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2022.03.25

医師が教える「認知症の進行を抑える」最高の方法|絶対にやってはいけないNG介護も併せて紹介


認知症の進行を緩やかにする「最高の方法」とは?(写真:pearlinheart/PIXTA)

認知症の進行を緩やかにする「最高の方法」とは?(写真:pearlinheart/PIXTA)

認知症の進行を緩やかにする「最高の方法」とは? 30年以上、認知症の方と介護者を見つめ続けてきた横浜鶴見リハビリテーション病院院長の吉田勝明氏による新書『認知症が進まない話し方があった』より一部抜粋・再構成してお届けする。

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世間では、認知症に対する誤解や偏見がまだまだあり、「発症したら手の施しようがない」と思い込んでいる人も少なくありません。また、いったん困った行動を起こすようになったら、もうやめさせることは不可能。人が人でなくなる、とても他人には言えない恥ずかしいこと、そんな誤解が消えないのは残念です。

確かに認知症発症前の状態に戻すことは、現在の医学では難しいと言わざるを得ません。しかし適切なケアによって認知症の進行を遅らせ、問題となるような行動を軽減させることはできると、私は思っています。

認知症を「恥ずかしい」と思う必要はない

医師として30年以上認知症の方を診てきましたが、介護者の方のケアにより、認知症の方の行動がガラリと変わった例をいくつも知っているからです。

そのためにもまず、何よりも大事なのは、認知症を決して隠さないこと。「恥ずかしい」などと身をすくめる必要など、全くありません。

認知症は85歳以上の高齢者の約半数が発症する「とても身近なもの」です。家に閉じ込めず、買い物や散歩に連れ出し、ご近所の方と触れ合う機会をつくりましょう。

人と接し、会話を交わすことは、脳への何よりの刺激。認知症の進行を遅らせる効果があります。隣近所の方にも、家に認知症の方がいることをちゃんと説明し、協力を求めておくと安心です。

「うちのおじいちゃん、やっぱり認知症だと診断されたんです。家でしっかり介護していきますが、万一、おじいちゃんが一人で歩いていたりしたら、すぐに私に言ってくださいね。お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

この一言で認知症の方への理解を促すだけでなく、介護者が目を離したすきに徘徊されたときのセーフティネットにもなります。

認知症を悪化させないためには、「よかれと思ってやっている行動」を見直すことも重要です。よくあるのが、「認知症の人が本当はできること」まで、介護者がやってしまうこと。

認知症の方は認知機能の低下によって、料理や買い物、掃除などの家事や身支度など、これまで普通にやってきたことが、スムーズにできなくなります。

その様子を見て、「きっとできないだろうから」「なんだか、大変そうに見えたから」と、なんでも周りの人が代わりにやってしまうことが多いのですが、これを続けると症状の進行は早くなります。

家事・身支度などは大したことではないように思えるかもしれませんが、やる機会が減れば、考えたり体を動かしたりするチャンスもそれだけ減ります。これが、脳や体の衰えにつながり、症状の進行を早くするのです。

本人にやらせるほうが手間や時間がかかったりして、介護者の方にとっては大変なときがあるのは重々承知していますが、スムーズにできなくても時間をかければできることは、できるだけ本人にやってもらいましょう。できないところだけ、周りが補助するスタンスでいることが大切です。

認知症を悪化を防ぐために「最も大事なこと」

最後に、これまで30年の臨床経験から「認知症の悪化を防ぐために最も大事だと思われること」がわかったので、そのお話をさせてください。

結論から言ってしまうと、認知症を進ませないために大事なのは、「話し方」をはじめとする認知症の方への「コミュニケーションのとり方」です。でもいったいなぜ、話し方が大事なの?と思われた方も多いでしょう。順を追って説明していきましょう。

「子は親の鏡」と言いますが、認知症の方と介護者もまた「鏡」の関係にあります。これまでお会いしてきたご家族でも、介護をされている方が明るい雰囲気を醸し楽しそうにお話しされていると、一緒にいる認知症の方もニコニコしていたり、穏やかな様子でいることがほとんどでした。

