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2022.03.16

腸の専門医が「過度な糖質制限」に警鐘鳴らす訳|「糖質制限食与えたマウス」ほど老化が進行した


なぜ「糖質制限」は危険なのか?(写真:プラナ/PIXTA)

なぜ「糖質制限」は危険なのか?(写真:プラナ/PIXTA)

今も根強い人気がある「糖質制限ダイエット」。しかし、腸の専門医として知られる松生恒夫氏は「重度の糖尿病でもない人や健常な人が、糖質を極端に制限するのは大いに考えもの」と警鐘を鳴らします。その理由とは? 松生氏と糖尿病の専門医である森豊氏による新書『血糖値は「腸」で下がる』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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現在、メタボや糖尿病にかかるリスクとして問題となっているのは、食後に血液中の糖分が高くなること、つまり高血糖状態になることです。そこで、食後高血糖にならないために糖質を制限するのが、最近の糖尿病の食事療法の傾向です。

これに関連して、根強い人気があるのが「糖質制限ダイエット」です。以前から、私はこのダイエット法の流行に警鐘を鳴らしてきました。重度の糖尿病の患者さんが、食後高血糖を予防するために糖質を制限するのならわかるのですが、重度でもない人や健常な人が、糖質を極端に制限するのは大いに考えものです。

みなさんもよくご存じのように、糖質が含まれる食べ物(ご飯やパン、麺類などの主食やいも類、果物など)の摂取は控えるが、肉類などのたんぱく質や脂質、糖質の低いアルコールは摂取しても大丈夫、というのが糖質制限ダイエットです。

「糖質を減らす」と体はどうなるのか?

ヒトの体は糖質の摂取を減らすとエネルギー不足になり、脂肪を分解するなどして補おうとします。だから体脂肪が減り、体重も落ちるというのが、この糖質制限ダイエットのしくみです。

また、糖質は血糖値を上昇させる働きがありますが、血糖値が上がると、それを下げるホルモンであるインスリンが分泌され、筋肉などに取り込み、余った糖を脂肪に変えて蓄えます。そのため糖質を制限すれば、インスリンの分泌が抑えられ、高血糖になるのを抑えられるだけでなく、太りにくくなるのです。

一方で、食事から糖質(炭水化物)をとらなくても、肝臓は必要に応じて、筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生(体内で糖を作り出す働き)を行い、血中にブドウ糖を供給することができます。

つまり、糖質を抜いてもブドウ糖(グルコース)を体内に供給できる働きがあるのです。さらに、エネルギー源として脂肪酸からケトン体を作り出すしくみもあります。

そこで、糖質制限ダイエットをして糖分をとらなくても大丈夫であり、その分、肉類などのたんぱく質や脂質、あるいは糖質が少ないアルコールならいくら摂取してもよいという理屈になるわけです。

では、糖質が多く含まれる食べ物は不要かというと、そう単純な話ではありません。糖質は、三大栄養素の一つであり、炭水化物に含まれる成分ですが、炭水化物には糖質以外に食物繊維も含まれています。糖質制限で炭水化物をとらなくなると、その分、食物繊維の摂取量が減ってしまうのです。

食物繊維の摂取量が減少すると腸内環境が悪化し、さまざまな腸の症状を引き起こす前段階である「腸ストレス」を招いてしまいます。そして、腸の障害だけでなく、全身の不調に結びつきやすくなるのです。

さらに糖質制限ダイエットでは、炭水化物をとらない代わりに肉類やアルコール摂取が過度となり、大腸がんなどのリスク増加につながることも見落とされています。

それらのことから総合すると、糖質を制限する食生活は、腸にとっていいことはまったくないのです。

重度の糖尿病などで血糖値のコントロール不良の人はやむを得ない面があるとしても、そうでない人は決してすすめられたものではありません。

過度の糖質制限は脳や全身の老化を早める

医学的にも、長期にわたって糖質制限を行った場合の効果や安全性は必ずしも明らかになっておらず、むしろさまざまなリスクが指摘されています。

たとえば、日本糖尿病学会の指摘では、デンマークでの報告として、糖質制限ダイエットを長期間にわたって実行した結果、脳梗塞などの発症に結びつく可能性が紹介されています。

また、「過度の糖質制限は脳や全身の老化を早める」という研究報告もあります。東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らは、マウスを20匹ずつの二つのグループに分け、片方には「通常食」、もう片方には炭水化物を脂質とたんぱく質に置き換えた「糖質制限食」を与えました。

その結果、糖質制限食を食べたマウスのグループは、通常食のグループに比べて、老化の進行が30%早く、平均寿命も20〜25%短命で、しかも学習記憶能力の面でも機能が低下していました。

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脳の老化を促進させる過酸化脂質の量を調べてみると、通常食群に比べて50%近く多いこともわかったのです。二つのグループの数値の差は、決して小さいものではありません。もちろん、これはマウスを使った実験結果ですが、人間にも当てはまるとしたら怖くなります。

さらに、米国ハーバード大学の研究チームは、こんな報告をしています。25年間にわたって、45〜64歳の約1万5000人のアメリカ人を追跡調査し、炭水化物の摂取割合別の死亡数を集計しました。それによると、総摂取カロリーに占める炭水化物の割合が50〜55%のときにもっとも死亡率が低く、それより多くても少なくても死亡率が上昇することが明らかになりました。

ほかの調査でも同様の傾向が見られ、簡単にまとめるなら、炭水化物(糖質)はとり過ぎても制限し過ぎても健康にはよくなく、偏食を避けてほどほどにとるのが一番ということになります。

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提供元:腸の専門医が「過度な糖質制限」に警鐘鳴らす訳|東洋経済オンライン

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