2022.02.11
万病の元「内臓型冷え症」を撃退する食養生の基本|カレー粉、五香粉などを活用するのがポイント
寒さも本番。お腹を温めて万全な体調で過ごしましょう(写真:shige hattori/PIXTA)
立春を過ぎてもまだ寒さが厳しい日が続きます。
この時期、手足だけでなく、お腹が冷えるという経験をしたことはありませんか。私の治療院の患者さんにも、お腹を触るとそこだけが冷たい、あるいは冷えているような感覚を訴える方が増えています。
「冷え腹(内臓型冷え症)」とは?
通常、冷え症というと、手足や全身など皮膚の表面に冷え症状が表れるものを思い浮かべるかもしれません。しかし、「冷え腹(内臓型冷え症)」では手足が温かく、お腹だけが冷えることもあります。全身や手足が冷える冷え症とは特徴がまったく異なります。
古来、漢方医学では冷え腹によってもたらされる症状を、「疝(セン)」「疝痛」「癪(シャク)」「さしこみ」などと表現し、その症状や処方が論じられてきました。これらの言葉は、急に起こる激しい頭痛やけいれん性の腹痛(下腹部痛)や下痢などを示しています。
急性の冷え腹の場合、外側から温めてあげて、適切な食事をとったり漢方薬を服用したりすることで良くなることがほとんどです。
一方で、たちが悪いのは慢性の冷え腹。自覚症状が少ないこともあり、気づかないうちに悪化して、さまざまな症状の原因となってしまうこともあります。次のような症状がある場合は冷え腹(内臓型冷え症)の可能性があるので、注意が必要です。
内臓型冷え性の代表的な症状
• 起床時、脇よりもお腹の温度が低い
• 腹部を触るとひんやりする
• 疲れやすい
• うつ傾向
• 風邪をひくことが多い
• 入浴時、湯が熱く感じる
• 便秘や下痢になりやすい
• 太りやすく、痩せにくくなった
冷え腹は冬だけではなく、暑い夏にも多い冷えのタイプです。自覚症状が少ない冷え腹を解消するには、どんな症状があるのかを知り、早い段階で気づくことが重要です。今回は冷え腹の特徴や症状、養生(食)を中心とした対処法を紹介いたします。
漢方では、胃腸は飲食物を消化するだけではなく、体の活動の原動力である「気」を作る大切な臓器とされています。胃腸はお腹が冷たい状態や、水分過多でびしょびしょの状態ではうまく働きません。結果的に、食事を消化できずに腸へ送り出してしまい、腹痛の原因になります。
さらに、消化ができていないため食べた物の「気」を十分に取り込めず、気が不足してきます。車に例えると、ガス欠でエンジンがかからない状態です。気の不足は、気力低下や免疫力低下、さらにはうつ状態をもたらします。女性の場合、お腹の冷えは子宮に伝わり、月経不順や不妊症などの婦人科疾患に発展することもあります。
問題は「冷たい物や水分の摂り方」にある
では、なぜお腹の冷えが起こるのでしょうか。その大きな原因は「冷たい物、あるいは水分の摂り方」にあります。どんなことが問題になるのか見ていきましょう。
・冷たい飲食物の問題
冷たい物の摂り過ぎや、水分の取り過ぎはお腹の冷えの原因になります。
慣れてしまうと当たり前になってしまいますが、飲食店では冬でも氷入りの水が出てくることが多く、外国から来た人は驚くこともあるようです。また、冬でも自動販売機で冷たい飲み物を買ったり、アイスクリームを食べたりすることはそれほど珍しくありません。冷たい食べ物や飲み物ばかり摂取していると、つねに胃腸が冷え、慢性的な消化不良を引き起こす場合もあります。
ちなみに、ここでいう「冷たい」とは、自分の体温以下のものと考えてください。冷蔵庫から出したての食べ物はしばらく常温に戻す、あるいは温め直すなどの工夫が必要です。
飲み物をペットボトルに入れて持ち歩いている人も多いですが、冬の常温はかなり冷たいので、保温機能のある水筒やポットなどに白湯を入れて持ち歩くとよいでしょう。私も朝、白湯を作ってマグボトルに入れて仕事の合間に少しずつ飲んでいます。
・水分の摂り過ぎの問題