残念ながら反対に、介護者がピリピリしていたり、いかにもつらそうで口調がきつかったりすると、認知症の方もどんよりと暗い雰囲気をまとっていたり、暴言やリハビリ拒否などが多かったりと、あまりよい状態ではないケースが多かったのです。

認知症の方の症状や困った行動は、「認知症」のなせる業であり、介護者への個人的な悪意や社会への反発とは無関係です。

そのため、「ダメでしょ!」「迷惑なのがわからないの!」等々、高圧的な態度をとっても、それらの行動を改善する効果がないだけでなく、認知症の方と介護者の両者を追い詰めてしまうだけの悪循環に陥ります。

介護者も、反射的に叫んだことで後味が悪い思いをし「なんでこんなことに」と暗澹たる気持ちに支配されてしまうかもしれません。

認知症の方のほうも、怒られて落ち込み、引きこもりになったり、気分が沈んで人との接触や能動的な行動が減ったりして、結果的に認知症の症状が悪化することもあります。そんなことが続けば、介護の時間や手間も増大。介護者にとってもまた、負の連鎖が止まらなくなるのです。これではお互いにつらいことばかりですね。

症状にもよりますが、認知症の方が意識的に話し方を変えることは難しいでしょう。でも、介護をする側が「話し方のコツ」や「ポイント」を押さえて話すことはできます。

もちろん進行の度合いにもよりますが、介護者が話し方を変えれば、認知症の方の行動は少しずつでも変わります。そして、認知症の症状の進行も限りなくゆるやかにできるのです。中には介護者が話し方・接し方を変えることで、悪化が止まったケースもあります。こうなれば、介護も格段にラクになるでしょう。

ちょっと想像してみてください。あなたは、人波であふれかえる大通りで、急に目が見えなくなりました。そのうえ声も出ないのです。耳は聞こえるものの歩くこともままならず、しゃがみ込んでしまいました。

不安で、怖くて、わんわん泣きたい気持ち。なのに、自分ができるのは、少しでも目が見えないかと、一生懸命目をこすることだけ……。

そこに2人の人物が現れました。一人はやさしい声です。あなたの肩にそっと触れながら、「大丈夫ですか? 目が痛いのですか?」。あなたは「この人なら私を助けてくれる!」と安心し、問いに答えるべく、声が出せなくても懸命にうなずいて、窮状を伝えようとするでしょう。

もう一人は、身もすくむような怒号。「ちょっと! こんなところにうずくまったら邪魔! どっか行ってよ!」。その恐怖だけでなく、怒号の主を止めようともしない群衆の存在も感じて、冷たい孤独感も増すに違いありません。

認知症の進行を緩やかにする方法

お察しのように、「あなた」は認知症の方の状態を暗示しています。認知症の方は目が悪くなくても、人の表情を読むのが苦手。何か声を発しない人間は、無関心に感じます。また、自分の窮状を言語化するのも上手ではありません。

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こんなとき、やさしい声と、困り事を救い上げる適切な声かけがあると、どれだけ心が落ち着くことでしょう。心が少しでも落ち着けば、不安や恐れからむやみやたらに暴れたり、取り乱したりすることもなくなります。

これは、程度の差こそあれ、認知症の方も同じだといえます。困っている状況から、介護者の適切な声かけによって救い出してもらうことで、不安に覆われていた心に落ち着きが戻り、その結果、少しずつかもしれませんが行動が変わるのです。

人としての尊厳を認めながら会話を交わし合うことで、認知症の進行はゆるやかになり、結果的には介護者の気持ちにもゆとりが生まれる。

四半世紀にわたり、認知症の方と介護者を見つめ続けてきた私は、そう確信しています。

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提供元:医師が教える「認知症の進行を抑える」最高の方法|東洋経済オンライン

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