3つです。

●土ふまずのかたち
●足裏の筋力
●足首のやわらかさ

こうした要素が整うことで、体重が理想的に分散され、足に無理な負担をかけずに歩くことができます。筋肉や関節などが衰えてくると3つの要素のバランスが崩れ、特定の部位に過度な負担が生じて、痛みの原因になったりします。

2つのスタスタ筋(画像:アスコム)

2つのスタスタ筋(画像:アスコム)

前述した3つのうち、「土ふまずのかたち」「足裏の筋力」に深く関連するのが後脛骨筋と内在筋という2つの筋肉です。私は歩くことに深く関係する2つを合わせて「スタスタ筋」と呼んでいます。

もちろん、この2つ以外にも歩行にはさまざまな筋肉が複雑に関係しているのですが、少しでも早く歩くことを望むのであれば、まずは「スタスタ筋」を鍛えることを意識してください。

そのうえで、足首のやわらかさを身につけましょう。いわゆる「アキレス腱伸ばし」で、足首のやわらかさは身につくのですが、やり方にコツがあります。体育の授業で皆さんが習ったやり方では不十分です。

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『2万人の足を診てきた名医が教える 弱った足でもぐんぐん元気になる! スタスタ体操』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

筋力と柔軟性を同時に身につけることで、足は「最速」でよみがえります。

拙著では、スタスタ筋を鍛え、足首の柔らかさが得られる1日5分でできる簡単な「スタスタ体操」をご紹介しています。歩行困難であった80代の高齢者が、無事に歩けるようになった事例なども載っています。

コロナの影響で、高齢者の健康が危機的な状況にある今だからこそ、高齢者の足を衰えさせないことに注意を払わなくてはいけないと強く感じます。

これを機に、あなたの周囲にいる、ご高齢の親族の足の健康について、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

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提供元:「外出控え」高齢の親が寿命を縮める本当のワケ|東洋経済オンライン

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