温かい飲み物でも大量に飲めば、不必要な水が体内に滞る「水毒(すいどく)」という状態となり、体を冷やしてしまいます。大きなマグカップになみなみとお茶やコーヒーを入れて飲んでいる人は、お気をつけください。体を温める作用のあるお茶も、たくさん飲むと水毒となります。
かつて、一時はやった健康茶を1日2リットル飲んでいらっしゃる患者さんが来院されたことがあります。お腹を診察すると冷たく、少し押しただけでちゃぽちゃぽと音がする、まさに水毒の状態になっていました。
いくら体を温める作用のある健康茶でも、飲み過ぎは逆効果です。1回に飲む量は2~3口、50CC以下までにとどめ、30分に1回ぐらい摂ると、水分が無駄なく体内に吸収され、水毒も起こりにくくなります。
逆に冷え腹対策として行いたいのが、食材の選び方です。
体を温める食材の代表格がショウガですが、ほかにも土の中で育つ根菜類や、イモ類も温める効果があります。スープや煮込み料理などで加熱して食することで、より内臓が内側から温められ、冷え改善が期待できます。
温かい料理や飲み物に〝とろみ〟をつけるのも、胃腸を温めるのには有効です。とろみというと片栗粉を思い浮かべますが、漢方的にみたおすすめのとろみは、葛粉です。風邪に効く漢方薬としておなじみの葛根湯の構成生薬の1つです。
やや高価なのが難点ですが、水で溶いて餡かけにするほか、すったショウガを葛湯に入れた生姜湯などは保温効果が高く、温かさが胃腸にいつまでも残ってくれます。
インドや中国のスパイスが体を温める
それから、内臓を温めるものとして私がおすすめしたいのは、五香粉やカレー粉などのスパイスです。
五香粉はその名の通り、5種類のスパイスをミックスしたもので、花椒(かしょう)、小茴香(しょうういきょう)、八角、丁子(ちょうし)、肉桂(にっけい)と、すべて体を温める働きのある香辛料で構成されていて、冷え腹のためのスパイスといっても過言ではありません。カレー粉もクミン、コリアンダー、ターメリックなどの薬効のある生薬で構成されていて、お腹を温めて停滞した気を動かします。
カレー粉、五香粉に共通のおすすめの摂り方は、お粥に入れる、です。特に、冷えて胃腸の調子が悪いときなどは食事を作るのも面倒でしょう。そんなときは、レトルトのお粥を温めて、カレー粉や五香粉を一振りするだけで、食欲が湧いてくることがあります。
ほかに、カレー粉は炒め物やスープ、チャーハンなどに入れてもよく、五香粉は炒め物や飲み物と相性が抜群です。ミルクティーに一振りすると、ピリッとしたチャイになり、体だけでなく、心もふわっと温まります。
最後に、温める性質の食材、冷やす性質の食材を紹介しておきます。今の時期、スーパーなどで買い物をする際の参考にしてください。
温める性質の食材
ショウガ、ネギ、胡椒、カボチャ、レンコン、カリフラワー、にんじん、ごぼう、かぶ、やまいも、鮭、カツオ、サバ、ラム肉、牛肉、味噌、黒砂糖など
冷やす性質の食材
夏野菜(トマト、きゅうり、なす、ゴーヤ、レタス、トマト)、南国の果物(バナナ、パイナップル、マンゴー、オレンジなど)、ビール、緑茶、コーヒー、ウーロン茶、白砂糖、小麦粉製品(パン、パスタなど)、牛乳、豆乳など
冷やす性質の食べ物は過剰摂取を控えたほうがいいですが、もし摂られる場合は、調理法を工夫するとよいでしょう。
同じ野菜でも冷蔵庫から出したばかりのものを、冷たいドレッシングをかけて食べれば、かなり体を冷やします。一方で、蒸したり煮たりして火を加えれば、冷やす性質が緩和されます。また、温める性質の食材や薬味、スパイスと組み合わせてもよいと思います。
刺身は冷やす性質を持ちますが、温める作用や解毒作用のあるシソやワサビといった薬味と組み合わせることによって、性質が緩和されます。寿司に添えられているガリも同様に、ショウガの胃を温める作用が消化を助けてくれます。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:万病の元「内臓型冷え症」を撃退する食養生の基本|東洋経済オンライン